第42話 One More Person(もう1人の人物) 1

 ガイラが身をていしてグランダを討伐した頃。もう1人の最強魔道士は別の地域でグランダの意識を探っていた。

 ガイラと同レベルの魔道士にして、唯一マタスタシス=テクを習得した人物……名をワンドルと言った。


「グランダの意識が薄れていく……ガイラが遂にったのか。」


 その男は、マタスタシス=テクを使い姿を消した。


 再び姿を現した場所は、グランダがひそんでいたと思われる洞窟。

又、別の場所にも点々と移動した。


 「グランダの意識の残影か⁉︎……薄い意識しか感じ取れない。」


 やがてバリスタン山近くまで移動して来たワンドル。

 「この辺りが一番グランダの意識が強い。……しかし、以前のグランダの意識に比べたら弱過ぎる。死にかけている⁉︎……それともブレインラードで殺られた?……ガイラの意識を全く感じないがどうなったのだ⁉︎」


 ワンドルはブレインラードに移動した。


 「地面が荒れている。まだ新しい。……ここでグランダを倒したのか……。ガイラの住まいの近くだ。……ミランダの意識は分かる。それともう1人……!!。ど、どうした⁉︎ こ、子供達の意識が見当たらん!」


 ワンドルは再び移動、ガイラ邸前に姿を現した。


 ドアをノックする。

まもなくしてミランダがドアを開けた。


 「こんにちは、どちら様でしょう。……はっ!ガイラ⁉︎」

「お初にお目にかかります、ミランダ。私はガイラの双子の兄、ワンドルです。意識を掴まれないようここまで来てしまった無礼、許してください。」

「い、いえ、構いません。あまりにガイラにそっくりなもので……。さぁ話は中で。どうぞお入りください、ワンドルさん。」


 リビングに通されたワンドル。

テーブルではガムが本を読んでいた。


 「どうぞ掛けて。今お茶をお持ちします。」

「ミランダは訪問者がガイラの双子の兄で驚いたろう。突然の訪問で申し訳ない。グランダの意識を辿たどっていたが、この辺りが一番意識が強かった為だ。」


 腰掛けたワンドルを見て、読書をしていたガムも驚いている。


 「は、ガ、ガイラ様!」

「いや違う。私はガイラの双子の兄ワンドル。君は?」

「あ、申し遅れました。ガイラ様の弟子のガムと申します。ガイラ様に双子の兄君あにぎみがいらっしゃると存じ上げず取り乱しました、申し訳ありません。」

「いや、気にしなくていい。ところでガイラは、ガイラはグランダを殺ったのか?」


 そこへティーセットを持ってミランダが腰掛けた。


 「ワンドルさん……ガイラは……ガイラはグランダと相打ちとなり亡くなりました。」

「ガイラが!……しかしグランダの意識はあるが……。それに子供達は?……まさかグランダに⁉︎」

「子供達の事はご存知でしたのね。実は今日……。」


 ミランダは戦いの一部始終をワンドルに話した。


 「グランダがマタスタシス=テクを子供達に使った⁉︎……グランダはまだ身に付けていなかったはずだ。」

「ワンドルさん。私も半信半疑だったのですが、どうやら間違いなさそうなんです。」

「ワンドルでいい、ミランダ。……今は辛いだろうが気を確かに持ちなさい。」

「もう大丈夫です。ご心配なくワンドル。」

「多分子供達は別の世界に飛ばされたのだろう。いや、過去の世界だと判断出来る。自らが術式を使う場合は過去未来へ転移出来るが、自分以外に使った場合は過去にしか転移しないのは確認した。だから子供達は過去に転移したと言える。グランダがいつから存在したのか確かめたくて、私も何度か過去の転移世界を見て来た。」


 ミランダとガムは驚きの表情。


 「確認した、転移世界に行ったと?……ワンドル様はマタスタシス=テクを習得されているのですか?」

「いかにも。しかし術式で向かう転移世界とは、全て過去の時代。現世より未来へは転移できない。同じ時代を渡るもしくは過去へ渡る。それしか叶わない術式だ。弟ガイラは、そんな中途半端な術式マタスタシス=テクを習得することはこばんだがね。」

「未来へは転移不能な術式なんですか……。中途半端と結論付けたのはガイラ様らしいですね。」

「……子供達が過去の、いつの世界に飛ばされたかはまだ分からない。……だが子供達は私のめいでもある、今後はできる限り協力しよう。」

「過去に転移してしまった姉妹は、術式を使わない限り、現世に戻れないということになるのでしょうか?」

「時間の厚みによるが、私が2人を転移させられなくもない。だが人を転移させたことはない。子供達自身が術式で現世に転移を行うには熟練も必要かもしれぬ。また、それはどの位過去なのかにもよるがね。」

「転移先の時代によっては不可能なのですか……。」

「いや、記憶と現世のなにがしかの意識さえあれば転移は容易。……なぁに、ガイラの子供達だ方法は見付かるさ。……私が必ず見付け出し2人に習得させる事も考える。習得出来るようなら指導も惜しまない。」

「心強い限りです、ワンドル様。」

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