第63話 Pieces Of Memory(記憶のカケラ) 7

 過去の時代……。ある日のフリップグロス、サンドラ邸。

 いつものように、姉妹はラビン狩りに出掛けるところ。


 「今日は一日晴れそうだよ。昨日の日暮れ、空が綺麗な茜色に染まっていたからね。今日は二人共ゆっくりしておいで。」

「いつもありがとうサンドラさん。」

言うとアマはローの手を引き、建物を離れていった。


 バリスタン山のいつもの狩場へ向かう途中、ローが心の中で話しかけた。

「ねぇアマ。私達の不思議な力、サンドラさんが知ったらどんな反応するかしら。」

「それは驚くに決まってる。こんな変な力を持ってる人、町の人にいると思う?」

「それとなしに聞いてみるのはどうかしら。不思議な力を持つ人を知らないかって感じで。」

「それはローに任せるわ。でも私達の不思議な力は伝えないほうがいいと思うわよ。」


 その日の晩。市場から戻ってきた姉妹は、いつものように晩ご飯の支度を手伝っていた。


 ローは急に手を休めて椅子に腰かけた。

 「どうしたんだいロー。今日は疲れたかい?」

「いいえ、大丈夫ですサンドラさん。……。……あの、サンドラさん?不思議な力を持つ人の話は聞いたことがありますか?」

「不思議な力?唐突に何を言い出すかと思ったら。それでその不思議な力がどうしたって言うんだい?」

「サンドラさんはご存知?」

「そうさねぇ……。随分前の話だけど、旅人が町に立ち寄って聞いて回っていたって話だったよ。不思議な力を使う者を知らないかってね。」


 アマは二人の会話を支度しながら聞き耳を立てている。


 「それからその旅の人はどうしたの?」

「前の町長から何か聞けたのか、その旅人はすぐに町を離れたらしいがね。……ロー、あなた何か気になることでも思い出したのかい?」

「ううん、そうじゃないの。先日夢で見たから気になって。」

「夢でねぇ。自分の事を思い出す何かかと感じたのだろうね。それなら明日、前町長のリュージンさんを訪ねたらいいさ。市場の先にある広い家だよ。町長を辞めてからは隠居してのんびり暮らしてるはずだから、いつ行っても会えるだろうよ。きっと旅人の話を聞かせてくれるよ。」

「わかったわ。明日訪ねてみます。」


 アマがリンクして話しかけた。

「思わぬ展開ねロー。明日、リュージンさんの家に行ってみましょう。」


 すっかり支度が整ったテーブル。

 「さぁ二人共―。晩ご飯の支度ができたわ。」

「おや、ごめんなさいねアマ。ついローと話し込んじゃったわ。明日はあなたも一緒に出掛けておいで。」

「そうね。ローは何やら気になってるようだから一緒に出掛けてきますサンドラさん。」


 サンドラ邸では、ようやく3人のディナーが始まった。

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