第109話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 29

 同じく過去の時代、バリスタンの狩場。


 「あらあら、そんなんじゃ無理よ。もっとサンダーを上手く誘導しなきゃ。」

 見ながら小声で呟くミランダ。


 姉妹が手を焼いてるのを見るに見かねず、サンダーを放つ。

姉妹の後ろから、ミランダの誘導したサンダーが飛んでいくと、見事にバトンを仕留めた。


 ミランダは姉妹に駆け寄っていく。


 自分達の術式ではないサンダーがバトンを仕留めたので、ハッと振り返る2人。


 ミランダを見付けて声を揃えて叫んだ。

「ママーっ。」「レイラ、ライラーっ。」

ミランダの両脇に飛び込む姉妹。


 「二人共、サンダーの誘導の仕方が甘いわ。もっと相手の動きを先読みしなきゃダメね。」

「ママーっ。」

「二人共元気そうで良かった。ママ安心したわ。」


 ワンドルも寄ってきた。

「元気そうだな、レイラ、ライラ。」


 「ワンドルさーん。」

今度はワンドルの両脇に抱きつく姉妹。

「身体の具合はいかが?」

「現世ではゆっくり休めましたか?」

「私はこの通り、問題無いさ。……おっと、狩りの邪魔をした。さぁさ、続きを始めよう。」


 今度は4人で、すばしっこいバトンの狩りを始めた。


 やがて陽が高くなり、皆ランチ休憩。


 サンドラが用意してくれているランチを、半分ずつしてミランダとワンドルを交えて4人で食べている。


 レイラがミランダの左手首に気が付いた。


 「ママ、その左手……。」

「なぁに?レイラ。……大丈夫よ、グランダの意識にやられただけ。ママが無事なだけいいでしょ?」

 大粒の涙を浮かべたライラ。しがみつく。


 「なんで、なんでグランダと?」

「ママだって魔導士よ。それにね、グランダの意識はママを狙ってるんだから。殺られなかっただけで上等でしょ?」

「転移術式を習得した時は三日三晩意識が無かったんだ、それに比べたら……なぁミランダ。」

「そ、そうよね。大したことないわ。」

「そばにいたら私がどうかなってたかもしれないわママ。」

「ライラは甘えん坊だからね。でももう大丈夫なのよ。多くの魔導士仲間が交代で治療してくれたわ。」


 バスケットを片付けながらレイラが言った。

 「ママがこの時代に来たってことは、転移術式を習得したからよね。習得すごく早い。」

「これからは2人にも習得してもらう。頑張りなさい。」

「ワンドルさん、私達もすぐに習得出来るの?」

「……と感じるがね。……だが寝込むのは三日三晩では済まないかもしれんな。」


 「えっ!」

声を揃えて後退りする姉妹。

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