第57話 Go Back In Time(時を遡る) 4
ブレインラードの町。
およそ300年の歴史を持つ町である。その中心地には多くの資料が残る歴史資料館に、町唯一の教会。役場の建物。そして中心地から少し離れると、やはり町唯一の市場がある。
ガムは歴史資料館を訪れていた。
古い写真や文献を探し、ガムなりに時を遡ろうとここへやってきたのだった。
「ブレインラードの町は300年前に改名された名だ。それ以前はフリップグロスという小さな町だったんだな。この事は彼女達は知らないだろう……。2人が転移されたのが300年より古い時代となると、フリップグロスという町の名……彼女達が記憶を思い起こすには難しくなりそうだ。……へえ、隣町のパイルグロスは古い時代と変わらない町名なんだな。」
陽が高くなる頃、ミランダ邸(旧ガイラ邸)に戻ったガムはミランダに報告した。
「300年より前の時代に転移されたとなると、あの子達の知るブレインラードではなくフリップグロスという町なのね……。」
「転移先がブレインラードであってほしいですねミランダ様。少しでも記憶が戻るきっかけが彼女達には必要です。」
「覚えた魔術まで忘れているかもしれないわ……可哀想な2人。出来る事なら代わってあげたい。」
ミランダは窓越しに遠くを見つめて涙を浮かべた。
「ガイラ様ならどうお考えになったでしょうか……。」
天井を見上げて呟くガム。
「ガイラなら、マタスタシス=テク習得を試すでしょう。彼ならそうするに違いないわ。」
「ミランダ様。もしやあなたも習得をお考えなのでは?」
「それも考えたわ。でもそんなに簡単ではないわ。ワンドルは簡単そうに説明していたけど、4つの術式を最大限に維持する事すら容易じゃない。しかも稲光を浴びながら維持するなんて、とても無理よ。」
「以前のミランダ様なら可能だったかも知れません。」
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