第15話 Chapter(章) 13
ランチを終えて、練習を始めた2人。
側でミランダが見ている。2人の意識を探っているようだ。
レイラは、薪にバーストの小さい炎を点けたい。……がどうしても炎の大きさが大きくなりすぎる。
ライラは、薪に文字を彫ろうとするものの、光が上下に動いて薪に切り込みが入ってしまう。
「はいはい2人共一旦やめて。コントロールは出来てきてる。でも今以上に小さな力に変えられないでいるわね。ここで2人にヒントをあげる。レイラ。あなたのバーストを、指先から糸を出す様に考えて炎に置き換える。ライラ、サンダーはどうしても揺らぎながらスパークしているから、揺らぎを抑えて1点にだけスパークを向ける。さ、やってみて。」
姉妹はミランダに言われた事を思い起こしながら、イメージを膨らませて実行に移そうと頑張っている。
レイラは何本かの薪を燃やしたが、徐々に炎を細く出す事が出来てきた。
ライラも何本かの薪を切り刻むだけだったが、サンダーの揺らぎが無くなっていくのが分かる。
ミランダは黙って頷いていた。
レイラは遂に、薪の1点に炎を向けて焦がすことが出来た。
ほぼ同じくして、ライラも細いサンダーの棒の様な形を表す様になった。
ミランダが少し強めのリンクを2人に送る。
「もう少し。あともう少しよ、頑張って!」
このリンクの強さにはさすがに姉妹は気がついた様だ。
レイラは1本の薪に、いくつもの小さな焦げ跡を作れる様になった。
ライラも自分の名前を薪に刻むことができた。
「はーいやめて。2人共、上出来よ。で、どう?力の強弱はイメージも大事なのが分かったかしら?弱い力で操る為の見た目をイメージする。力をゆっくり弱めていく。力がちょうどいい強さになったらその状態をキープして連続する。もう2人共身に付いたみたいよ。グアムスタンの雲が変わってきた、雨が降るわ。そのコントロールを忘れないうちに家に入りましょう。」
3人がリビングに戻ってきた。
「2人共、今度はムーブに応用してみる。自分のカップをソーサーに移動してみて。力のコントロールは同じよ。」
姉妹はムーブを始めた。2人のカップがカタカタとテーブルで音を立てていたが、やがてフワフワと浮き上がる。
手振りも加えて、ソーサーに乗せた。
「その調子よ。……じゃあ今度は紅茶を注ぐわね。重さが変わるから、浮かせる強さに気を付けて操る。はい、やって。」
2人のカップはしばらく浮かなかったが、やがてゆっくり浮き上がって、ソーサーに無事着地。カップを落とさずに出来た。
「レイラ、イメージ出来た?」
「カップを浮かせるイメージが難しかったけど、1度イメージ出来たら操るのは楽だった。」
「ライラはどうだった?」
「私はカップ自体のイメージがなかなか出てこなかったけど、1度カップがイメージ出来たら楽に操れた。多分このままどこにでも移動出来そう。」
「えーライラ、それは凄い。やってみせて。」
ライラは、ソーサーから浮かせたカップを、紅茶をこぼさずにフワフワとテーブルに沿って動いて、一回りしてソーサーに戻した。
「テーブルも一緒にイメージに加えて、カップを動かす様にゆっくりね。」
レイラも同じ様に、テーブルに沿って一回りさせてソーサーに戻した。
「2人共イメージが良く出来てるわ。これならポットでお茶を注ぐのも出来るわね。ムーブのコントロールの感覚は大丈夫の様だから、晩までムーブの練習。テーブルに辞書を持ってきなさい。辞書自体を動かす事と、1ページずつめくる練習。ページを破いたりしない力でね。カップより軽いから少し難しいわよ。」
2人はテーブルに辞書を浮かせながら持ってきて動かしていた。
そして次にページめくり。
何やら辞書とにらめっこしてる風にしか見えない。
ようやく2人共表紙はめくれた様だが次が進まない。
「ママー。ヒントをください。紙が軽すぎてコントロール出来ないの。」
「ママ私も。ページをめくるイメージをしながらやっていても浮かびもしないわ。」
キッチンのミランダから2人にリンクが送られてきた。
「あなた達、本のページはどうやってめくってるの?それを考えなさい。」
2人は辞書の表紙から順に手でめくっている。
