第30話 Battle(戦い) 3

 立ち止まっていたグランダに追いついたガイラ達。


 「皆、攻撃魔術を!私は隙を突いて奥義を仕掛ける!」


 一斉に魔道士達の攻撃が始まった。

グランダが気付いて応戦する。


 大きな右腕の爪を振りかざし、跳ね飛ばされる魔道士もいた。


 「皆、そのまま続けるんだ!ひるまず続け!」

ガイラはまばゆい攻撃の光の中、グランダに近付く。


 グランダは一瞬、もの凄いパワーのリンクを魔道士達に向けると、魔道士達が次々と倒れていった。


 「なんというパワー。……リンクにパワーを掛けただけで魔道士達を倒すとは!」


 ガイラの剣からバーストの光が放たれ、グランダの頭や身体をかすめた。

「クッ。こちらのパワーをゆがめたのか⁉︎」


 続けるガイラの攻撃魔術を避けているグランダ。


 「フッ、バカめ。無駄な事を。いくらやってもかすり傷一つ負わんわ。」

ガイラの周囲の魔道士達は皆倒されてしまった。


 「ふっ。殺すのは惜しいが、名前だけは聞いてやろう。名は何と言う?」

「この星の最上級魔導士にして剣士、ガイラ。……グランダ!貴様の首をぎ落として、術式を使えなくし、その減らず口が叩けぬようにしてやる!」

「ふんっ。貴様こそ減らず口はそこまでにしておけ。貴様の娘達は別の世界に転移させてやる。クルスオブメモリーロスで娘達の悲しい思いは記憶から消してやろう。」


 裏庭にゆっくり歩きながら語るグランダ。


「な、何故娘達を知っている!。」

「双子らしいじゃないか。2人共面倒見てやる。」


 裏庭の姉妹が見える。


 「ふぁっふぁっふぁっ。クズ魔道士よ、よくグランダ様にここまで楯突たてついたな。貴様にはもう力は残っていまい。さぞ娘達が心配だろう。」

 


 双子姉妹の父親ガイラは、残る力を振り絞って剣を振る。

姉妹が術式の練習をしている裏庭に近付けまいと必死だ。


 「バーストッ、バーストッ、パワーバーストッ!」

ガイラの剣と魔術がグランダに当たる度に、真っ赤な火花が散る。


 姉妹に徐々に近付いている。


 「まだ力が残っているのか。ふっ、ではこれで終わりにしよう。グゥワーーーッ!」

 グランダの大きな爪がガイラの身体を切り裂く。

「貴様こそ2度とこの星に戻れなくしてやる! どぅりゃああああっ!奥義ドラフターソーーードーッ!」

 グランダの爪に切り裂かれると同時に、すかさずガイラの剣先から、炎の渦がグランダを取り巻いた。

 「うっ、うおーーーっ、めろー!」

炎の渦がグランダの全身を包み、やがて身体を消し去った。


 グランダは長い雄叫おたけびの後に叫ぶ。

「……マタスタシス=テクーーーッ!クルスオブメモリーローーース!」

グランダが双子姉妹に術式を放った後、頭の頂点に赤々と炎をまとう剣が突き刺さり跡形もなく消えたのだった。

……だが、野原には引き裂かれたガイラが横たわっていた。服が引き裂かれ、骨や内臓まで見えて、既に息絶えているのが分かる。


 裏庭で魔術の練習をしていた双子の姉妹の姿が、グランダの転移術式マタスタシス=テクによって異世界へと転移してしまった。


 戦いでよどんだ空間にグランダの声だけが響く。


「ふぁっふぁっふぁっ。まだ未完成の術式マタスタシス=テクでさえも上手くいった様だな。ざまあみろクズ魔道士め。」

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