第72話 Encounter(出会い) 2

 無言で歩いているワンドルからのリンクに歩みを止める姉妹。


「私も不思議な力を使うんだよ。魔術といってね。この力で、悪い奴らを退治するのが仕事かな。今のこの会話、お前達の力なんだが理解出来るかい?」


歩きながらリンクを続けるワンドル。

「そうか……本当に記憶を失くしてしまったらしいね……。……それでは、お前たちの本当の名前を教えよう……よく聞くんだ。2人が持っている剣、赤いストーンの短剣を持つのはレイラ。そして黄色い短剣を持つのはライラ。それが二人の本当の名前、分かったかな。」


 姉妹はまだ無言のまま。ワンドルはリンクで続けた。

「急な事で無理はない。それに疑いもあろう。……つい先日の話だ。お前達はバリスタンの輝く岩の側にいただろう。その岩は巨人の槍といっている。だが、この時代の人はその岩をまだ名付けておらんがね。……それで、その岩で何か聞かなかったかな?」


 リンクではなく口を開く姉妹。

「ワンドルさん、私達の事をどこまで知っているのですか?」

「あの岩で聞いた会話、もしかしてワンドルさん?」


 立ち止まって話していた。

先を歩いていたワンドルが後ろの姉妹に振り返ると会話を続けた。


「おいおい、そのままリンクして話せばいいものを。」

「リンク?」姉妹は声を揃えて聞いた。

「いかにも、リンクだよ。今こうして心の中で会話したのは、リンクという術式。お前達の記憶がリンクを思い起こしていたんだよ。」


「これも魔術というもの?」

そう言うと、ローは指先からサンダーの小さな光を放って見せた。

アマも掌からバーストの球を放り投げた。


 ワンドルが満面の笑みで答えた。一瞬ワンドルの笑顔が、姉妹の脳裏に父親ガイラの顔を思い浮かべた。

「その通りさ。二人共、術式の記憶は戻っているね。レイラの掌の術式はバースト、ライラの光の矢はサンダーという術式。もう忘れてほしくないな。」


 「バースト……。」「サンダー……。」

姉妹は各々、呟いた。


「さぁ、歩きながらリンクで話そう。お前達は本当に瓜二つで見た目では区別がつかん。意識なら容易に区別できるからね。……おぉ、そろそろグアムスタンの雲が薄紫色になる。その時は二人共一緒に行こう、巨人の槍へ。」

「意識なら私達を区別できるのワンドルさん?それも不思議な力?……雲が薄紫色に。あの時もグアムスタンの雲は薄紫色になっていたんですね。」

「あぁ、レイラの思う通りさ。私達は人の意識を理解する。見た目の偽りは意識を理解すれば分かる。瓜二つのお前達でも意識は違うのだよ。だから判別出来る。」

「今の言葉は私のじゃない。それはワンドルさんが区別出来てるって事ですね。」

「そうさライラ。誰の意識なのかが分かる。リンクの力さ。」


「私はレイラ。」「私はライラ。」

姉妹は手を胸に当て呟くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る