第7話

「.............いつもいつも、困ります」

「どうか、お願いします!孤児院にいる子供達を、引き取りに来ただけですので............」

私は、その会話を聞いて驚いたが、シスター達の元へ向かうことにした。すると、一人の女性が彼女の存在に気付いたようで口を開く。「貴方は、どちら様ですか?」と尋ねられたので、彼女は自己紹介をすることになった。

「私は、領主様のお屋敷で働いている者でございます」と挨拶をすると、彼女達は納得したような表情を見せる。そして、もう一人の女性は私に向かって頭を下げて、挨拶をしてくれたのだ。どうやら、彼女は新しい孤児を引き取りに来たようである。

私は、彼女に質問をすることにする。「何故この教会に?」と聞くと、彼女は微笑みながら答えてくれた。

「私は、ここで働いているシスター達にとてもお世話になっているのです。ですから、少しでも恩返しがしたくて、こうやって時々会いに来るのですよ」と優しく教えてくれる女性に対して、私も笑顔を向けるのだった。..............しかし、もう一人のシスターは困った表情を浮かべていたのであった。すると、今度は私が口を開いたのである。

「領主様のお屋敷で働けるのは名誉なことです、ですがシスターのお話を聞いてあげてくださいな」

「それは、どういう意味ですか?」

彼女が私に質問してきたので、私は説明する事にした。領主様の屋敷には孤児が多くおり、それを養っていると............そして、彼女を雇う余裕はない事を話したのである。すると、悲しげな表情になってしまった。しかし、彼女は言うのである。「申し訳ありませんでした」と頭を下げて謝ってきたのだ。

私は、彼女に頭を上げるように促した後で、話をすることにする。「貴方様が、子供達を引き取りたいという気持ちはよく分かります。ですが、今はそういう状況ではないのです」

と言うと彼女は少し考えた後で、「わかりました...........では、せめて子供達に会わせてください!」とお願いしてくる。私は断ることが出来ずに、子供達がいる場所へと連れて行くことにした。

シスターが子供達の部屋に入るなり、一人の子供が彼女に駆け寄ってくる。そして、笑顔で話しかけるのであった。

「お母さん!」

すると、もう一人のシスターは驚いた表情を浮かべた後に涙を流し始めるのであった。どうやら、彼女はこの子の母親のようだったのだ。彼女の姿を見た子供達も、嬉しそうな表情を浮かべる。

それからしばらくの間は、楽しい時間が流れることになるのだが、それを打ち破る者が現れることになるのである。

それは、昼頃の出来事であった。突如教会の扉が開き、そこには一人の男性がいたのである。彼は息を切らしており、急いでここまで来た事が伺えた。その男性は、私の顔を見るなり慌てた様子で話しかけてくる。「助けて下さい!妹が熱を出して苦しんでいます!」と、泣きながら訴えてくるのだった。その言葉を聞き、私は彼を落ち着かせた後で話を聞く事にしたのだが.............なんと驚くことに、彼は孤児院にいる牧師の一人だという。しかも、彼が言うには、つい最近まで元気だった妹が突然熱を出して倒れたというのである。

私は、すぐに緊急を要する事態だと判断し、そのシスターと共に孤児院へと向かった。そこには、数人の子供達がいて看病をしていたのだが、顔色が悪く苦しそうにしていたのであった。私はすぐに医者を呼ぶことにし、妹さんの元へ駆けつける。彼女の体温を測ると39度近くあり高熱を出していることがわかったのだ。

「まだこんなに小さい子供なのに............」と思いながらも、必死で看病をした結果、なんとか一命を取り留める事ができたのである。

私は、ホッと胸を撫で下ろす一方で、孤児院の惨状を見て愕然としていた。何故なら、この部屋の中には10人以上の子供達がいるのだが、全員表情が暗いのだ。

「これは一体.............何があったのですか?」と尋ねると、牧師は辛そうな表情を浮かべて答える。「実は最近、教会の運営資金が不足しているのです」

私は、その言葉を聞いた時に納得した。孤児院を運営するには、お金がかかる事を知っていたからだ。だから、私を含めたこの屋敷で働く者達は必死で働いていたのだが、それでも足りない状況が続いていたのである。

