第13話

そして、メインディッシュはステーキである。

(こんな贅沢なお料理、久しぶりだわ............)

感動しながら食べていると、隣からリリアナさんが声をかけてきた。

「レイラ、このお料理とても美味しいですね!さすが公爵家のお屋敷のお食事です!パンもさくさくふわふわで作り方を教えてもらいたいくらいだわ!」

私も、微笑みながら強く頷いた。

(本当に美味しい............!)

その後、デザートまでしっかりと堪能し終える頃には、すっかり辺りは暗くなっていた。

時計を見ると、時刻は19時になっており、私は改めて覚悟を決めたのだった。

それから皆は、順に入浴を済ませたその時だった。

急に屋敷内の全ての明かりが消え、辺りは暗闇に包まれてしまったのだ。

そして突然扉が開き、そこからメイドが現れた。「レイラ様、お急ぎください!もう時間が迫っています!」

私とリリアナさんが急いで廊下に出ると、そこにはギルバードさんとルシアンとラルフが、私たちを待っていたかのように立っていたのである。

私が急いで駆け寄り「皆大丈夫!?」と聞くと、3人は微笑んで頷いてくれたのだ。それから私たちはメイドの後に続き長い廊下を歩いて行ったのだが、不思議と誰ともすれ違うことは無かったのである。

(このお屋敷、本当に2人以外誰もいないのね...........。)

そう考えているうちに、私たちは時計がかけられている扉の前までやってきた。

(この扉の先に呪いの根源が...........)

ごくりと唾を飲む私の横で、メイドが言った。

「皆様……どうかお気をつけてください!」

そう言って頭を下げるメイドに、私たちは頷くと、その扉を押し開けたのである……! 中に入るとそこは真っ暗であった。私は持っていた明かりを掲げながらゆっくりと部屋の中を探索し始めたのだ……。

すると突然目の前から何かが飛んできた……! 思わず避けた私の横を、リリアナさんが華麗に回し蹴りで撃退する!

(凄いわ............!)

と私が感心していると、「レイラ、ここは私たちに任せろ」と言ってラルフとルシアンが部屋の中へ入って行った。

そして2人の後を追いつつ部屋を探索していくと突然上から何か砂のようなものが降ってきたのだ……。その砂を被ったリリアナさんは「きゃああああっ!」という叫び声と共にその場に倒れ込んでしまったのである……。

(どうしよう!リリアナさんが……!!)

するとルシアンが冷静に呟いた。「なるほど、これが呪いか……レイラ嬢、害はないが強い魔力を持たない人間にとっては命の危険があるようだ。」と冷静に分析する彼の横で私は必死に考え込んでいた。

(一体どうすれば助けられるの……?リリアナさんを危険な目に遭わせるわけにはいかないわ!)

するとギルバードさんが私の肩に手を置きながら口を開いたのである……。

「レイラ、君は彼女を助けられる方法を1つだけ知っている。」

それを聞いた私は驚いて振り返った。しかし彼は真剣な表情で見つめ返すのみで、それ以上のことは教えてくれなかった……。

(私が助けられる方法を知っているの?)

そう考えたところで私はハッとなったのである……!

(もしかしたら、そういうことなのかもしれないわ……)

私は意を決するとリリアナさんの元に駆け寄り彼女に抱きつきながら「リリアナさん!大丈夫!?」と叫んだのだ……。

するとリリアナさんは少し間を空けてからこう答えたのだった……!

「あ、はい!レイラ!私は平気です!」と元気に答える彼女を見て、私は思わずほっと胸を撫で下ろしたのだった。

リリアナさんが元気になったのを確認した私達はすぐにルシアン達の後を追った。そしてそこにはラルフが立っており、上を見上げていた……。

私も彼と同じように上を見上げてみると、天井には何か小さな穴が空いているのが見えたのだ……。

(もしかしてあそこから砂が落ちてきたということ?)

そう考えた私がラルフに声をかけると、彼は頷いてくれたのだ……!

(それならあの穴に魔力を通せば……!)

