第39話 Another World(異なる世界) 4

 翌朝、サンドラ邸……。


 「2人共、こんな朝食だけど召し上がれ。」

「ありがとうございます。」

2人の少女は声を揃えて言うと、スープに手を伸ばした。


 「温かくて美味しいわ、サンドラさん。」

「パンはこうやって、スープに付けて食べるのよ。」

「うぅん、美味しい。」


 しばらくの朝食の時が続いた。


 「あなた達、この先行くところはないでしょう?こんなボロ屋敷で良ければ、しばらくここで過ごして良いのよ。」


 2人は寂しそうに見つめ合った。そして心で会話している。

「どう?悪い人ではなさそうだし、少しお世話になる?」

「うん、それは賛成だけど、私達がここにいる間、何かしなければって思うの。」

「そうね。お手伝い……何か仕事を探す?」


 「遠慮しなくていいわよ。ここフィリップグロスは小さな町だから宿は無いのよ。」

「あの、サンドラさん。私達に何か出来る事は無いですか?何かお手伝いでも……。」

「ここは大丈夫、心配ないわ。……そうね、町長さんに相談してみるわ。あなた達は腰に下げている短剣で猟が出来るのかしら。」

「短剣……これで何をしていたのか記憶に有りません。思い出したら使える様になるかも知れませんが、今は……。」

「そうよね。何か思い出すまで、町を散策したり、森に行ってみるのもいいわ。ちょっと待ってね、ランチを作って持たせてあげる。出来たら呼んであげるから、それまでここの周りを散歩していて構わないわ。」


 姉妹はサンドラ邸の周囲を散歩する事にした。


 「私達、何故心で会話が出来るのかしら?」

「もしかしたら私達の記憶に関係あるのかなぁ。」

「森へ行ってみましょうか。」


 馬の様な四肢ししを持つ動物が、馬車を引いて通り過ぎる。

 他の家からは、家畜だろうか、鳴き声が時折聞こえてくる。


 サンドラがランチバスケットを抱えて姉妹を見付けた。

 「さぁ2人共、これをお持ちなさいな。陽が高くなったら食べていいわよ。陽が傾いたら戻っておいで。」

「ありがとうサンドラさん。そうします。」

姉妹はバスケットを受け取り、今度は森へ足を向けた。

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