第94話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 14

 薄紫色の時の後、現世の時代……。

 山を下りてきたミランダ。その目は少し充血している。

やはりミランダも喜びの涙を流したのであろう。


 雨が止んだのに気が付いたガムが、ドアの側でミランダ迎えた。


 微笑むミランダを見て、

「ミランダ様。その様子ですと、無事に過去の時代の2人と繋がれたのですね。」

「えぇ、あの子達は元気そう。私もこれで一安心よ。それより、あの子達はワンドルを気にかけてた。ワンドルの様子を察したみたいだった。今日の事、ワンドルに負担を掛けない為にも、このままリンクで伝えるんじゃなく、麓まで直接報告に行ってくるわ。」

「僕もお供しますミランダ様。」


 姉妹とのリンクに成功した報告をする為、麓でワンドルの過ごしている仮住まいに2人は向かうのだった。

リンクで済まさずに直接報告にというのは、ワンドルの体力を考えての事である。


 ワンドルの仮住まいに着くと、2人の魔導士がドアの横に立っていた。

その2人はミランダ達に気が付くと、軽く会釈をしてドアをノックし開けてくれた。


 「やぁミランダ、ガム。2人揃ってどうしたんだい?」

「こんにちはワンドル、身体は休めてるの?」

「もちろん、この通りすっかり回復しているよ。」

「ワンドル様、お元気でなによりです。」

「ワンドル、実は今日、薄紫色の時だったのだけど。ようやく子供達の声が聞けたわ。あの子達、元気そうだった。転移術式を習得する為に頑張るって言ってたわ。」

「そうか、良かったじゃないかミランダ。私も過去に渡って探した甲斐があったというものだ。子供達には向こうで会っているが、なぁに術式を習得するまでに、そう時間は掛からないだろうさ。」


 ミランダは今日の事を報告し、仮住まいから出て、帰宅の途に就く。

ワンドルは2人を見送ると、

「君たちは仲間の元へ帰って構わない。それから魔導士諸君に1つ頼みがあるのだ。もし私が死を迎えたら、ガイラの墓の横に葬ってほしい。」

「ワンドル様。そんな聞き捨てならないことをおっしゃらないでください。私達はその為に側にいるのですから。当分の間、ここに身を寄せます。」

 1人の魔導士が言うと、ワンドルが応じた。


 「そうか、面倒を掛けるが頼む。まぁ時期にくたばるだろうから、その時が来たらしっかり埋めてくれよ。」


 2人の魔導士はワンドルに深く頭を下げ外へ出ると、再びドアの横に立つのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る