第12話 Chapter(章) 10

 ガイラが帰宅した日の晩。


 姉妹が寝てしまうと、リビングのテーブルではガイラとミランダが話をしていた。

「もう少し早くグランダを誘き寄せれば、犠牲は少なかったが間に合わなかった。……あぁ、そうだ。ガムが君によろしく伝えてくれと言っていたよ。」

「あら、ガムの所に寄ったのですか?」

「うむ。シュトランの丘でパワーブースト=リンクを使って誘き出そうとしたが、逃げられた。」

「ガムの魔術は上達していました?」

「あぁ、全て上級魔術を習得している。」

「私のリンク系も少しは役立った様ですね。」


ガムはかつて下級魔道士の頃に、ミランダにリンク系上級魔術を学んだ。いわばガムにとってリンク系魔術の師匠という事になる。

他の魔術は、ガイラが教え育てて来た。


ガイラとミランダはその時知り合い、今に至っている。


 「ガムは全ての術式を理解して上級魔術を習得している。最上級に到達するまでには時間は掛からんだろう。」

「ガムは頼もしくなったのね。安心しましたわ。」

「確かに君の術式でリンク系魔術を操れる様だ。得意とする魔術にしているようだったよ。」

「教えた甲斐がありましたね、あなた。」

「あぁ。シュトランの街はガムが一手に妖魔退治をしている。他の魔道士の意識は感じなかった。……良い弟子に育って良かったじゃないかミランダ。」

「いいえ。それはあなたの教えが彼に伝わったんです。私はリンク系を伝えただけです。」

「謙遜だなミランダ。」



 過去の回想……。


「ミランダ様。もう限界です。パワーを乗せられません。」

「何を弱音を吐いてるのガム。感情をもっとたかぶらせて私にリンクをよこしなさい。それを身に付けなければブーストを複合出来ないのよ!。」


 ミランダは、リンク系上級魔術を伝授しようと、ガムに付きっきりで教えていた。

ガムもリンク系下級魔術では役に立たないからと、ミランダに伝授を願い出たのだった。


 ミランダのパワーブースト=リンクは、どの魔道士も一目置くほどの完成度。

どんな距離でも妖魔を誘い、その後の攻撃で消し去る事が出来た。


 「ガム。私を妖魔だと思って意識を掴みに来なさい。あなたは意識を掴んだ後が続かない。手順としては、まず意識を掴んだ時のパワーを持続する。その間に、掴んだ意識を取り巻く様に、自分自身の力をリンクに複合させる。ブーストで複合させた力を、パワー術式の強さと同じくする。」

「理解出来ます。やってみます。」


 ミランダは、ガムと少し距離を取った。

まもなくガムの意識が伝わり、ミランダの意識を掴もうとする。

 「ミランダ様の意識を掴んだ。……このパワー術式を継続させながらブーストを複合。……。」


 ミランダは掴まれた意識を振り払おうとしている。

「意識を掴んだままパワーを持続、離さないぞ。」

ガムは自身の力を複合させようと必死だ。

「今のパワーとブーストの力のバランスを合わせる。……ううっ、くくっ!」

「よろしい、ガム。もうやめて良いわ。今のがパワーブースト=リンク。精一杯でも出来たじゃない、その感覚よ。但し、妖魔によって力の大きさは様々。瞬時に掴んだ意識のパワーにブーストを複合させてバランスを取らないと意識が振り切られる。逃げられるか攻撃しに向かってくるでしょう。以後パワーブースト=リンクを使う時は注意しなさい。掴んだ意識を離されたら場所を移動する事。」



 当時を思い起こしていたミランダ。

ガイラは黙ってミランダにリンクしていた。


「今の娘達には習得出来んな。リンク系、パワー系、ブースト系が同じ強さにならねば上級魔術として成功しない。まだ遠い話だ。」

ガイラは言葉で語った。


 「分かりました、あなた。これからは私もリンクを使います。娘達の為にも。」

「継続して使わない、これだけは約束してくれ。グランダに掴まれたらここブレインラードの家が知られてしまうからな。」

「よく注意しますわ。」

「娘達には、3つの術式をそれぞれ同じ強さまで鍛練させてからパワーブースト=リンクを教えて欲しい、いいね?」

ガイラは少し険しい表情で話した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る