第25話

私はほっと胸を撫で下ろしながらも、彼がいないところでラルフに話しかけた。「ねえ、ラルフ、アドニスが隣にいた時は本当に驚いたわ」

ラルフは、険しい表情を浮かべながら答えた。「レイラ..........アドニスには気をつけた方がいいな」彼は何か考え込んでいる様子だったが、それ以上は何も話してくれなかった。

舞踏会が終わった後のことだった。

私が部屋に戻るために廊下を歩いていると、突然後ろから声をかけられた。振り返ると、そこにはアドニスが立っていたのだ。彼は微笑みながら口を開いた。「レイラさん、今日はとても楽しかったですね!」私は戸惑いながらも答えた。「ええ、そうね.........アドニスも、楽しかったかしら?」

彼は、微笑みながら言った。「はい!とても楽しい時間を過ごすことができました」

私は彼の笑顔を見て少し安心したが、次の瞬間、アドニスは真剣な表情になって言った。

「レイラさん、あなたに聞きたいことがあります」私はドキリとしたがら平静を装いながら尋ねた。「何かしら?」するとら彼は真剣な眼差しで私を見つめながら口を開いた。

「何か、最近悩み事とかありませんか?」

私は一瞬戸惑ったが、正直に答えることにした。「実は最近、謎の手紙が届くようになっていて..........」

私がそう言うと、アドニスは驚いた表情を浮かべた後言った。「それは.........、本当ですか?差出人とかは分かりますか?」私は、首を横に振った。「分からないの..........」私が答えると、彼は考え込んでしまったが、やがて口を開いた。「レイラさん、もし何かあったらすぐに言ってくださいね」

私は、戸惑いながらも答えた。「ありがとう」その後、アドニスは私に別れを告げると、その場を立ち去ったのであった。


舞踏会から、数日後のことだった。

私が一人で部屋にいると、再び手紙が届いたのだ。恐る恐る開けてみると、そこには信じられないことが書かれていた。

『ルシアン殿下はこのことを、ご存知なのでしょうかね?』

なぜルシアンが、ここで出てくるの?

最近、ルシアンは特に忙しそうで、あまり彼に心配事を増やしたくない私は、彼に相談できなかった。

その後も、私のもとには差出人不明の手紙が届き続けた。そしてその度に、私の不安感は増していった。


そんなある日、庭のお花に水やりをしていると突然声をかけられた。「レイラ.........元気がないようですが、何かありましたか?」声の主は、リリアナさんだった。私は驚いた表情を浮かべながら彼を見た。「リリアナさん、どうしてここに?」

すると、彼女は微笑みながら答えた。「レイラの姿が見えたので、声をかけようと思いまして。なんだか悲しそうだったので。」

彼女の笑顔を見て、私は少し安心したのだった。

その後、私たちはベンチに座って話をした。彼女と話をしているうちに、私の心は落ち着きを取り戻していった。

「それにしても、差出人不明の手紙が届くなんて怖いですね..........早く捕まえて意図を聞きたいですね」

リリアナさんは、深刻そうな表情でそう言った。「ええ、本当にそう思います..........」私が答えると、彼女は微笑みながら言った。「レイラ、何かあったらすぐに相談してくださいね」私は感謝の気持ちを込めてお礼を述べた後、その場を去ったのだった。


私は突然、ある男性に声をかけられた。「レイラ様!張り切っておられますね」

それは、王宮の執事長であるマルコさんだった。「マルコさん.........ええ、少しでも王宮のお役に立ちたくて」私が答えると、彼は笑顔を浮かべながら言った。

「それは素晴らしい!レイラ様のような方が王宮にいるだけで、皆の士気も上がりますな」彼はそう言うと、お辞儀をして去っていったのだった。


その日の夜のことだった。私は部屋でゆっくり休んでいると、突然ドアをノックする音が聞こえた。ドアを開けるとそこにはルシアンの姿があった。彼は、心配そうな表情を浮かべていた。「レイラ.........最近何かあったのか?マルコが、レイラが少し憂いを帯びていたとか言っていたのだが.........」

