第14話 Chapter(章) 12

 今朝の天気は上々。

とても心地良い爽やかな風が吹いている。


 双子姉妹は、それぞれ暖炉の薪を手に外に出ていた。


 昨日ミランダが話してた様に、魔術のコントロールの練習だ。

2人は少し離れて座っている。


 「そろそろ始めましょライラ。」言うとレイラは片手に赤い炎を出した。

「この薪を暖炉に焚べるつもりで……。」手をかざして力のコントロールをしようとしている。


 一方のライラは、指先に黄金の光を導き出す。

「薪に文字?……このまま切断しちゃいそう。」

指先に集中して、薪に文字を彫ろうとするライラ。

力のコントロールが出来ていないのか、薪に切り込みが入ってしまった。


 急に立ち上がり、切り刻まれた薪を抱えて駆けていくライラ。

レイラが持っていた薪は赤々と燃えていた。


 ライラもレイラと変わらない。薪に切り込みだけが増えていた。


 「よいしょっと。はいレイラ、刻んでしまった薪を余分に持ってきたわ。思う存分練習しましょ。」


 どかっと置かれた切り刻まれた暖炉用の薪。ライラは一筋縄ではいかないのを悟った様だ。


 「レイラも同じ事考えてたのね。私も当分ダメそう。見てよこのズタズタの薪を。文字を彫るなんていつになる事やら。」

「強い力を加えるのは楽でも、弱い力に抑えて操るのが難しいわね。ママのムーブのコントロールはどれだけ弱い力なのかが想像つくわ。さ、頑張ろレイラ。」

2人はたくさんの薪を前に再び練習を始めた。


 陽がかなり高くなると、家からバスケットを持ってミランダが出てきた。


 リンクを使って、姉妹に話しかけてみる。

「……うーん、やっぱりだわ。一つの術式に集中しすぎて私の意識に気が付かない。まだまだ下級は下級ね。」

呟きながら2人の所に歩いて来るミランダ。


 姉妹はミランダに気が付いていない。

 ミランダはほんの間近まで来て立ち止まり、リンクしてみる。

「ここまで近くにいて私の意識に気が付かない……これは先が思いやられるわね。」


 姉妹は真剣に取り組んでいるが、1つの術式だけ。ミランダは直接声を掛けた。

「そろそろランチにしましょうか2人共。」

姉妹は驚いてハッとしている。

「あっママ。いつからここにいたの?気が付かなかった。」

「ママ、もうランチの時間?……この薪を見て。切り込みが入るだけのズタズタの薪……。」

ミランダは2人に手招きして座り込んだ。


 「レイラのバーストで焦げ臭いから風上かざかみで食べましょ。せっかくのパンが台無しになっちゃう。」

姉妹も側に座り込む。


 「ママ、2人が真剣に練習していて感心したわ。ママのリンクに気付かない程だものね。」

姉妹は褒められていると思い、照れている。


 「2人共!褒めてないわよ!私が妖魔だったら2人はもう虫の息でしょうね。……ま、今は仕方ないわね。まずコントロールの練習だもの。上手く操れる様になったら、今度は周囲に気を配りながらの練習よ。」

ミランダに言われて項垂うなだれていたが、レイラが口を開いた。


 「ママにリンクされた時、全く意識に気が付かなかった。妖魔が近づいて来ても同じ。……られる。……ライラ。半べそかいてもダメなものはダメ。もっともっと練習しなきゃ。」

目を潤ませながらライラがうなずいた。


 「さ、2人共。ランチにしましょ。」


 小鳥達のさえずり、心地良いそよ風。

3人はランチのパンを食べ始めた。

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