第105話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 25
現世の時代、薄紫色の時。
ワンドルとミランダが巨人の槍にやってきていた。
辺りは暗くなり、遠くで雷鳴が聞こえるようになっていた。
「最大限のパワーを維持して、稲光を吸収する。それだけで転移術式が身に着くとみている。」
「大丈夫かしら……。向こうの子供達も気になる。」
「心配いらん。子供達とは私がリンクする。今回、君は稲光のエネルギーを吸収する事だけに集中してくれ。巨人の槍から決して手を離すなよ、吸収エネルギーが減るからな。」
「分かりました。」
そう返事を返したミランダだが、手が震えている。
「いざという時の為に多量の特級ポーションを持っている。何が有っても心配するな。君は私が救う。過去の時代の子供達は、君の次に転移術式を身に付ける。気絶しないように意識を保って稲光が収まるころにはグアムスタンのパワーが取り込まれるはずだ。」
「ワンドルは気絶したんでしょ?そう簡単では済まされないでしょう。……私にはどうなるか不安で仕方がないわ。」
ワンドルがずっと考えていた事だった。
転移術式の習得には、グアムスタンのエネルギーを体内に吸収する事、それだけで済むのではないのかと結論付けていた。
「私を信じてくれ。頼む。」
そして過去の時代、同じく薄紫色の時。
「ママは元気かしら。」
「魚まで獲れるようになったって伝えたら?ライラ。」
「短い時間でしょ?今日は何を伝えよう……。」
再び現世の時代、巨人の槍。
「まもなく始まる。ミランダ、しっかりな。」
「はい、力の限り。」
「大丈夫。天でガイラも力になってくれるさ。」
やがて雷鳴がグアムスタンからバリスタン、果てはフリップグロスの町中に轟いた。
「来るぞミランダ!」
ミランダは自身の髪色を変え、持ちうる限りのパワーを纏い巨人の槍に手を添えた。
轟く雷鳴とともに、巨人の槍にまで到達した稲光。
ミランダと巨人の槍のシルエット、丘に大きく長い影を落とした。
ミランダはあまりの衝撃に叫び声をあげたが、その手だけは巨人の槍から離すことはなかった。
ミランダが稲光を吸収している頃、ワンドルは過去にリンクしていた。
「レイラ、ライラ。こんにちは、久しぶりだね。」
「ワ、ワンドルさん。身体はいいの?」
「ライラかい?私は至って健康さ。今日はミランダに代わってリンクしに来た。生存証明さ。心配してくれていたようだね。ありがとう。」
「ワンドルさん。良かった……良かった本当に。」
「おいおい二人共。私はいつもお前たちを考えている。近く行くから、また話そうじゃないか。」
「ママにはいつもの通りだと伝えてください。サンドラさんとも相変わらずの生活ですと。」
「分かった、伝えるよ。うむ、そろそろ光が弱まる。レイラ、ライラ。また次の時にな。」
そして稲光は収まり、雲の様子も普段のグアムスタン山に変わろうとしていた。
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