第47話 Another World(異なる世界) 9

 陽が傾いて、姉妹の影が長く道に伸びている。

サンドラは家に帰っている。


 やがて市場にやってきた2人。

ドンバスが首を傾げながら声をかけてきた。


 「やぁ。ロー、アマ。今日は獲物は無しかい?」

「ドンバスさん、今日は狩りはしなかったの。代わりに山菜を届けるようにってサンドラさんが。」

「おやおや、アマ。もしかしてそのバスケットに?」

「思いのほか採れたから、市場に持っていきなさいって。」

「ほー、それは良かった。近頃は山菜を並べる人が少なくて助かるよ。それにしても大層たいそうな量だ、2人の仕事には感服かんぷくするねぇ。」


 姉妹はそれぞれバスケットをドンバスに渡した。


 「ねぇドンバスさん。あの山の向こう、雲しか見えなかったけど。あれは山なんですね。」

「あぁそうさ。グアムスタン山の雲はいつも見ての通り。山肌はお目にかかった事がない。」

「ネズミ色の雲に変わるってサンドラさんが言ってたの。それは見た事ありますか?」

「もちろんあるよ。ものすごい稲光を発してね。その光たるや言葉に言い表せない。町の皆んな知ってる、雨の前兆さ。」

「へー雨の前兆ですか。気を付けておきます。」

「私達、まだまだ知らない事ばかりねロー。」

「さぁ、代金だ。山菜では大して出せないが、次の獲物でサービスさせてもらうよ。」


 2人は代金を受け取ると、グアムスタン山の雲を見てから市場をあとにした。

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