私は、マルコさんの洞察力に少し驚いたが、すぐに首を横に振った。「いえ、特に何もありませんよ」私が答えると、ルシアンは安堵の表情を浮かべた後言った。「そうか..........それならよかったよ」

そして彼は、私の頭を優しく撫でてくれた。その優しい手つきに、私は心が落ち着いていくのを感じたのだった。


次の日のこと、私は久しぶりにルシアンと一緒に外出していた。ルシアンは終始どこか浮かない様子だったが、どうしたのだろうと思っていると突然彼が口を開いた。

「レイラ、本当に最近何か変わったことはない?」私は少し考えた後、答えた。「いいえ、特にありませんけど..........」すると、彼は何かを考え込んだ後、私に告げた。「そうか、何もないならそれでいいんだ」そう言ってルシアンは微笑んでくれたのだが、何か知っているのだろうか?


それから数日後のことだった。

いつものように部屋で休んでいると、また一通の手紙が届いたのだ。私は恐る恐る中を開いてみた。『レイラさん、あなたはラルフ殿下とは仲がよろしいようですね?でも気をつけてくださいね?』その言葉を読んだ瞬間、私は凍りついた。

そしてある人のことが思い浮かんだのだった..........

私は、意を決してルシアンの部屋を訪れた。ドアをノックすると、中から声が聞こえた。ドアを開けるとルシアンは驚いた表情を浮かべていた。「レイラ、どうしたんだ?」彼が尋ねるので、私は正直に話そうと思い口を開いた。「実は.........最近、嫌がらせのような手紙が届き続けているの.........差出人は、書いていなくて」私がそう言うと、彼は目を見開いた後、心配そうに言った。「そうだったのか..........レイラ、もし何かあったらすぐに言ってくれよ?」

私は、コクリとうなずいた。「ありがとう」その夜は、ルシアンの部屋で夜を明かしたのだった。


翌日のことだった。

私は、廊下である人物に呼び止められたのだ。その人物とは、アドニスだった。彼は、微笑みながら言った。「レイラさん!こんにちは。ラルフ団長がお呼びでしたよ!」

私は彼の言葉を聞いて驚いたが、とりあえず行ってみることにした。彼の後をついていくと、ラルフの部屋に着いた。

「レイラ、よく来たな」私は戸惑いながらも、部屋に入った。すると、ラルフは険しい表情を浮かべながら口を開いた。

「レイラ、最近手紙が届いていると言っていただろう。それも差出人がわからないと。」私は驚いて目を見開いた。

しかし、すぐに平静を取り戻して答えた。「ええ.........何かわかったの?」私が言うと彼は考え込んだ後、口を開いた。「ああ、少し心当たりがある人物がいるんだ。」

私は彼の言葉を聞いて胸をなでおろした。「良かった、誰なのかわかるのね?」私が尋ねると、ラルフは険しい表情のまま答えた。「ああ、だが今は言えないんだ。もう少し、証拠が必要だからな」彼は私の顔を見つめながら言った。


あれから数日後のこと、ルシアンの部屋で過ごしていると、一通の手紙が届いたのだ。私は恐る恐る開封すると、そこには信じられない内容が書かれていた。『レイラさん、あなたの秘密を知ってしまったのです。このことは誰にも言ってはいけませんよ?』私が手紙を読んだ瞬間、全身に冷や汗が流れた。

私は手紙を丸めるとゴミ箱に投げ捨てた後、ベッドに潜り込んだ。恐怖心で押し潰されそうになりながらも、必死で眠りにつこうとした..........。

翌日のことだった。私はルシアンの部屋で過ごしていると一通の手紙が届いた。差出人の名前を見るとそこには「アドニス」と書かれていたのだ!私は心臓が止まるかと思うほどの、衝撃を受けた。

