第108話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 28

 現世の時代……。

 すっかり身体の調子が良くなったミランダ。もちろん左手首は戻らないが。


 ミランダ邸にはワンドルが来ていた。

いよいよ過去への転移を行うためだ。


 「そろそろ子供達はバリスタンで狩りを始める頃。驚かせるにはいいタイミングだろう?ミランダ。」

「そ、そうね。無事に行けたらだけど……。」

「子供達の意識を思い出して。転移中にはその意識に向かっていくようにする気持ちで。分かったね?」

「分かりました、全ての力を込めて。」

「ミランダ様、お気を付けて。」

「行ってくるわガム。」

「今日のところは私の肩に手を添えていなさい。」


 ワンドルには見た目の変化はあまりなかったが、ミランダは髪色を変え、パワーが込められているのが分かる。


 「さぁ、意識の中へ飛び込みなさい。」


 ミランダは言われる通りに、姉妹の意識を思い出して、その意識に飛び込んだ。同時にワンドルとミランダの姿がガムの前から消えた。現世からは転移したようだった。



 そして同じ時節の過去の時代……。


 「レイラ、今日はラビンは見かけないわ。どうする?」

「決まってるでしょ。バトンを狩りまくりよ!」

「狩りまくりって、バトンはすばしっこいってば。」


 姉妹からかなり離れた場所に転移を成功させたミランダ。ワンドルの肩に手を添えたままだったが、なんとか成功した。


 「しっ!ミランダ、転移してきた過去の時代だよ。見てごらん。ほら、子供達は狩りをしているんだ。」


 木の陰に隠れて姉妹を見ているミランダ。すぐにでも抱きしめたい気持ちに駆られていたが、ワンドルが木の陰に促したのだった。


 「記憶を失っていた頃から、ああして獲物を狩っては市場に卸して生活している。今はもう魔術を思い出しているがね。」


 ミランダは声に出さずも、再会の嬉しさのあまり大粒の涙をこぼしていた。

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