第43話 One More Person(もう1人の人物) 2

 翌朝のリビング。3人は朝食を済ませテーブルを囲んでいる。


 「なるほど。グランダはこの世界に意識だけが存在していたのか。意識が弱いのはそのせいだったんだ。」

「今のグランダは妖魔を仕向けることしか出来ません。」


 「ガムの考えは名案だが、4本の爪は今でも青く光る事があるのかい?」

頻繁ひんぱんではないの。光った時はグランダの意識が近いと分かるの。ただ、そのタイミングでリンクしてもシンクロしても子供達の意識は感じ取れなかったのよ。」

「母であるミランダ様でもコンタクト出来ない。それならこの爪が光る時に何か解決策がと考えています。」

「なるほど。シグナルとしては分からなくもない。……だが転移の際、別の術式も使ったのかもしれない。」

「別の術式⁉︎」

左様さよう。術式の名はクルスオブメモリーロス。」

「クルスオブメモリーロス……呪いの術式。2人は記憶を消された⁉︎」


 2人は驚きの表情を見せる。


 「知っているだろう、相手の記憶を消す呪いの術式だ。」

「ではあの子達は記憶を失っていると?」

「グランダが使ったとなればの話だがね。」


 しばらくミランダとガムは無言のままうつむいていた。


 「子供達の記憶が消されたとしても、何かきっかけがあれば失った記憶でも復活する。気を落とさない事だ。」

「でもワンドル。たとえリンク出来ても子供達に記憶が無いのでは手に負えません。」

「確かに。だがグランダはまだ未完成の術式なはず。……さて私の行動は決まった。過去を辿たどってみる。」

「ワンドル様。辿るって、何千年もの時をさぐるのはキリがないのでは?」

「確かにな。だが1度行った過去にはすぐに行ける。しかし何千年は大袈裟だよ、あり得ない。先ずは訪れた過去に向かうがそれ以後は体力と相談しながら向かうさ。」

「ワンドル。転移術式はどの位の体力が必要なの?あなたの身体に影響は無いの?」

「心配無用だミランダ。さぁさぁ、こうしている間も時は経ち、過去が重なっていく。しらみつぶししか手はあるまい。ここには度々戻る。何か分かったら教えてくれ。」


 そう言うとワンドルは、グランダの爪の1本を手にゆっくり立ち上がり外へと出ていった。

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