第9話 強襲されたガルディア(その1)

異変は、ガルディアの王都郊外で起きた。


のどかな麦畑に、突如、ケンタウロスの騎士が現れたのだ。


仕事をしていた農夫たちは、一瞬、何がなんだか、わからなかったようだが、騎士たちは、次第に集まり出して、町を襲撃してきた。


女王であるアンナは、王宮の執務室で仕事をしていると、机で寝ていたカーバンクルのアレックスが、急に起き上がり、窓の方に向かっていった。


アンナは、自身の使い魔が、外に出たがっているのかと思い、窓を開けると、王都に、危険を知らせる鐘の音が、響き渡っていった。


すると、扉がノックされた。アンナは「入りなさい」と言うと、侍女のティオが、息を荒くして入ってきた。


「アンナ様!王都の郊外に、ケンタウロスの軍勢が、攻め入ってきました!もうすぐ、王都に向かってくるそうです!」


アンナは、眉をひそめると、心を落ち着けて、ティオに申し伝えた。


「ただちに、挙兵を!そして、王都の住民に避難を呼びかけるのです!」


   ◇


一方、ガルディア国内にある古代遺跡の調査をしていた、ロウ達は、自分たちに襲い掛かってきたケンタウロスの騎士を埋葬していた。


「変だな。」


先ほどから、魔法で、王宮と通信しようとしていたウォンが、首をひねっていた。


「どうしたの?」


ディアナが聞いてきた。


「王都の、魔導士と通信しようとしているんだけれども、ちっともつながらないんだよ。」


ウォンが言った。


「どういうこと?」


ディアナは、王宮に雇われている御者、ルークとジョウンズに顔を向けたが、2人とも首を横に振るばかりであった。


「もうじき、夕方になるぞ、一旦、王都に戻って、直接報告するしかない。」


ジュウベエは言った。


「しゃあねえな、戻るか。」


ロウはそう言った。一同は頷くと、荷物をまとめて、飛行車に積んだ。


「御者さん、グリフォン達は飛べるのか?」


パグが聞いてきた。


「傷は癒えているが、あんまり無理をさせたくないなあ。」


ジョウンズは言った。ローランドグリフォンは、強力な魔物であるが、先ほど戦った騎士は手練れであったために、グリフォン達も手傷を負ってしまったのだ。


「ロウ、念のため、転移魔法(リターン)で、戻った方がいいだろう。


とジュウベエが言った。


「わかったよ。」


ロウはそう言うと、飛行車とグリフォンの周囲に、全員を集めて、魔法陣を展開した。


魔法陣は、メビウスの輪のような形状になり、それが、立体的に広がって、一同を包み込むと、空間を飛び越えた。


やがて、一同は、王都にある飛行車の停留所に到着した…はずであった。


だが、全員の眼前に広がっていたのは、瓦礫の山となった町、そして、血と焼け焦げた匂いが漂っていた。


「どうなっているんだよ…一体。」


ウォンがつぶやくと、あたりから、大勢の兵隊が近付いてきて、ロウ達を取り囲んだ。


「お前たち!何者だ!」


兵士達の上官が、凄まじい形相で、ロウ達を睨みつけてきた。

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