「申し訳ありませんが、もう少し子供達の為に寄付をお願いしても、よろしいでしょうか?」と牧師が申し訳なさそうに言うので、私は答えることにする。「もちろんです!私達に出来る事があれば、何でもおっしゃって下さい!」と言うと、彼は安堵の表情を浮かべるのであった。

それからしばらくした後に、医者が到着して妹さんは、無事に回復したのであった。

この一件をきっかけに、私は領主様に相談をする事にしたのである。

教会に訪れた牧師の事を聞いて、領主マーリンは頭を抱えてしまった。しかし、すぐに気持ちを切り替えると、ある決断を下す事になる。それは教会への援助を増やすことであった。孤児院が苦しんでいる原因の一つは、運営資金が不足している事である。そこでマーリンは、教会の存続の為に必要な金額を計算し、それを寄付する事にしたのである。これにより、教会は救われる事になったのだ。

「本当にありがとうございます.............」ユナは涙を流しながら感謝の言葉を述べた。「いえ、気にしないでください」と私は笑顔で答える。

こうして、教会への支援を増やせたことで、子供達が悲しむことはなくなったのである。また、孤児院に新しい子供達を受け入れても問題ない程の、余裕が生まれたのであった。


「孤児院の方で、まさかそんなことがあったなんて..............」

その話を聞いたリリアナさんは、申し訳なさそうに泣きそうになっていた。

「でも、今は子供たちものびのび過ごしているし、本当に良かったわ」

私がそう言うと、彼女も嬉しそうな笑顔を浮かべてくれた。

「それにしても、ユナちゃんは凄いわね............」

リリアナさんは、感心したように話している。

確かに、彼女はいつも頑張り屋で子供を無償の愛で見守っている。

「そうよね、私も見習わなきゃ!」

リリアナさんはそう言って、拳を握ると決意を固めたような顔をする。

「ユナちゃんを見習って、私も子供達のお手本になれるように頑張らなきゃね!」

リリアナさんの言葉に、私は慌てて止めに入る。

「でも、無理したらダメよ!リリアナさんは、いつも頑張りすぎなんだから」

確かに、彼女は人の気持ちに敏感で優しい性格をしているが、同時に人の為に自分を犠牲にしてしまうところがある。

「もっと、自分の事を大事にしなきゃダメよ!」

私が言うと、リリアナさんは少し考え込む。

「確かに、レイラの言う通りよね............」

そう言って、彼女は微笑む。どうやら、納得してくれたようだ。

(よかった.............)ほっと胸を撫で下ろす。

「でも、レイラも無理しちゃダメだよ。王太子妃だから、中々休めないかもしれないけど。」

リリアナさんが、私の頭を撫でながら言う。そして、最後に抱きついてきた。彼女の温もりを感じると幸せな気分になる。すると、彼女が突然言ってきた。

「レイラ、いつもありがとう。まさかあの社交界から、こんなふうに仲良くなれるなんて!」

突然のお礼に、私は嬉しくなった。

(嬉しい.............!)

私も彼女を抱きしめる。そして言ったのだ。「私の方こそ助かっているわ。不思議な縁よね」

そうして、私達の夜は更けていったのだった。

翌日、朝食を食べ終わると、私はリリアナさんと別れた。今日は王宮での用事があるからだ。リリアナさんはこの後孤児院に戻り、ユナちゃんのお手伝いをするそうだ。昨日の出来事で、すっかり元気になった子供達と一緒に楽しそうに働く姿が、目に浮かぶようだった。

王宮に着くと、すぐに王妃様の部屋に向かう。今日は、王妃様とのお茶会の予定だ。部屋に行くと、すでに王妃様の姿があった。

「あら、来たわね」と笑顔で迎えてくれる。

「すみません、お待たせしましたか?」私が尋ねると、首を横に振って答える。「いいえ、私も今来たところだから、大丈夫よ!」

そう言うと、席に着くように促してくれる。テーブルの上にはお菓子やお茶が用意されていた。

(相変わらず、お綺麗で優しい方だ)と思いつつ、席に着く。王妃様は、お城にある図書室を管理しており、その図書室には様々な本が置かれている。私は、王妃様がお茶会を主催してくれる度に、その図書室におじゃまさせてもらい、本を読み漁っているのだ。