中を開けてみると、そこには衝撃的な内容が書かれていた。

『レイラさん、おはようございます。 ラルフ団長が犯人を捕まえたようなので、至急騎士団訓練所に来てください』手紙を読み終えた瞬間、私は心の底からほっとした。

やっと、犯人が捕まったんだ。

そして、私はラルフの元に向かおうとした。しかし、私が部屋を出て行こうとするとルシアンが話しかけてきた。「レイラ..........どこに行くんだ?」私は不安を抱きながらも答えた。「騎士団の訓練所です。

犯人が捕まったから、会いに行くんです」そう答えるとルシアンは厳しい表情で言った。「俺も、一緒に行ってもいいかい?」私は驚きながらも頷いたのだった。

その後、私とルシアンは騎士団訓練所に向かった。中に入るとアドニスが出迎えてくれた。彼は、微笑んで言った。「レイラさんと..........ルシアン王太子殿下?お待ちしておりました!」

そして私を奥の部屋へと案内してくれた。そこは普段は使われていない空き部屋だった。中に入るとそこには一人の男性が佇んでいた.........。彼は、私たちを見ると口を開いた。「..........レイラさん、お久しぶりですね」その声はら紛れもなくマルコさんのものだった!私は、驚きのあまり声が出なかった。

しかし、ルシアンは拳を握りしめて何かを考えているような表情だった。

するとアドニスが口を開いた。「レイラさん、俺は疑われていましたが、決して手紙の差出人ではありません。犯人はこの男性です」

マルコさんは驚いたように目を見開いていたが、すぐに冷静な表情に戻った。「そうですか.........。でもどうして分かったのですか?」ルシアンは歯ぎしりをしながら問いかけた。。「私が直接調べたんですよ」アドニスはそう言うとマルコさんに鋭い視線を向けた。マルコさんは、観念したようにうなだれていた...........。

そして彼は自白を始めた。「私は、レイラさんの秘密を知って誰かに話したくて、仕方がなかったんです!でも、ラルフ団長は私のことを信用しなかった!」アドニスが頷くと、マルコさんは続けた。「そこで、ルドルフさんとレイラさんの弱みを探っていたのです..........」その後、マルコさんは語り始めた。

実は、彼こそが騎士団の裏切り者だったのです。彼は、ずっと前からスパイとしてルシアンの弱点を探るために動いていました。ルシアンからの信頼を得ることができたため、彼の監視を任命されました。

しかし、ルシアンは何も弱みを見せないため、近い存在である私を狙ったようです。

彼は全てを話し終えると涙を流しました。

ルシアンはマルコさんをじっと見つめていたが、やがて口を開いた。「レイラ、巻き込んでしまってすまない」私は驚いて目を見開いたがすぐに首を横に振った。「いいえ..........でも、どうして分かったの?」私が尋ねると、アドニスさんが真剣な表情で言った。「実は手紙が届いた後、俺はすぐにメイドや執事など側近を探出して、マルコさんの監視を始めたんだ」そして彼は話を続けた。

私はその内容に衝撃を受けた。まさか、私守るために動いてくれていたなんて..........ルシアンはマルコさんに歩み寄りながら言った。

「マルコ、レイラの弱みを探るなんて最低だぞ。レイラに何かあったら、どうするつもりだったんだ?」マルコさんは、静かに首を振った。「私は、ただ秘密を誰かに話したかっただけなんです。でも、まさかこんなことになるとは..........」私は彼の言葉に共感する部分があった。

私も自分と同じように苦しんでいる人がいるかもしれないと思うだけで、心が楽になるからだ。私が頷いていると、ルシアンが口を開いた。「マルコのことは俺がなんとかしておくから、心配しないで」ルシアンはそう言って微笑むと、マルコさんを連れて部屋から出て行ったのだった。

それから数日後、マルコさんは無事に執事長を解雇された。しかし、マルコさんの表情は晴れやかだった。彼は私に向かって「ありがとうございました、そして申し訳ございませんでした」と言うと、どこか吹っ切れた表情をしていたのだった........。

翌日のことだった。私が部屋で仕事をしていると、また一通の手紙が届いたのだ。差出人の名前は書かれていなかったが、私はゆっくりと中を開けてみた。そこには、驚きの内容が書かれていたのだ!『レイラさん、こんにちは』その手紙にはこう書かれていたのである。『実は、あなたに伝えたいことがあるのです』

