第35話 Another World (異なる世界) 2
麓に向かう途中の森。小川のせせらぎが聞こえている。
「小川?……ちょうどいい。喉が渇いていたの。少し休みましょう。」
2人の少女は小川に近寄り、喉を潤した。
水面に映った2人の顔。1人が言った。
「ちょっと見て。私達、顔も似てる。」
「何故なの?私達は知り合い?……それとも……。」
「繋がりが有るのかも知れないわね。」
「人がいる所まで行きましょう。私達を知る人が居れば何か聞けるかも。」
「同感。さ、急ぎましょ。」
2人は少し早足で森を歩いて行った。
遠くの山の頂、更に遠くには白い雲が陽の光に照らされて輝いていた。
陽が傾き始める頃、ようやく2人は民家が点々と並ぶ場所へと降りて来た。
「私達、何て話しかければ?」
「この場所を尋ねましょう。私達を知ってれば、そこで話が進むわ。」
2人は煙突から煙が立ち上る一軒を訪ねた。
「ごめんください。どなたかいらっしゃいますか?」
まもなくして、初老の女性がドアを開けた。
「あら、旅の方?何か御用かしら?」
少女の1人が心の中で呟いた。
「この人は私達を知らないみたい……。」
「もう陽が暮れる。さぁ中へどうぞ。少し休んでくださいな。」
初老の女性は2人を中へ招き入れた。
「この子の心の言葉が聞こえた……どうして?」
1人の少女が心で呟いた言葉を、もう1人の少女の心の中で聞く事が出来たのだった。
「あまりおもてなしは出来ないけど、暖かいお茶位なら。」
そう言って初老の女性はキッチンに入っていった。
「ねぇ。あなたさっき、心の中で私達は知らないみたいって呟いたでしょ?」
「え、えぇ。何故分かったの?」
「何となく聞こえてきただけ。」
「はい、どうぞ召し上がれ。今朝の残りでごめんなさいね。」
初老の女性は2人に今朝の残りのスープを差し出した。
「あなた達双子ね。良く似てるわ。名前は何て?」
2人共スープを飲む手を止めて
1人の少女が口を開いた。
「それが……思い出せないんです。」
「何故だか分かりません。双子とは何ですか?」
「まぁ大変。何処か怪我は無いの?ドクターを呼びましょう。少し待ってね。その間にスープを食べていなさい。」
そう言うと、女性は上着を羽織り、外へ出て行った。
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