(今日はどんな本を読もうかしら............)と、考えるだけで楽しい気分になる。そんなことを考えていると、ふとあることを思い出す。

「そういえば、昨日読んだ本の中に面白いものが載ってました」と私は話し始める。「人間の魔力の源は体内にあるマナなんだけど、そのマナの量によって、魔法の威力が変化するって書いてあったんです」

私の話を聞いている間も、王妃様は微笑んでいる。「それで、その上その本に書いてあったんですが............」

私は、昨日読んだ本の内容がとても興味深くて、つい話に夢中になってしまった。王妃様が興味深そうに耳を傾けてくれているのを見て、嬉しくなりさらに話を続けようとすると.............。

コンコンッ!突然、部屋のドアがノックされる音が聞こえてきた。王妃様は「どうぞ」と声をかけると一人のメイドが入って来る。

「失礼いたします」

メイドは一礼すると部屋の中に入り、そして要件を話し始めたのだ。

話を聞くうちに、王妃様の顔色が変わっていくのが分かった。

「分かりました。すぐに行きます」王妃様はメイドに向かって答えると立ち上がり、私の方を向くと言った。「ごめんなさいね、急用が出来てしまいましたので、お茶会はここで終わりにしますわ」

私は残念に思いながらも、頷く。「分かりました。お忙しい中、お茶会を開いてくださり、ありがとうございました」

頭を下げてお礼を言うと、王妃様は微笑んでくれる。そして部屋を出て行った後を追って、私も図書室を後にしたのだった。

それから数日後のこと..............私は、仕事帰りにいつものように王宮の図書室に来ていた。司書さんに挨拶をして中に入ると、奥の方に王妃様がいるのが見えた。どうやら、何かを探しているようで本棚を見ながら歩いている。私は、挨拶をするために彼女の元へ向かうことにした。

「こんにちは」と声をかけると、彼女は振り返ると言った。「あら、レイラちゃんいらっしゃい」

王妃様は、言わずもがな今日も綺麗だ。長い金髪が美しいドレスによく似合っている。そんな彼女を見ていると、ドキドキしてしまうのであった。(本当に綺麗よね............)そんなことを考えながら見惚れていると、彼女の方から話しかけてくれた。

「今日は、何の本を読んでいたの?」私が答える前に彼女が質問してくる。

「実は、この前読んだ本に魔力の源について載っていたので、それについて調べていたんです」私は答えると王妃様は興味深そうに聞いてくれる。「へぇ〜!面白そうね!私にも教えてくれないかしら?確か前回も話してくれたわよね?」

私は大きく頷くと、彼女が座っているテーブルの席に着いた。そして本を開いて見せると、彼女は真剣に読み始めるのだった。しばらく経ってから、王妃様が顔を上げたので話を続けることにする。「それでですね、その本には魔力の源は、体内にあるマナであるって書いてあったんですよ」

私は、この前読んだ本の内容を王妃様に詳しく話していく。「なるほど、その魔力の源の量は人によって変わるということかしら?」彼女は、顎に手を当てて考えているようだ。「そうみたいですよ、でもその量が多ければ多いほど、強力な魔法が使えるみたいですね」

王妃様は納得したように頷くと、私にお礼を言ってきた。

それからしばらく二人で話をしていると............突然後ろから、声をかけられたのだ。振り返るとそこにいたのは、リリアナさんだった。彼女は、可憐に微笑みながら近づいてきたのである。そして、私達の輪に加わったのだった。

「あら、リリアナさん!こんなところでお会いするなんて、奇遇ね」王妃様が笑顔で話しかける。それに対して、リリアナさんも笑顔で答える。

「はい、今日は業務が早く終わったので図書室で本を読んで帰ろうと............」リリアナさんがそこまで言うと、王妃様は突然私の方を見て嬉しそうに言ったのだ。「レイラちゃん!今日もリリアナさんと一緒に、お茶して行かない?もっとお話を聞かせてちょうだい!」