そして、手紙には続きが書かれていた。『ルシアン殿下は、あなたの秘密を知りたがっていました。 距離感にはお気をつけて。』私は思わず息を呑んだ.......きっと、マルコさんだろう。

私はベッドに潜り込んだ。「もう何も起きないよね.........」不安を抱きながらも目を閉じると、いつのまにか眠りについていたのだった。

翌日のことだった。

あんなことが起きたが、いつも通りの日常が戻ってきたのだった。

そして、私は今日も部屋で休んでいる。すると突然ドアがノックされた。返事をすると入ってきたのはルシアンだった。「レイラ、少し話があるんだがいいかな?」彼はそう言うと部屋に入って来た。私は戸惑いながらも答えた。「はい、なんでしょうか..........?」私が尋ねるとルシアンは真剣な表情で話し始めたのだ。

彼が口にした言葉は驚くべきものだった。

「マルコが言っていた秘密ってなんだかわかるかい?」

私は驚きながらも、必死に考えた。「分かりません.........何か心当たりがありますか?」私が尋ねると彼は口を開いた。「いや、何もないんだ.........」ルシアンは、考え込むように黙り込んでしまった。

しばらくして、彼は再び口を開いた。「もし良ければ、教えて欲しいんだけれど」私は迷った末に、答えを口にした。

「憶測ですが.........私の秘密は、騎士団員のルドルフに関することです」ルシアンの真剣な眼差しに、圧倒されながら答えた。すると、ルシアンは目を見開いて驚いた表情を浮かべていたのだった。

数分後のことだった。私とルシアンは向かい合って座っていたのだ。彼から発せられた言葉に対して、私は息を呑んだ。

「レイラ、教えて欲しいんだ。最近確かにラルフから、レイラとルドルフ君が仲がいいと聞いていたのだが、彼とはなんにも無いんだね?」

私は、即座に頷いた。

「ええ、何もありませんよ!彼とは友達ですし」

私がそう答えると、彼はホッとした表情を浮かべて言った。「そうか.........良かった」ルシアンはそう言うと安堵のため息をついていた。「心配してくれていたんですね、ありがとうございます」私はお礼を言うと、ルシアンは微笑んで口を開いた。「いや、当然のことさ。君は、大切な存在だから」その言葉を聞いた瞬間、私の胸は高鳴ったのだ。ルシアンの真剣な表情に思わず、顔が赤くなるのを感じた。その後私たちは、しばらくの間談笑を楽しんだのだった。


「ギルバードさん、最近お屋敷の様子はいかがですか?」

久しぶりに、リリアナさんとギルバードさんと社交界で出会ったので、思わず私は質問をしてしまった。

ギルバードさんは、優しく微笑んだ。「そうだね..........最近は落ち着いているよ」

「それは良かったです」私は、ほっと胸をなで下ろした。

その後、世間話などをしているうちに時間は過ぎていった。そろそろ帰る時間になったのでお開きとなった。

「リリアナさん、またお会いしましょうね」私は別れ際に声をかけるが、彼女は悲しそうな顔で首を振ったのだった..........。

どうしたんだろう?と不思議に思いながらも、帰る支度をしていた時だった。

「レイラ、少し話せるか?」

ギルバードさんが、突然話しかけてきたのだ。私は、驚きながらも頷いた。

「ええ、良いですよ」

ギルバードさんと一緒にバルコニーに出ると、涼しい風が頰を撫でていくのを、感じた。心地よい風を感じながら、話を始めた。「最近、変わったことでもありました?」私が尋ねると、彼は考え込んだ後口を開いた。

「実はね.........最近、あの場所では屋敷は落ち着いていると言ったが、まだ不可思議なことが起きているんだ。」

彼はそう言いながらため息をついた。私は心配になりつつも彼に声をかけた。「どんなことが起きているのですか?」

「実はね、夜に屋敷に戻ってくると、玄関の鍵が開いているんだ.........何度確認しても、鍵は閉まっているのに。不思議に思って、メイドたちに聞いてみても、心当たりはないらしい」

