第16話 Chapter(章) 14

 姉妹にとって、最後の下級魔術、シンクロの練習。


 何日か前から練習を続けてきたが、どうやら姉妹には要領も掴めていない様子。

今朝も早くからリビングの椅子に腰掛け、レイラとライラが向き合っている。


 「相手の意識に自分の意識を乗せる感じ……。ライラの意識は掴めても、自分の意識が乗せられないなぁ。」

「レイラの意識を掴んで自分の意識を乗せる感覚が分からない。乗り移るって事?……一体どうやるんだろ……。」


 昨夜、父ガイラは久しぶりに戻ったが、妖魔神グランダを追い詰める事が出来そうな戦況で、今朝早くに出掛けてしまっている。

姉妹はガイラからのアドバイスを聞きたかったが、すれ違ってしまい残念がっていた。

母ミランダはと言うと、馬を走らせ、麓の街まで買い物に出掛けていた。


 買い物を済ませたミランダは、街のサルーンで一休みしていた。


 「あの子達、しっかり練習してるかしら。前程練習を投げ出したりしなくなったけど。……うーん、ここからじゃ2人にリンクが届かない。……リンクフルもダメね。ここじゃ遠すぎるのかしら。……じゃあ少しだけ……。」

 ミランダはパワーブースト=リンクフルで娘達の意識を探った。

 「掴めた!……レイラもライラもしっかりやってるわね、よしよし。……2人共、聞こえるかしら?ママは買い物が済んだからこれから帰るわ。シンクロの疑問が有ったら話しましょ。」


 ミランダはそこでパワーブースト=リンクフルの意識を切った。


 「レイラ。ママのリンクの意識を掴んだ。これから帰るって。」

「うん。私も掴んでたわライラ。シンクロの疑問を書き留めておかなきゃ。」


 姉妹からは意識を送れはしないものの、ミランダからの強い意識から、言葉が感じられたのだった。

 ……ところが、姉妹以外にも今のミランダの意識を感じた者がいた。

妖魔神グランダだ。


 ブレインラードの街からは、かなり離れた所に身を隠していた様だが、強いミランダの意識を感じ取ったようだ。

 グランダは、妖魔を送り出す時だけ強い意識を発するが、それ以外の時は意識を掴まれない様に身を隠し潜んでいる。


 「こ、この意識……。忘れもしない。我を誘き出そうとするクズ魔道士のリンクではない。……この意識は我の左腕を負傷させた魔道士の意識に間違いない……。ようやく見つけたぞ、この近くにいたのか。……ふふふっ、遂に左腕の復讐も近いかも知れん。妖魔を続けて送って誘き出してやる。」


 ガイラや魔道士達は、妖魔神グランダの潜んでいるであろう場所はおおむね突き止めていたが、実際に潜んでいる場所の特定は出来ていなかった。

その為、魔道士達は、パワーブースト=リンクフルでグランダを誘き出そうと意識を送り続けていた。

当然グランダは、掴んだ意識の区別は出来ている。

その中にミランダの意識を感じ取っていたのだった。

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