第101話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 21

 資料室片隅のテーブルにいるガムを見付け、近寄ってくる1人の魔導士がガムに声を掛けてくる。


 「ガム様、至急ブレインラードにお戻りください。ミランダ様が負傷した模様です。」

「なにっ!ミランダ様が。分かった、すぐ戻る。」

「馬を車止めに待機させています。」

「ありがとう。」


 ガムは直ぐに馬に乗り、宿屋を経由してブレインラードにむかった。



 過去の時代……。

姉妹は、薄紫色の時を待ち焦がれながら、日々過ごしている。


 気温が日に日に下がってくると、山菜採りの人の数は次第に減ってきた。


 「もうじき霜が降りるだろう。これからはこれをきていきなさい。先日貰ったラビンの毛皮で作っておいたよ。」


 それは毛皮のパッチワークでしつらえたベスト。

レイラのポケットには赤い刺繡、ライラの物には黄色の刺繡が施されたものだ。


 姉妹は受け取ると声を揃えて礼を言った。


 「バトンも順調に狩れてるようだし、ドンバスも喜んでいるだろう。私も毛皮の礼もかねて肉屋に行こうかね。」

 「私達もサンドラさんと一緒に市場に行きます。」

「今日は早めに山を下りてくるわ、サンドラさん。それまで待っててくださいな。」

「そうかい?じゃあ待ってるとするよ。さ、今日のランチだよ。行ってらっしゃい。」


 ようやく陽が上り始め、木々の葉には朝露が煌めいている。

バリスタン山の頂付近は霧が徐々に晴れてきた。

朝霧のせいか湿気のある空気が漂い、季節の変化を知らせていた。

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