私は彼の言葉を聞き、背筋が凍るような感覚を覚えた。

まさか次は、本当に不思議な現象が起きているの?でも、どうして?時計の件は解決したはずなのに。考えても分からず、ただ不安だけが募っていった..........。

そして後日、再びギルバードさんと再会することになった。私は、彼と会食をしながら会話をしていた。すると、ギルバードさんが口を開いたのだ。「最近、夜になると鍵に加えて、屋敷が騒がしいんだ。メイド以外、誰も居ないはずなのに」

そんなことが果たして本当に起きているのか.........少し気になり、思わず考え込んでいるとギルバードさんが心配そうに声をかけてきたのだ。「レイラ?」私はハッと我に返ると、慌てて返事をした。

その後、私たちは他愛もない会話を続けた後、別れを告げて、帰路についたのだった。

しかし帰り道でも私の頭の中は例のギルバードさんの話でいっぱいだった。

また何か怪異が起きてるかもしれない……そう思った私はすぐに騎士団の建物へと向かった。すると、そこにはラルフの姿が見えた。私は挨拶を済ませると早速尋ねた。「ギルバードさんからお聞きしたのですが、夜になるとお屋敷が騒がしいと.........」

すると、ラルフは難しげな表情で口を開いた。

「そうなのか?またあの時のような事件が起きているのか........?」

私は、その言葉に頷きながらも考え込んでいた。「でも.......、一体どうして?」私が呟くようにそう言うと、ラルフは真剣な表情を浮かべて答えた。「とりあえず、調査する必要があるな」そして、私たちは騎士団の訓練所に向かったのだった。訓練所の扉を開けると、中には何人かの騎士たちがいたが、彼らは私たちの姿を見ると驚いた表情を浮かべた。そして、特にアドニスが駆け寄ってきたのだ。

「ラルフ団長、レイラさん!どうされましたか?」

アドニスは、心配そうな表情で話しかけてきたが、ラルフは落ち着いた様子で答えた。「実は最近、クレイヴン公爵の屋敷で、不可解な出来事が起きているらしいんだ」するとアドニスは、驚いた表情を浮かべると同時に、顔を曇らせた。

「それは.......一体どういうことでしょうか?」

私は、彼らにも話をすることになった。そして、私とラルフとアドニス、それに事情を聞きつけたリリアナさんを加えた四人で、調査を行うことになったのだった。


ギルバードさんの屋敷に向かうと、彼は最初は驚いていたが、とても嬉しそうにお礼を述べてくれた。

調査の結果、屋敷の中を確認して回ったが特に変わった様子は、なかった。私たちは話し合った末、別の日に改めて調査を行うことに決め、解散したのであった。その後私は、屋敷に戻ったのだがやはり何も起こらなかった.........一体どうしてだろう。

ギルバードさんだけに怪異が起こっているのだろうか?疑問が残る中、私は眠りについたのだった。


次の日のこと、私はリリアナさんとギルバードさんの三人でらお茶会を開いていた。話題はやっぱり、お屋敷のことだった。

「昨日、ラルフさんたちが調査に来てくれたんです」とギルバードさんが言うと、リリアナさんは興味津々といった様子で、彼に尋ねていた。「それで、何か分かりましたの?」

すると、彼は首を横に振った。「どうやら、特に変わったことはなかったようだ.........確かにこの耳で聞いたのにな」それを聞いたリリアナさんは、残念そうにしていたが、私はギルバードさんが無事だとわかりホッと胸をなで下ろした。

しかし、その時だった..........突然、背後から声をかけられたのだ。振り返ると、そこにはラルフが立っていた!私たちは驚きながらも挨拶をしたのだが、彼は険しい表情を浮かべていたのだった。

一体どうしたんだろう?