(えっ?!)突然のお誘いに、驚いてしまう。王妃様の方を見ると、微笑んでいるだけだ。私は少し考えた後、彼女に返事を返すことにしたのである。

「はい、喜んで!」私が答えると、王妃様は嬉しそうに私の手を取ってくる。「じゃあ決まりね!」

私は、そのままリリアナさんと一緒に図書室を出て、王妃様のお部屋に向かうことになった。


王妃様のお部屋にお邪魔すると、豪勢なシャンデリアの綺麗な装飾が、隅々まで施されていた。

彼女は、自らお茶を入れ始めたのだ。「どうぞ召し上がって」

そう言われてカップを手に取ると、とても良い香りが漂ってきたのである。一口飲むと、その美味しさに驚いた。「美味しいです!」私が素直な感想を言うと、彼女は嬉しそうに笑う。そして、お菓子も出してくれたので、それもありがたく頂いたのだった。

お茶を飲みながら、リリアナさんと王妃様は談笑している。私はそれを聞きつつ、時折会話に参加しながら楽しい時間を過ごしていた。

しばらくして時計を見ると、すでに16時を過ぎていたので、お暇することにしたのである。「そろそろ帰りますね」私が言うと、王妃様が残念そうな顔をしていた。「もっとゆっくりしていけばいいのに...........」

そんな王妃様を見て、リリアナさんが笑いながら言う。「レイラは多忙だから仕方ありませんよ」

こうして、私達3人は玄関までやって来たのだが、そこでまたお茶会に誘われることになったのだ。

しかも、今度はなんとパーティが開かれるとのことで、王妃様がドレスをプレゼントしてくれると言い出したのだ。

「王妃様、流石にドレスは............」私が断ろうとすると、王妃様は私の手を取り真剣な眼差しで言ってきたのである。「だめよ!レイラちゃんやリリアナちゃんみたいな美人さんは着飾らないと!」

そう言われてしまうと、何も言い返せなかった。結局私は押し切られてしまい、参加することになったのである。

(うぅ............緊張してきたわ)私は王宮の大広間の前で立ち尽くしていた。(この扉の向こうでは、大勢の貴族の方々がいるんだよね............)

そう思うと、足がすくんでしまう。

「大丈夫よ、私がついているから」と、リリアナさんが私の手を握ってくれる。

「ええ...........」と返事をするが、やはり緊張してしまうものは仕方がないだろう。

そんな私を見て、リリアナさんは微笑みながら見守ってくれているようだ。しばらく待っていると、扉の向こう側から音楽が流れ始めたので、ゆっくりと中に入っていったのである。中に入ると、きらびやかな世界が広がっていた。美しいドレス姿の女性や、タキシードの男性がたくさんおり、皆それぞれ楽しんでいる様子だ。会場の中に入るとさっそく王妃様が声を掛けてくる。「レイラちゃん!いらっしゃい!」

王妃様は、笑顔で出迎えてくれる。その周りでは貴族の方達が挨拶をしてくる。私も挨拶を返すが、正直言って名前なんて覚えていない。とりあえず、微笑んでおけば問題ないだろうと思っていたのだ。それからしばらくすると、国王陛下が現れて、舞踏会が始まったのである。

リリアナさんと王妃様と一緒にダンスを踊ったりしていると、段々と緊張も解れてきた気がする。そして、他の参加者達とも少しずつ会話を交わすようになっていったのだった。

「そういえば、この前の本面白かったわよ」リリアナさんが話しかけてきたので、私は嬉しくなった。「本当?ありがとう!」

私はお礼を言うと、彼女は微笑みながら話を続ける。「私も、魔力の源について研究してみようかなって思ったの」

「それはいいですね!リリアナさんが魔法を使ってるところ、見てみたい!」私は興味津々で聞く。すると、リリアナさんは少し恥ずかしそうにしながら答えてくれた。「実はね...........最近ちょっと魔法が上手く使えるようになった気がするのよ」

その言葉に、驚きを隠せなかった。(え!?本当に?)と思いつつも聞き返す。「もしかして、新しい魔法を覚えたりしたんですか?」

彼女は、頷いてから答えてくれた。「まだ練習中だけど、水魔法が使えるようになったのよ!」その言葉にさらに驚いた。

(なんてすごいの!)

