第10話 強襲されたガルディア(その2)
「待ってくれよ、おれたちゃ、ガルディアのギルドに認定された、冒険屋だよ!」
兵士たちに取り囲まれて、ロウは慌てて、釈明した。
「ちょっと、何があったんだか知らないけれども、いきなり大勢で囲むことはないでしょ!」
ディアナは堪りかねたように、抗議をした。
「彼らの身元は、我々が保証する。私は、王宮の飛行車を請け負う御者だ。」
ジョウンズも弁護したが、兵士たちは敵意を崩そうとしなかった。それどころか、ドワーフの戦士部隊や、ピクシーやブラウニーの弓兵士まで集まってきた。
すると、何者かが、「ちょっと通してくれ!」と言って、兵士たちの間をかいくぐろうとしていた。
屈強な肉体をした、若いドワーフの大戦士である。
「ダグか!」
ロウとディアナは、嬉しそうな声をあげた。
「みんな、こいつらの身元は、オレが保証する。だから、元の作業に戻ってくれ!」
ダグはそう叫ぶと、兵士たちは、元の持ち場に戻っていった。
「助かったぜ、ダグ。」
ロウは、ダグに礼を言った。彼も、クルセイダーズの一人として、ハドリアス帝国と戦った者である。
「お前らも災難だったが、あいつらを許してやってくれや、なにしろ事態が事態だからな。」
「ていうか、何があったわけ?めちゃくちゃ荒れ果てているみたいだけれども…」
ディアナが聞くと、ダグは顔をしかめた。
「説明したいところだが、俺はちょっと行かなきゃならないところがあるんだ。」
「だったら、歩きながらでもいいぜ。」
とロウは言った。
「じゃあ、我々は、一足先に王宮へ。」
とジョウンズが言うと、ダグは首を振った。
「すまないが、王宮も今、混乱していてな、しばらくは広場にいたほうがいいぞ。」
「ええ!」
ダグの言葉にルークは、目を丸くした。
結局。ルークとジョウンズは、しばらく停留所にいて、グリフォン達を休ませることにした。
ロウ達は、ダグに同行して、彼から事の顛末を聞いていた。
「昼前だったかな?まだ、正午にもならないのに、急に王都に鐘が鳴り響いたんだ。しばらくすると、それが危機を知らせる鐘だと気づいたんだ。」
◇
鐘が鳴り響くと、王宮からグリフォンにまたがった兵士たちが現れて、王都中に伝令が行きわたった。
郊外から、ケンタウロスの軍勢が現れて、王都を攻め入ってきたのだ。
市民は、王宮や寺院等、安全な場所に避難するようにと伝えられた。郊外では、ドワーフの重戦士、ヒューマノイドの兵士、ブラウニーやピクシーの弓兵士が応戦した。
しかし、上空からワイバーンの軍勢と、それを操る、魔導士やプリーストの軍勢が現れ、あっという間に突破されてしまった。
海上からは、スチームエンジンや火砲を搭載した軍船が現れ、船から、キャタピラー駆動の戦車やドワーフの戦士や弓兵士が降りてきた。
ガルディア王国軍は、市民を安全な場所に避難させるので精一杯であった。
そして、ケンタウロスの軍勢は、とうとう、王都まで攻め入ってきた。
武器を持った者は、手当たり次第、殺すように言われているのか、ケンタウロスの騎士達は、冒険屋ギルドのあるパブにまで入ってきた。
冒険屋ギルドに所属している者の中には、元兵士や魔物退治で腕を鳴らした者が多数いたが、それでもケンタウロスの騎士、それも訓練された者に立ち向かう者はいなかった。
ケンタウロスは、椅子や机を蹄のついた足で蹴散らすと、店内を値踏みした。
「狭い店だな、ここにいる者は、ガルディア王軍と関わり合いがあるのか?」
騎士はそう言うと、周囲を見回した。すると、キュノケファロス族の店主が意を決して、彼らの前に現れた。
「ここにいる者は、みな酒を飲みに来ているだけです、どうか、目こぼしを…」
店主の哀願に対して、騎士は兜の奥から、冷たい目で周囲を睨みつけた。
「駄目だな、それに、あの有名なクルセイダーズのマックスウェルは、元、冒険屋だったと聞いた。ここにいる者も殺してくれる!」
騎士はそう言って、ランスを振り回した。店主は怯えて、縮こまると、何者かが酒瓶を騎士に投げつけた。
「誰だ!」
騎士は、酒瓶を投げつけた者を睨みつけた。それは、斧を持ったドワーフの老人だった。
「じ、じいさん、やめるんだ!」
店主は、ドワーフの老人にそう言った。彼はいつも店で酔いつぶれている男であった。酒に酔って血迷ったのかと思い、店主は老人に声をかけた。
一方、店の外にいる騎士たちは、急に扉が破られたので、驚いた。その上、自分たちの仲間が何者かに切られて、倒れこんできたのだ。
「おい!どうした!!」
死んだ仲間に駆け寄ると、店から、手斧を持ったドワーフの老人がうっそりと現れた。手にした斧が血に染まっているのを見て、騎士たちはこのドワーフが何をしたのか悟った。
「このジジイ!よくも!」
騎士達が、ドワーフに襲い掛かると、ドワーフは、壁を蹴って、宙を舞い、ケンタウロスたちの背中を、瞬時に切り付けてしまう。
店の中にいた人々は、唖然とした。
「じいさん、あんた一体…」
店の中にいた客の一人が、そのドワーフに聞いた。
「ワシの名は、ゴルド!かつてマックスと共に戦った、クルセイダーズの一員だ!!」
その老人はそう言った。
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