第13話 Chapter(章) 11

 ある日の朝。

ブレインラードのガイラ邸。


 穏やかな陽差しの中、ミランダと姉妹は外に出て、3人が少し離れて座っている。

リンク系上達の為の鍛練をしていた。もちろんリンクしての会話をしている。


 「やっぱり私もリンクを使わなきゃならないなんて……。子供達に伝授するのは気が引けるけど、ガイラの言う通りなんだわ。子供達には実力は有るのだから。心配するのは野暮ね。」

「ママー。さっきから何をブツブツと。何か心配事?」

「レイラ。なんでもないわ、心配無い。」


 既に一連の会話はリンクを通してお互いに通じている。


 「ママったらリンクが使えるのに黙っていたなんて。パパと結婚して使わなくなったからってのは言い訳なんでしょ?」

「ライラには見透かされてる様ね。……ママはパパと知り合う前はガムという弟子がいたの。パパと共通の弟子。ママはガムにリンク系を中心に教えていたわ。リンク系上級魔術リンクフルまで習得させた。当時、最上級魔術のリンク=テクを習得している魔道士はママ以外には少なかった。そのうちガムもリンク=テクまで習得出来るでしょう。」

「ママはパパと知り合って、結婚したでしょ?シンクロだけで用が足りたからリンク系を使わなくなった訳ではなさそうに感じる。というか、ママの意識は最上級のリンク=テクを封印したみたい。どうしてそんな事したの?」

「まぁ。レイラにも見透かされてるなんて……。もうあなた達には隠せない様ね。……リンク系上級複合魔術、パワーブースト=リンクは、妖魔の意識を掴んで誘き寄せる力があるのよ。リンク系最上級魔術リンク=テクは、最上級複合魔術パワーブースト=リンク=テクとして使うとあらゆる意識を掴む事が可能なの。植物や動物の意識まで掴める、繊細かつ強力なリンク効果。」

「私達がママのリンク系能力を知った以上、全て伝授して欲しい。レイラと一緒にパパの手助けをしたい。」


 立ち上がって2人を見ながら話すミランダ。

「残念ながら、それはパパは望んでいないわ。自分の身を守る為に、術式を教える様に言われてるのよ。それは危険を避ける為。パパは手助けは望んでいないわ。ママだってパパの手助けをしたいし、いつも行動を共にしていたい。でもパパは、あなた達の魔術教育をして欲しいと言っていました。」


 長い話も、姉妹は全てリンクで応じられる様にまで上達している。お互いに掴んだ意識をバランス良くコントロール出来ている。


 「それで?ママは何故リンクを使わなくなったの?」

「それはねレイラ。上級複合魔術のパワーブースト=リンク、また最上級魔術のパワーブースト=リンク=テクは、どちらも力が強すぎるが故に、相手に掴まれるとこっちの居場所を特定されてしまう欠点があるの。小さい頃のあなた達を守る為、ここの場所を見つけられては大変な事になる。だからこの事はあなた達には最後に伝えるつもりだったわ。だから今は術式の名前だけ覚えていればいい。あなた達はその前に、まだまだパワー系ブースト系を鍛練する必要があるわよ。上級魔術を覚醒させなきゃ次に進めない。頑張って練習するのよ。」

「ねぇママ。私達はまだ下級術式ばかり。上級はどんなもの?」


 腰に手を当てて答えるミランダ。

「ライラは今はムーブとサンダーが安定してるわね。上級を覚醒するとフルサンダー。そしてムーブフルよ。レイラの術式はバーストね。上級になるとフルバースト。別々の術式それぞれにパワー系やブースト系を複合させて、強力な複合魔術が覚醒するのよ。今のあなた達のやる事は、下級魔術を安定してコントロールする事。」

「ママのムーブのコントロールと同じね。」

「ライラのサンダー系だって、コントロール出来れば、木に文字を彫ったりする事まで出来るわよ。レイラのバーストも、パイプ煙草たばこに火を点けたり、暖炉の薪に火を焚べたり。強弱をコントロール出来るように練習する事ね。」

手振りを加えて語るミランダ。


 「薪に火を点ける……。今はまともなコントロールが出来なくて暖炉ごと吹き飛ばしてしまいそう。」

「私もレイラと同じ……。木に文字を彫るなんて力のコントロールは出来ないわ。そのまま木を切り倒してしまいそうよ。」

「それを2人共練習する事。家の中ではやらないで。住む所が無くなりそう。」

「失礼しちゃうわねママ。……でも今はぐうの音も出ない。」

「家を壊さないように、毎日外に出て練習よライラ。」

「はぁい。頑張って練習するー。」


姉妹の練習に思いやられそうなミランダであった。

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