第80話 Encounter(出会い) 6

 やがてサンドラ邸に戻ってきた3人。

ワンドルはここまでの経緯をサンドラに細かく伝えた。


 「不思議な力で未来の時代から来たんだね。信じられない事だけど、ワンドルさんの話といい、2人の戻った記憶から納得せざるを得ないね。」

「2人が元の時代に帰れるようになるまでは時間が必要です。それまでここでお世話になれれば幸い。」

「もちろんだよ、ワンドルさん。あたしはね、この子達がここで過ごしたいなら、今まで通りでいいと思ってるよ。……市場に納める獲物はフリップグロスの皆が楽しみにしている。あたしじゃ出来なかったことだからね。」


 サンドラの側に寄るライラ。

「私達、覚えなきゃいけない魔術があるの。それを習得したらママに会える。もちろんフリップグロスにもいつでも来れるわサンドラさん。」


 レイラもこれに応じた。

「そうよ。ここフリップグロスは、言ってみれば私達の心の故郷《ふるさと《

》。忘れないし離れないわ。」


 「あなた達、それでいいのかい?私は無理強むりじいはしないよ。好きなように過ごすといいさ。」

「では決まりですねサンドラさん。この子達をよろしく頼みます。それでこれからの話をしよう。」


 ワンドルはこの後も話がある。察してサンドラはキッチンに入っていった。


 「これを渡しておく。これは魔術の事が記された古い書物。この切り取られたページの内容がこれからお前達が成すべき事。転移術式の習得だ。記憶が戻っても術式の方はまだだろう。持っているパワーの最大限を思い出すことから始めなさい。」


 姉妹は黙って頷いている。

 サンドラがお茶を運んできた。話が長くなると察したのだろう。


 「ワンドルさんも晩の食事をしていくかい?」

「いえ、私は元の時代に戻ります。子供達の母親に今のフリップグロスの事を伝えなければ。もちろん、あなたの事も。」


 食事の支度が始まるころ、姉妹に別れを告げると家を出た。

 ワンドルが現世に戻ると、サンドラ邸の煙突からはいい匂いの煙が上り始めた。

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