第71話 Encounter(出会い) 1

 姉妹はいつものように市場で用を済ませると、リュージン邸に戻っていった。


 門の近くで待機していたワンドル。姉妹はワンドルには気付かず、そのままリュージン邸に入っていく。


 ローがリュージンに駆け寄り、

「お待たせしましたリュージンさん。」

「お帰りロー。さぁアマもここにおいで。」


 姉妹はリュージンの側の椅子に腰かけた。


 「リュージンさん。お話があると。」

アマが問う。そこへウェンドが側へ来て、

「二人に紹介したい人がいるんですよ。……あ、ほら入って来たわ。あの方よ。」


 ワンドルが門から入って来るのが姉妹から見えた。


 「あの方、二人は思い当たるかしら?」


 姉妹は怪訝な表情を浮かべる。

ワンドルのことは分からない。姉妹の表情がそれを示していた。


 「初めまして。私はワンドル。お前達の叔父おじだよ。やっと見付けた。」

「あの……誰かしら?」

 姉妹は疑惑の表情を隠さず、声を揃えて尋ねた。


 「無理もないさ。記憶を失くしているのだからね。……どうだろう、このままサンドラさんの家に戻りながら話さないか?」

姉妹はサンドラの名を聞き、少しは安心したのか頷いた。


 ワンドルと姉妹はリュージン夫妻へ挨拶も早々に邸を出て、サンドラ邸に向かった。


 道中の会話。


 「二人共、グアムスタンの雲の事は知っているかい?」

ワンドルが問うとアマが答えた。

「えぇ、最近知ったわ。グアムスタンの雲の色が変わったら雨が降る。時には凄い稲光もあって、バリスタンでも眩しいくらい。この町の人なら皆知ってるわ。」

「そうか、では最近はどうかな?二人共、何か思い当たる事はなかったかい?」

 アマは無言になる。そしてローとリンクで話した。

「ねぇロー。この人何か知ってるのかしら?グアムスタンの雲とか、何か知ってるのかなぁ。」

「雲の色が変わると雨が降るってのは、この町の人なら皆知ってる常識なんでしょ?他に何か聞きたいのかしらね。」


 そこにリンクで口を挟むワンドル。

「稲光で岩が輝いていなかったかな?」


 姉妹は驚きの表情で顔を引きつらせた。

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