「私なんて、まだ風魔法が全然使えないのに..........」羨ましく思っていると、リリアナさんが優しく微笑んでくれた。「大丈夫よ、これから頑張ればいいのよ」

彼女の言葉を聞いて元気が出てきた私は、早速魔法の練習をしてみることに決めたのである。まずは、手を前に出して意識を集中させてみることにしたのである。すると、手のひらから小さな水の玉が現れたのだ。それを見ていたリリアナさんは、驚いたような声を上げた。

「レイラ、凄いじゃない!」

「えへへ...........実は最近練習してるんですよ」私が照れながら答えると、リリアナさんは嬉しそうに見ていたのである。

それから、しばらく2人で楽しくおしゃべりをしていると、突然王妃様が近づいて来たのだった。

王妃様は、微笑みながら話しかけてくる。

「本当に2人は仲良しね!」

リリアナさんは照れたように笑いながら言う。「はい、こちらに来てレイラが初めての友達なんです」

王妃様は嬉しそうに微笑んだ後、私に言った。「これからも仲良くしてあげてね」私は笑顔で答える。「はい!」

それからしばらく3人でおしゃべりを楽しんだ後、お開きとなったのである。帰り道の途中で、リリアナさんが話しかけて来た。「今日は楽しかったわ!また一緒に遊びましょうね!」私が笑顔で頷くと、彼女も微笑んでくれるのだった。

(本当に楽しい一日だったなぁ...........。)その日から毎日お城に通うようになり、王妃様と一緒に過ごす時間が増えていくのだった。


そんなある日のこと...........いつものように図書室で本を読んでいると、突然声をかけられたのである。振り返ると、そこにはリリアナさんの姿があったのだ。彼女は微笑みながら言ったのである。「こんにちはレイラ、ちょっと良いかしら?」私は首を傾げながら聞き返すと、彼女から驚くべき話をされたのだ。その内容は、なんとまた魔法を覚えたらしいということだ! 私は興奮気味に話を聞いた後、ぜひ見せて欲しいとお願いしたのである。リリアナさんは少し困った顔をしていたが、最終的には了承してくれたようだ。

私達は、人気のない庭まで移動することにした。そして、誰もいないことを確認してから、リリアナさんは呪文のようなものを唱えると、彼女の手のひらから大きな水の玉が現れたのだ! 私は驚きのあまり、声が出なかった。その様子を見た彼女は、微笑みながら言ったのである。「どうかしら?結構上手くなってきたでしょう?」私は、興奮気味に返事をしたのだった。「すごいですね!上手!!」

その後も色々と教えてもらったが、まだまだ私は未熟な部分もあるということがわかったのだ。それでも、リリアナさんの才能には驚かされたのであった。


いつものように図書室で本を読んでいると、ルシアンがたくさんの貴族の方を連れて、庭でわいわい楽しんでいる様子が見えた

そして、王妃様がその様子を見ながら微笑んでいる姿も。

(楽しそうだな)私は少し羨ましく思いながら、本を読み進めるのだった。

ーーあれから、何時間が経ったのだろうか。

本を全部読み終えて帰る時に、ルシアンとばったり鉢合わせをした。

彼は私を見ると、嬉しそうに話しかけてくる。

「レイラじゃないか!」

私も笑顔で返す。「ルシアンは、お庭で楽しんでたみたいね」

ルシアンは、少し恥ずかしそうにしながら答えてくれた。「ああ、おかげで新しい情報がいただけたからな!」

私は少し驚きながらも、祝福の言葉を贈る。「良かったじゃない!おめでとう!」

私が言うと、ルシアンはとても嬉しそうにするのだった。そしてお礼を言って去って行く彼を見送りながら、私も部屋に戻ろうとしたその時、ふと甘いものが食べたくなり、食堂まで足を運ぶことにしたのである。

