第48話 Another World(異なる世界) 10

 空き部屋には、干し草を集めてシーツを掛けたベッドが2つ。

そのベッドに横たわる姉妹。月明かりが差込み、部屋は薄明るくなっている。


 ……市場に山菜を届けた日の晩のこと。


 「ねぇアマ、まだ起きてる?」

「まだ起きてるわ。どうしたの?」

「私、あのグアムスタンって山。前にも見た事あるような気がするの。」

「ローも同じ事を感じたのね、私もよ。懐かしいと言うか、以前よく見ていた気がするのよ。」

「しかもあなたと2人で、よく見たように感じるの。」

「そうよね。もしかしたら、私達の思い出せない記憶の一部かも知れないわ。」


 姉妹は心で会話を交わしている。これがリンクと言う術式だとはまだ気付かずにいたのだった。


翌朝、姉妹はラビンを追ってバリスタン山の岩山にやってきた。


 「今日はラビンがいないわね。」

「ずいぶん山を上がってきたわねアマ。」


 遠くグアムスタン山には相変わらずの白い雲。


 「痛たたた。なんだか頭が痛む。」

「うん私も。狩に来ると必ずこうよ。もしかしてこの場所も私達の記憶に関係あるのかしら。」

「そうだとしても、この痛みは辛いわね。でもここは何かを思い出せそうな気がする。」

「ローと同じ気持ちよ。私達、ここへ来ればきっと忘れた記憶を取り戻せるんだわ。」


 2人はコンコンと自分の頭を小突こづいて苦笑いした。


 失われた記憶は取り戻せるのだろうか?疑心暗鬼の胸の内を、姉妹は誰にも話せないままに時が過ぎていくのだった。

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