第68話 Pieces Of Memory(記憶のカケラ) 11

 姉妹がリュージン邸から帰宅したその晩のサンドラ邸。


「それはいい話を聞けたね。それでロー、何か思い出せたのかい?」

「いえ、思い出せることは何も……。全く関係無い話だけど、リュージンさんとウェンドさんにはラビンを届ける事を約束したの。食事を用意してくれるって言ってくれたわ。」

「あの夫婦が元気でなによりだね。それでロー、あなたまさか話にあった遠い国へ行くつもりなのかい?」


 アマがローを制止するように言った。

「それは私達には出来ません、無理な行動はしないわサンドラさん。何か思い出せそうなら相談します。」

「あなた達が遠い国から舞い込んだとは思わないがね、仮に遠い国から来たにしては、何故このバリスタンだったのかねぇ。飛んできたわけじゃあるまいに……。」


 アマは心の中で呟いた。二人のリンクだ。

「遠い国から飛んで……。まさか、有り得ない。」

「アマ、それは分からないわ。確かめるすべがないもの。でも私達、不思議な力はその人達と同じものを持ってる。」

「遠い国かぁ……。同じ力を持つ人達なら、もしかすると私達の事を知ってるかしら。」

「遠い国の人達と同じ力を持ってるのはほぼ確定よね。でも何故私達はバリスタン山にいたの?」

「うーん。遠い国から飛んで来ちゃったとか?」

「有り得ない。飛んできたっていう確証は無いでしょ。」

「そうよね……飛んできて、私達は何故ここにって話になる。」


 ずっと黙ってリンクで話していた2人。サンドラは呆れて晩の食事の支度を始めていた。

 「はいはい二人共。このまま放っておくと遠い国まで行きかねないんでそろそろ手伝っておくれ。」

 姉妹は慌ててサンドラと晩ご飯の支度に取り掛かった。


 「パイルグロスは隣町だから許可したけど、遠い国までは許しませんよ。女2人、星の裏側まで行くまでに何が有るか分かりゃしない。」

「大丈夫よ、サンドラさん、そんな遠い国まで行ったりしないわ。心配しないで。」

「そうね。それは私達には無理ですもの。心配いらないわ。」

「あなた達は、ここで過ごして、過去を思い出してほしいのさ。心配はしていないんだよ、もう少しここにいてくれればと思っているんだよ。」


 サンドラの様子を察してアマが答えた。

「サンドラさんには色々と感謝してます。もちろん他所よそに行ったりしないわ。」

「あたしゃあなた達の事が心配なだけさね。」


 ローもサンドラの心境を察して、

「どこにも行かないって。心配無用よサンドラさん。」


 椅子から立ち上がり、サンドラに寄り添うロー。

アマもそれに応じて寄り添う。


 姉妹に寄り添われたサンドラの目には涙が浮かんでいた。

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