中に入ってみると、そこには王妃様の姿があった。彼女は紅茶を飲みながら、優雅な時間を過ごしていたようだ。

「あら、レイラちゃんじゃない!」

私に気づくと声をかけてくれる。私は王妃様に挨拶すると席に座るように促された。「一緒にお茶でもどうかしら?」という誘いに喜んで乗ってしまったのだが、これが間違いだったと後に後悔することになるとは思いもしなかった...........。

お茶を楽しみながら、色々な話をしていくうちに、私はふと気になっていることを尋ねてしまう。

それは、王妃様が持っている怪しげな瓶のことである。最初は香水か化粧品かと思ったが、それにしては少し大きい気がする。

すると、王妃様が微笑みながら答えてくれたのだ。「これは魔力の源よ」

私は思わず聞き返してしまった。

だって、そんなものが実在するはずがないと思っていたから..........しかし、王妃様は真面目な顔で話を続ける。「本当よ!この中に、魔法の源が入っているのよ!」と、王妃様は自慢げに話してくれたのだ。半信半疑で聞いていた私だったが、実際に飲んでみる?と言われて差し出された瓶を、受け取るしかなかったのである。

(本当に飲んでもいいのかしら?)と不安になりながらも飲んでみると、口の中に苦みが広がる...........でも、不思議なことに段々と甘い味がしてきたのだ!

(あれ?この味って、まさか!?)

私は嫌な予感がしていた。

そして、それは的中することになるのである。

「レイラちゃん、美味しい?」王妃様が尋ねてくるので、正直に答えることにした。「はい、甘くておいしいですが...........」

それを聞いた王妃様は、満足そうに微笑むとさらに勧めてくる。「もっと飲んでいいわよ」と言われ、断れるはずがないので、結局全部飲むことになってしまったのである。

そして、私は意識を失ったのだった..........。


気がつくと、ベッドの上で横になっていた。慌てて起き上がろうとすると、体が重く感じる。

一体どういうことだろう?体を起こそうとしたその時、信じられない光景を目にしたのだ!

心なしか声も高くなっているし、髪も伸びている気がする。焦って鏡を見ると、間違いなく私の姿なのだが、どこかが違うような気がする。

「これって...........」私は、混乱していた。すると部屋の扉が開き、誰かが入ってくる。それは、王妃様であった!彼女は私を見るなり、嬉しそうに話しかけてきた。「あら、目が覚めたみたいね!」

私は慌ててベッドから起き上がろうとしたが、まだ体が重くてうまく動くことができない。

すると、王妃様は私の肩を抑えながら言ったのだ。「無理しないでいいのよ。私がやったのだから」

私は驚いて聞き返した。「どういうことですか!?」と尋ねると、王妃様は微笑みながら教えてくれたのである。

実は、この薬は一時的に姿を変えることができるという魔法道具らしく、この薬を飲んだ者が威力の強い魔法を出すと姿も強力になるらしいのだ。しかし副作用もあり、効果が切れるとしばらく動けなくなってしまうということだ。

「だから、魔法を使うときには気をつけるのですよ」と王妃様は言っていたが、今の私にとってはどうでも良かった。それよりも、体の異常を回復させる方が先決であった...........。

しばらく休んだ後、ようやく元に戻ることができた私は王妃様を問い詰めたのである。「どうして私にこんなことをしたんですか!?」すると、彼女は申し訳なさそうに言うのだった。

「ごめんね、でもレイラちゃんが頑張っている姿を見たらつい手伝ってあげたくなってしまって...........。」

と彼女は言うが、私は納得がいかなかった。

確かに、お気持ちは嬉しいけれど。

「元に戻して下さい!」私が言うと、彼女は困った顔をする。「ごめんなさいね、実は戻す薬はもうほとんど残ってないのよ...........」

そう言われてしまうと何も言えなかった。結局諦めるしかないのかと諦めかけていた時、王妃様が思わぬ提案をしてきたのである。

「それなら、うちの専属魔術師にお願いしてみようか?」と言ってくれたのだ!それを聞いた瞬間、私は目を輝かせて喜んだのだった。

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