第64話 Pieces Of Memory(記憶のカケラ) 8

 翌日のこと……。姉妹はラビン狩りには向かわずに、サンドラに聞いた前町長リュージン邸に足を向けた。

 そこは平屋の広い邸宅。低い塀が邸宅を囲んでいる。庭もかなりの広さだった。

 アーチ付きの門をくぐり、姉妹は玄関先に着いた。

幅のあるひさしが玄関の周りに影を落としている。脇には長いブランコがあった。

 ドアにはノッカーが付いていて、ローは迷わずノックした。


 しばらくすると女性が出てきた。サンドラより少し年配者のように感じた。


 「あ、あの。リュージンさんにお目にかかりたいのですが……。あ、私はローと申します。こちらはアマ。」

「主人にお客さん。しかも可愛いお嬢さんが二人。どちらからお越し?私は妻のウェンドです。ちょっとお待ちくださいね。」


 ウェンドはあまり邸宅を出ないのか、姉妹の事は知らないようだった。


 奥の部屋のドアの音。しばらくするとリュージン氏が出てきた。


 「こんにちは。足が悪いので腰掛けさせてくださいね。」

言うとリュージン氏は側のブランコに腰かけた。


 「こんにちは、リュージンさん。ローと申します。そしてこちらはアマ。バリスタン山のサンドラさんのお宅にお世話になっています。」

「サンドラの所から。それはそれは。で、何か御用かな?」

「はい。少し以前の出来事について、お話を伺いたくて。」


 妻のウェンドが小さなテーブルをブランコの横に持ってきた。

「今、お茶を持ってくるわね。」言うと中へ戻っていった。


 「旅人がリュージンさんを訪ねて、不思議な力の事を伺ったと聞きました。不思議な力の事について、私達にも聞かせていただきたくて。」

 アマも続けた。

「実は私達、記憶を失くしていて。自分達の事を知りたいのです。そのヒントになるかも知れないとローが言うものですから。」

「おや記憶を失くしたと。それは大変ですね。……不思議な力の話。それは……その昔、その力を持つ人達がここから遥か遠い国にいると聞いたことがありました。遥か遠くの国の人の中には、不思議な力を使い、魔物退治をしている者がいるらしいのです。……訪ねてきた旅人は、その不思議な力を使う者はこの町にいないかと。私には遠くの国の事しか知らないと伝えると、すぐに向かってみると言い残して帰られましたよ。」


 「遥か遠い国……。不思議な力を使う者がいる……。」


 小さなテーブルにお茶が運ばれてきた。

 「さぁどうぞ。飲みながら話してくださいな。」

「ありがとうございます。」姉妹は揃って返事をした。

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