「皆ここにいたのか、........実は、折り入って話があるんだ」と、ラルフは深刻そうな表情で切り出したので、私たちも思わず真剣な顔になってしまった。

一体何が起きたというのだろう?不安に駆られながら、私は話を聞いたのだった。

「最近騎士たちに調査を頼んでいるのだが、やはり何も無いと言っている。」ラルフ団長の言葉に私たちは驚きを隠せなかった。リリアナさんが戸惑いながら口を開く。「でも..........一体どうして、ギルバードさんだけに怪異が?」

すると、ラルフは少し考え込んだ後答えた。「それがわからないんだ、何か心当たりはないか?」私は少し考えた後、口を開いた。「.........もしかしたら」私は、一つの可能性に気がついたのだ。私が説明すると、3人は納得したような表情を浮かべていた。

そして私たちは、再びクレイヴン家のお屋敷を訪れることにしたのだった。


この日、私たちはギルバードさんが用事で街に出ている時に、お屋敷の前に立っていた。

前回来た時は開かれていた扉は、固く閉ざされている。「鍵はかかっていないはずなのに........」私は不思議に思いながらも、スペアの鍵を使って、屋敷の中に入ったのだった。

中に入ると、そこには誰もいなかった。しんとした静寂だけが漂っている..........私たちは、手分けして家中を探索することにしたのだが、特に変わったことは見つからなかった。

すると、ラルフが声を上げた。「おい!これを見てみろ」彼が指差したのは、床に置いてある花瓶だった。なんとそこには、紫色の液体が入っていたのだ........それはまるで毒のようだった。

最初は無かったのに、なぜ?

それを見た私たちは、顔を青ざめさせたのだった。

「これは一体.........?」リリアナさんが声を上げた時、ラルフの顔色が変わったように見えた。彼は、慌てて花瓶を持ち上げると、近くにあった床に投げつけたのだ!パリーンッという音と共に粉々に砕け散る花瓶の破片を見つめながら、私たちは言葉を失ってしまった。

呆然と立ち尽くしていると、ラルフは口を開いた。

「きっとこの前のような怪異が、起きたに違いない.........」そう呟きながら、私たちを別室に案内してくれたのだった。そこには前回の時計事件の時のメイドがいた。

彼女は、私たちの顔を見ると驚きながらも、状況を理解したようだった。「ラルフさん、リリアナさん、それにレイラさんまで.........一体どうしたんですか?」彼女の問いかけに、ラルフは真剣な表情を浮かべながら口を開いた。「実は、この前のような怪異が再び起きていると、クレイヴン公爵から聞いたか?」その言葉を聞き、メイドは驚いた表情を浮かべたが、すぐに落ち着きを取り戻したようだった。「ええ、確かにそういったお話は聞きましたが.........」彼女は信じられないといった様子で、呟いた後考え込んでしまった。

私は彼女に視線を向けたのだが、何も言葉をかけずに黙って見ていただけだった。

すると、突然ドアが開いたのだ!

そこには、慌てて帰ってきたギルバードさんが立っていた。

「皆、無事か!?」

ギルバードさんは、私たちの顔を見るなりホッとした表情を浮かべていた。「良かった..........何もなかったんだね?」彼が尋ねると、ラルフは真剣な表情で頷いた。「ああ、大丈夫だ」彼はそう言うとリリアナさんが口を開いた。「ギルバードさん、実は先ほど大変なことが起きていましたの..........」リリアナさんは、彼に毒と思われる花瓶のことを説明した。それを聞いたギルバードさんの表情は、みるみるうちに険しいものになっていった。

そして私たちは、応接室へと向かうことにしたのだった。

応接室に入ると、それぞれ椅子に腰掛けたのだが、誰も言葉を発そうとしなかった.........。

重たい空気の中、一番最初に口を開いたのはギルバードさんだった。「申し訳ないが、皆に聞きたいことがある」彼はそう言うと、一枚の紙切れを差し出した。

そこには『見ているよ』と書かれていたのだった。

驚きながらも、その紙切れを受け取っていると、ラルフが見た瞬間口を開いた。「なんだそれは........」彼は険しい表情で、その紙切れを見つめていた。

「わからないが、玄関のドアノブに挟まれていたんだ。もちろん、誰のものかもわからないし、見たことの無い筆跡だ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る