私は「ラルフ!その穴の上に立っていてくれる?」と頼んだ。するとラルフは不思議そうにしながらも、言われるままに動いてくれた。

そして私が魔力を込めると、天井の小さな穴から砂が一気に流れ出したのである……。

(やったわ!)と思いながらも急いでルシアンの元へ向かうと、彼は部屋の奥にあるものを眺めていたのであった……。

(一体何があるのかしら……?)と思って見てみるとそこには古びて今にも崩れそうな時計がかけられていたのだ……!

リリアナさんが「なんて素敵な時計なの……!」と目を輝かせながら呟いた。

私も同じように見惚れていると、ギルバードさんがこう言ったのだった……。

「この時計は先代の公爵夫人が大切にされていたものなんだそうだ。」

私は驚きつつこう尋ねた。「そうだったんですね……!でもどうしてこんな場所に……?」

私がそう聞くと、ギルバードさんが言ったのである……。

「実は数日前から突然砂が流れ落ちるようになったそうなんだ。それでメイドたちが気味悪がっててね……でもレイラ、君が来てから君が来てから時計の針が少しずつ動いていたんだよ。」

そう言って微笑むギルバードさんを見て、私はとても嬉しい気持ちになったのだ……!

(きっとこれはこの時計とリリアナさんが私に力を貸してくれたんだわ……!)

そう思いながら上を見上げると、なんと天井の穴は綺麗に塞がれていたのである。「レイラ!ありがとうございます!!」と言いながら嬉しそうに抱きついてくるリリアナさんに微笑み返しつつ、私は彼女の手をそっと握りながらこう言った……。

「私こそありがとう、先に進みましょう」

すると彼女は満面の笑みで頷いてくれたのである……。

こうして私たちはさらに屋敷の奥に進んでいくと、そこには大きな扉が現れたのだ!

(この先にきっとあるはずね……)

私はそう確信しながらも皆の顔を見ると、全員が同じ気持ちでいるのか真剣な表情で頷いた。そしてラルフがゆっくりと扉を押し開ける……。するとその中には何やら祭壇のようなものがあり、その中心には呪いの元凶と思われるものが置かれていたのである……! それは古びた時計であり、中からは黒い煙がもくもくと溢れ出していたのだった……!

「レイラ!この時計の針をゆっくり、そして優しく回してください……!」

ルシアンがそう言ったので私は時計の針をそっと回し始めてみた。すると突然黒い煙が渦巻きだし、中から不気味な声が聞こえてきたのだ……。

「嗚呼……またダメだったのか……」と呟いた後、その声はこう続けたのである。

「もし貴様が呪いを解きたければこの屋敷にいる人間全員分の魂を捧げるのだ!!さもなくば私の怒りは収まらぬぞ!」と叫んだのだ……!

(まさか、私が屋敷に入ったからこんなことになってしまったの……?)と私が思っていると、ギルバードさんがこう囁いた……。

「レイラ、君のせいではない。だから自分を責める必要はないんだ。」

そう言って優しく笑いかけてくれた彼に私は胸がいっぱいになったのである……。

(そうだわ!私は今まで諦めずにやってきたんだもの……!だからきっと大丈夫なはずよ……!!)

そう決意した私がリリアナさんの方を振り向くと、彼女は「大丈夫です!きっとレイラならなんとか出来ます!!」と言ってファイト!と勇気づけてくれた。

その暖かい温もりを感じながら、私は力強く頷いたのである……。そして私はギルバードさんに向かって言ったのだ。

「ギルバードさん、一緒にこの時計を回すのを手伝ってくれるかしら?」と……

すると彼は微笑みながら頷いてくれたので、私たちは2人で時計の針を回し始めたのである……!! すると「ありがとう」という声が響き渡り、部屋中が明るくなるとそこには美しい女性が現れたのである……!

(この方が先代公爵夫人なのね……!今見ているのは、幻なのかしら?)と私が思っていると、女性は微笑みながら言った…

「貴方が私を助けてくれるのね……?ありがとう、感謝しているわ……」

すると突然時計の中から黒い煙が溢れ出し始め、その中から魔物が姿を現したのだ……。

(これが呪いの正体なのね……!!)と思い私は短剣を取り出したのである……!

