第74話 Memories Returned(戻った記憶) 1

 サンドラ邸の外に出た3人。


 「どうしたの?パパ。」

「急に外に出てなんて。何かあったの?」

ワンドルはしばらく黙っていた。


 やがてリンクで姉妹に話し掛けるワンドル。

「二人共、もう思い出せたのか?」

「パパ?」

小さな意識で呟く姉妹。

依然としてワンドルをガイラと取り違えている。


 ワンドル自身も自分がガイラと思われている事に苦笑した。

(子供達は、私をガイラと取り違えている……。……果たしてどうしたものか。一旦ミランダに話すべきなのかもしれんな。)


 「ママは?ママはどこにいるの?パパ。」


 ライラの問いに答えられなかった。


 しばらく無言だったワンドル。意を決して答えた。

「大丈夫。ママは近くにいる。ただ、会話はできないが声は聞けよう。パパ、その時はお前達と山へ登るよ。」

 苦肉の策だった。姉妹にはワンドルのことがガイラにしか映っていない。無理もない、姉妹と同じく彼もまた双子なのだから。

ワンドルは止む無くというか、咄嗟にガイラを演じた。


 「山へ登ればママに会えるの?」


 姉妹では妹ライラの方が甘ったれ。ママが恋しかったのだろう。

「あぁ、話は私がする。一緒に行こうライラ。」

「分かったわパパ。」

「いつ?いつママと話せるの?」

レイラまでワンドルに問う。


 ワンドルは姉妹を両腕に抱き、「二人共、もう少し時間をくれないか。今晩はいつものようにサンドラさんの所でおやすみ。明日またゆっくり話そう。いいかな?」


 姉妹は笑顔で頷いた。


「グアムスタンの雲の色が変わったら山へ登ろうレイラ、ライラ。」


 リビングに戻った4人。テーブルを囲んでいる。

「サンドラさん、グアムスタンの雲が薄紫色に変わるのはいつ?」

レイラが言った。


 「薄紫色?雲の色まで気にしちゃいないよ。でも、明日明後日の内にまた雲行きが変わるだろうね。」

「サンドラさん。私達、ママの声を聞かなきゃならないの。グアムスタンの雲が薄紫色になった時。」


 ワンドルはサンドラに軽く頷く。

「その時に山に登りたい。その時を待っている。」

「私らは雲の色まで気にしちゃいないがね。多分、その薄紫色の雲行きは雨がひどくて雷がすごいんだろう。きっと次の雨の時だろうよ。」

「サンドラさん。私はこれで一旦ここを離れます。また明日伺います。」

「パパ。何処へ行くの?」

姉妹は声を揃えてワンドルに尋ねた。

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