1ページ、2ページ、3ページ……。
ゆっくりめくったり早くめくったり。
2人の動きはさすが双子、シンメトリーのままだ。
数十ページもめくっただろうか、2人は同時に向き合った。
「レイラ、分かった。」「ライラ、私もよ。」
2人はパタと辞書を閉じて、表紙からムーブを使ってめくり始めた。
ミランダはキッチンで晩の支度をしながら、2人の意識にシンクロして、見た目を確認していた。
「最初は紙の軽さに惑わされてたけど、手でめくる要領を見つけたのね。えらいわ、レイラ、ライラ。」
当の2人は、ミランダに意識を掴まれている事に気付かず進めていた。
キッチンの支度を終えて、お茶のトレーを持ってリビングの椅子に腰掛けた。
ミランダはその間ずっと2人の意識を掴んでいたが、気付かれない。
苦笑いしながらムーブでカップにお茶を注ぐ。
そして2人に声を掛けた。
「はーい。2人共上出来。一休みしましょ。……一つ残念なのは、2人共意識を掴まれている事に気が付いてないわね。」
「えっ⁉︎練習中、ママのリンクに気を配ってたけど、感じなかったわ。」
「私もよママ。レイラにも私にもリンクしていたの?」
「残念でした。今回はキッチンにいる時からシンクロしてたわよ。2人の見た目も確認出来てたのよ。レイラはようやくライラのムーブに近くなった。ページのめくり方は、手でめくっていくのと同じ要領にも気付いた様だし、辞書のムーブはオッケーよ。」
「シンクロ……。ねぇ私もライラも意識を感じてなかった。」
「ママはキッチンにいる時から私達の意識を掴んでいたの?」
「そうよ。キッチンで晩の支度中ずっとね。2人の見た目を確認してたわよ。」
「私、ちゃんと辞書を見ながらイメージして、ページをめくってたわ。」
「最初のライラは何度か天井を見上げてたみたい。レイラも最初は辞書に突っ伏してた様だけど。結果2人共上達したじゃない。ママは満足よ。」
「あ、確かに天井見てた。」
「私も辞書に突っ伏してた……。ママ、リンクで意識を掴むのとシンクロとではどう違うの?」
「レイラはいい所に気が付いたわ。ライラも聞いて。……リンクは相手の意識だけ掴む。意識を掴まれた感覚は強い。シンクロは相手の意識に自分の意識が乗る感じ。だからシンクロは相手の動きが自分の事の様に感じ取れるのよ。リンクより少し難しいわ。でも強いシンクロはリンクよりも更に気付かれやすい。」
ミランダはムーブを使い、辞書をテーブルの隅に避けると、カップとソーサーを2人に勧めた。
「下級魔術シンクロ、上級はシンクロフル。そして最上級のシンクロ=テク。更に、最上級複合魔術、パワーブーストシンクロ=テク。最上級複合魔術を習得すると、相手にシンクロしてパワーを加え、相手の意識を増幅して自分の身体で感じる。そこまで出来ると相手の動きまで操る事が出来る。」
「そんな事が出来ちゃうの?……シンクロ恐るべし。」
「ライラ、それ使ってなんかいたずら想像したでしょ?」
「えへへ、バレた?レイラを操って、バケツの水をジャバーって頭からかぶる想像した。」
手振りで話すライラ。
「まぁ実際にライラの想像通りなのは確かね。でも、ほとんど相手に気付かれて跳ね返される。成功率の低い術式よ。あなた達がリンクを感じ取れる様になったのと同じ。シンクロも感じ取れるのだから、そこにパワーを加えてブーストで意識を増幅なんて、途中で気付かれてしまうわ。」
「シンクロの弱点って訳ねママ。」
「そう。だからシンクロは妖魔には使わずに、仲間の魔道士に使う。もちろんリンクしてシンクロするのを伝えてからよ。仲間の魔道士の目や耳を借りる。いわゆる情報共有ね。」
「レイラを操るんじゃなくて、レイラの目や耳の情報を知れるって事になるのね。」
「いたずらには使わせないわよライラ。」
「さぁさぁ、2人共。つぎの練習は、シンクロを感じ取る事。そして、パワーやブーストを使って相手の情報を得る事。最初の上級魔術の練習になるわね。」
時折グアムスタン山の雲が稲光を発し、外は雨が降ってきた。
姉妹16歳半ばの事だった。
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