(絶対に倒すんだから!!)そう意気込みつつ短剣を振るうと、魔物は私の方に向かってきた!しかしそれをルシアンが庇って代わりに攻撃を受けてしまったのだ……!

「ルシアン!」と言って駆け寄る私に、彼は「大丈夫だ」と言って微笑んでくれた。そんな彼を見て私は涙が溢れそうになるのを必死に堪えながら彼の前で短剣を構えたのだ……。

すると背後からリリアナさんの声が聞こえてきたのである……「レイラ、殿下のことは私たちに任せてください!貴方は貴方のやるべきことをしてください!!」と……!

(そうよ……!私がしっかりしないと……!!)

そう思うと不思議と力が湧いてきた私は魔物に向かって行ったのである……!!

(絶対に負けないんだから!!)

そう思った瞬間、私は不思議な力に包まれ始めたのだ……。それはまるで私の中にある魔力が一気に増幅されたような感覚で、今までの何倍もの力を発揮出来るようになっていたのである……!

(これなら勝てるかもしれない……!!)と自信を持った私は勢いのまま魔物に短剣を振り下ろした。

すると見事に命中したその一撃で魔物は消滅してしまったのだ……。

「やったわ!倒したわ!!」と喜ぶ私の元へ2人が駆け寄ってきてくれたのだが、次の瞬間背後に気配を感じたのである……。驚いて振り返ると、そこには先程よりも禍々しい姿になった魔物がいたのだ……!!

「嘘でしょ……?まだ生きていたの……?」と恐怖に震える私に彼は優しく微笑みかけてくれた。そして私の手をそっと握りながら、ギルバードさんが言ったのだ……。「レイラ、大丈夫だ。私たちが一緒に戦おう!」と……

彼の言葉に勇気づけられた私は力強く頷き返すと、皆で魔物に立ち向かうことになったのである……!! すると突然魔物が口から黒い煙を吐き出してきたのだ!それはまるで毒ガスのようなもので、吸い込むと体力を徐々に奪って行く効果があったのである……!

(このままではまずいわね……)と私が焦っていると、ルシアンが苦しそうにしながらも「レイラ!これを!!」と言って何かを投げ渡してくれた。

それは不思議な輝きを放つ宝石であり、私は急いでそれを握りしめたのだ……! するとたちまち体の中の魔力が増幅されていき、先程の状態よりもさらに力を発揮出来るようになったのである!

(凄いわ……これが魔力の増幅の効果なのね……!!)と思いながらも私は短剣を構えると魔物に向かって行った!

「これで終わらせてあげるわ!!」と言って魔物を切りつけたのだが、まるで手応えがなかったのである……。

(どういうことかしら……?)と思いながらも私は何度も何度も斬りつけていった。すると突然魔物は呻き声をあげ始めたのだ……!

(ちゃんと効いているのね……!)と思った私がさらに攻撃しようとすると、ラルフが私の手を握って止めさせたのである……!

「レイラ、もう十分だ。あとは任せろ!」

そう言って彼が前に出ると魔物に向かって何かを唱え始めたのだ……。すると魔物の体から黒い靄のようなものが出てきて、やがて消えていったのである……。

「これで全て終わりだ」と言って微笑むルシアンに私は抱きついたのだ……。すると皆までやってきて一緒に抱き締めてくれたので、私は安心して涙を流したのだった……。

こうして全ての元凶であった魔物を倒した私たちはしばらくその場で休憩していたのだが、次第に疲れが出てきたのかウトウトし始めたのである……!そんな私をギルバードさんが抱きかかえてベッドまで運んでくれたので、そのまま眠りにつくことにしたのである……。


(ここはどこだろう……?)

真っ白な空間の中で目を覚ました私はキョロキョロと辺りを見回したのだ。すると突然目の前に眩い光が差し込んだのである……。

その光は徐々に形を変えていき、美しい女性の姿になったのだ。「レイラさん、本当にありがとう……!」と言いながら彼女が微笑むと、急に視界が真っ白になったのである……!

(先代公爵夫人の想いだったのかしら……?)と思いながらも辺りを見回すと、そこは見覚えのある部屋であった。そして私はベッドの上に横になっていたのだ……!

「夢だったのね……」と思いながら起き上がり窓の外を見るとまだ明るいので夜ではないことがわかる。

私が慌てて着替えると、ちょうどノックの音が聞こえてきたので返事をするとギルバードさんとラルフとリリアナさんが入ってきたのだった……!

(3人とも来てくれたのね……)と言いながら駆け寄ると、ギルバードさんは優しく頭を撫でてくれたのだ。そして「よく頑張った、ありがとうレイラ嬢!」と言って微笑んでくれたのである……!

「こちらこそありがとうございます!」と言って微笑む私に彼らは少し驚いた様子を見せた後で微笑んでくれたのだ。

その後3人で食堂に向かうことになったのだが、私はどうしてもルシアンの顔が見たくて仕方がなかったので彼の部屋に行ったのである……。


(ルシアン、もう起きてるかしら……?)と思いながらも控えめにドアをノックすると、中から彼が出てきたのだ……!

「レイラ!?どうしたんだ?」と驚いている彼に私は抱きついた。そしてそのまま彼の胸に顔を埋めていると、優しく頭を撫でられたのである……。

(ああ……幸せだなぁ……)と思いつつも顔を上げると彼は少し心配そうな顔をしていたのだ。その理由はすぐに分かったのである……!

「ルシアン、お怪我はございませんか……?」と聞くと彼は慌てて首を振ると「私は大丈夫だ。クレイヴン公爵の手当てが早かったから、傷が広がる前になんとかなったよ。」と言ってくれたので私はホッと胸を撫で下ろした。そしてそのまま彼に抱きついたまましばらく彼を感じていたのだが、突然彼の手が私の頬に触れたのである……!

(何かしら……?)と思い顔を上げると、彼は真剣な顔をしていた……。「レイラ……」と言って私を見つめる瞳には熱が籠っているように感じられ、私は胸が高鳴るのを感じたのだ……。

「レイラ!」と言って彼は私を強く抱き締めたのである……!

「ルシアン、本当にご無事でよかった…」

いつの間にか安心して、私の頬に涙がこぼれ落ちていた。

「心配かけてすまなかった……。でももう大丈夫だからな……」

そう言って彼は私の頭を何度も撫でてくれたのである……。その優しさに私はつい甘えてしまい、しばらくの間彼の胸の中で泣き続けたのだった……。

(ああ、ダメだわ……!こんな顔を見られたくない!)と私は涙を拭うと彼から離れて言ったのだ……!

「ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした!」と言って頭を下げると、彼は優しく微笑んでくれたのである……!!

(やっぱりルシアンって素敵な方だわっ!!)と思いながらも彼と一緒に食堂へと向かったのだ。

途中ルシアンは歩きづらそうにしていたが、私の肩を貸すとすいすいと歩くことができていた。


そして着いた頃には、皆は席についていたのだった。

「遅くなってごめんなさい!」

私が謝るとルシアンも頭を下げて謝ったのである……!その様子を見て皆は大丈夫だと受け止めてくれていたのだが、ふとギルバードさんの表情が曇ったことに気づく。不思議に思って見つめていると、彼を はゆっくりと口を開いたのだ……。「レイラ嬢、そしてご友人の方々、こんな危険な目に合わせてしまい申し訳ない……。」と言って頭を下げたのである……!

(ギルバードさんが頭を下げるなんて……!)

私は驚いてしまって何も言えずにいると、ルシアンが代わりにこう言ったのだ……。「レイラのお陰で俺たちは救われた。だから謝らないでください、お役に立てて何よりですから!」

と言って微笑むルシアンに、彼は少し驚いた顔を見せていた。しかしすぐに微笑みを浮かべて頷いてくれたのである。

そして食事が始まり、私たちは楽しく会話をしながら食事を楽しんでいたのであった……。

「レイラ嬢は、勇敢でまるで騎士のようだった。感心する。」とギルバードさんが褒めてくれたので私は嬉しくなってつい笑みが溢れてしまったのだった……! その様子を微笑みながら見ていたリリアナさんは「レイラは本当に素敵な方なの!」と言ってさらに私を照れさせたのであった……。

(もうやめて〜!!これ以上褒められると恥ずかしいわ……!!)

「そういえば、あの黒い靄のような物は一体何だったのですか?」とラルフが質問をするとギルバードさんは頷いて言った。

「あれは呪いです。ただ、正確にはなぜ発生したのか理由はわからないままですが。」と答えてくれたので私は驚きを隠せなかった……。

(あれはやっぱり呪いだったのね……!でもなんで私たちが……?)と考えていると、リリアナさんがこう言ったのだ……。

「きっとレイラが不思議な力を持っている上で、助けに来てくれたからですよ!」と言って元気づけてくれたのである……!

「そうですよ!それにレイラが呪いの元凶を倒してくれたおかげで、この屋敷は救われました。本当に感謝しています!」とギルバードさんが言ってくれたので私は心から嬉しくなったのだ。

(そっか……私がなんとか出来たんだね……!!)そう思うと自信が出てきたのである……! その後も私たちは楽しく会話をしながら食事を続けたのであった……。


そして朝食が終わると、私達は帰る準備を始めたのである。すると突然外から鐘の音が鳴り響いたのだ……!何事かと思って外に出ると、空に黒い煙が立ち込めているのが見えたのだ……!

(あれって魔物が発生させる煙よね!?)

するとギルバードさんが慌てて叫び出したのである!

「皆さん、すぐに避難を……!」と言った直後である……!突然3人は目眩を起こしてしまったのだ……!

(なにこれ……?すごく体が重い……)と私は思わず倒れそうになるのを必死に耐えていたのだが、ルシアンが倒れるのが見えてしまったのである……!!

「ルシアン!!!」と叫んで駆け寄る私に彼は力なく笑ってくれた。そしてリリアナさんとラルフも意識を失っていたのである……!

(どうしよう……なんとかしないと……!!)と思っていると、ギルバードさんが私に言ったのだ……。

「レイラ嬢!貴方の力を使って彼らを守ってくれ!!」と言われた私はびっくりしてしまったのだが、すぐに頷いた。するとギルバードさんは優しい微笑みを見せてくれたので安心することができたのである。

そして私は目を閉じて集中し始めたのだ……。

(お願い!みんなを守って……!!)

私が強く願いながら目を開けると、周りには光の膜が出来ていて、ルシアン達を包み込んでいたのだった……!

「なっ…!?どうなっているの!?」

魔法を見よう見まねて唱えた張本人である私でもわからないが、なんとかこれで皆を守られている。

その隙に、ギルバードさんが黒い霧の元へと走っていった。

「ギルバードさん!?危ないですよ!!早く逃げてください!!」

しかし彼は振り返ることなく行ってしまったのだ。そして、しばらくすると魔物との戦いが始まったのである……!!

(ルシアン、ラルフ、リリアナさん……どうか無事でいてね……!!)と私は祈りながら3人を横たわらせ、ギルバードさんについていくことにした……。

ギルバードさんは弓を使って魔物に向かい、応戦しているのだ。

(私も頑張らなきゃ……!!)と気合いを入れて彼の後を追った。

しばらく時間が経つと、魔物の動きが鈍くなってきたのだ……。

(おかしいわ……?今まであんなに強かったのになんで急に弱くなったのかしら……?)と思いながらも私はさらに戦い続けた……。

そんな私の姿に安心したのかギルバードさんは少し微笑みを見せて戦い続けるように言ったのである。彼の意を汲んで頑張り続けていると、ついに最後の一頭を倒したのだった……!

「やったわ……!!」

私は喜びのあまりその場で飛び上がってしまったのだ。ギルバードさんも安堵の表情を浮かべている……。

そして、私たちは屋敷へと戻ってきたのである……!


「ルシアン!ラルフ!リリアナさん起きてください!」と私が呼びかけると皆は目を覚ましてくれたのだ。

(よかった……!)と安心するのも束の間で、すぐさまギルバードさんはルシアンを連れ出したのである……。そして私達は残されたのだった……!!

(どうしたのかしら……?)と思っていると、ラルフとリリアナさんが起き上がり瞼をこすっていた。

「一体何が…?」「レイラ……ルシアン殿下のご体調は?」と不安そうに聞いてくる2人に、私は起こった出来事を話すことにしたのだった。

すると2人の表情が凍りついてしまったのだ……。「そんなことが……」「これも呪いの力なのか?」と口々に混乱を示していた。

そして、ギルバードさんがルシアンを連れて行ってから1時間ほどした頃だろうか。

安堵の顔を浮かべたギルバードさんが戻ってきたのだ。

「ギルバードさん!ルシアンに何かあったんですか!?」と聞くと、彼は優しい笑顔を浮かべて答えてくれたのである……。「心配はいらない。ルシアン殿下は今、眠っているだけだ……。」

そう言われて胸をなでおろす私達であった……!すると、ギルバードさんはさらに話を続ける……。

「あの黒い霧は、呪いの力の塊だったらしく、浄化することで元に戻せるそうだ」と言うとほっとしたのか3人はその場に座り込んでしまったのだ……!

(よかった……!!)と思った私だったが、まだ問題は解決したわけではなかったのであった……!!

「ギルバードさん、呪いを解くことができるのですか?」とリリアナさんが尋ねると彼は頷いて移動した。

そして先代の公爵家の主人である部屋を訪れると、ギルバードさんは扉を開けて言ったのだ。

「ここに機械仕掛けの時計がある。これを正しい針の位置に戻せば、呪いは解かれるに違いない。」

そう言ってギルバードさんは私達を時計の前に案内してくれたのである……。すると、リリアナさんが慌てた様子で話しかけてきたのだ。

「でも、どうしてその機械仕掛けの時計がここにあるのでしょうか……?」

(たしかに……)と私も思ったが、今はそれよりも呪いを解くことが先決だと思い考えることを後回しにしたのだった。

「とにかく今は呪いを解くのに集中しよう!」と言うと3人も納得してくれたようだ。そして私達はそれぞれ手分けをして作業をすることになったのだ……!

(あともう少しで針の位置が分かるわ……!!)と思っていると、突然大きな揺れが起こって時計が落ちそうになったので慌てて受け止めたのである……!

(危なかったわね……)と思いながらも作業を続けるうちにようやく針の位置を特定することができたのだ……!

(やったわ!これで呪いが解けるのね……!)と思いながら私はギルバードさん達に報告すると、皆嬉しそうに笑っていた。

そして、ギルバードさんは時計に向かって呪文を唱えると、ついに呪いが解けて針も正しい位置に戻ったのである! その瞬間大きな光に包まれて私達は気を失ってしまった……。

目が覚めるとそこはギルバードさんのお屋敷のままだった。私はベッドに寝かされていたようだった……。

(あれ……?夢だったのかしら……?)と思い体を起こそうとすると、頭の奥がずきずきとして痛かったのだ……。(うっ……ここは現実なのね……)と思いながら起き上がると部屋の中には誰もいなかったのであった……。

すると部屋の扉が開いてギルバードさんが入ってきたので、私は慌ててベッドから出ようとしたのだが止められたのだ。

「そのまま安静にしていたまえ」と優しく微笑んで言ってくれたので、私は言われた通りにしたのだった……。

(それにしても、時計はどうなったのかしら……?)

「レイラ嬢よ、私達が屋敷に帰ってきた後のことを知りたいか?」

そう言ってギルバードさんは話を聞かせてくれたのだ……。

「はい!」と私が頷くと、彼は話してくれたのである……。

まずはルシアンから話を聞いたそうだ。彼は目を覚ましてすぐに皆を起こして、リリアナさんが側にいて慰めていたらしい。

そして呪いが解けてから2時間が経ち、彼は今では少し元気を取り戻したとのことだった。そしてこのお屋敷では、あるはずだった先代の当主の部屋は今は何も残っていないという……。

さらに、私達を襲った黒い靄の正体は魔物だったらしく、それも無事全部退治することができたそうだ。そのおかげで町の人たちも安心して暮らせるようになったらしい……。

(本当に良かった!)と安心していた私に彼は優しく微笑みながら言った。

「レイラ嬢、本当にありがとう……君がいなければ私達も無事ではいられなかったかもしれない。君は英雄だ!」と言われて私は思わず照れてしまったが、素直に嬉しかったのだ。

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