第7話 『灯台とイルカ』Ⅰ
夢の中の舞台は灯台や水族館、レストランのある海岸の観光地だった。
多くの人々が出入りしている。
与えられた夢界での役職:なし。
きっとここも前に日本にあったどこかの観光地なのだろう。
目の前をクルージングしているマナーのない若人がエンジン音を鳴らし、違法投棄をしている。正直見てていい気分じゃない。
引き裂くか…
「止めろ!!」
立ち向かったのは眼鏡坊主の少年と三つ編み少女だった。
なるほどね。あの二人が後の老夫婦か。
子供が立ち向かっているのに他の大人は見て見ぬふり…ね。
「生意気なガキは黙ってろ!!」
飛んできた拳を受け止めたのはアイラだった。さすが行動が速い。そして意外とパワフルなのよね。
「んだ変な恰好のクソガキ、こいつらの仲間か?」
「ねぇ壱ちゃん、こいつらに蹴り入れていい?」
「夢の中だしお好きにどうぞ。」
アイラと申し訳なさそうにしている海斗二人は不良を一周した。
雑魚の捨て台詞を吐いて逃げようとしたところをカナとセントに防いでもらった。
「まあまあ、悪いことしたんだしちゃんと態度で示さねぇとな?」
「はあ?んなもんやるわけ…」
「示さねぇと、な?」
「…はい。」
俺と紅音、マグルのファインプレーによって快く尽力してくれた。
この観光名所を愛す少年少女の話を聞いてここで一番怪しい二人か大切にしているイルカのいる水族館に向かった。
少年が声を掛けると背びれに傷を負ったというイルカの影が薄っすら近づいてきた。
「よかった。最近全然来てくれなかったから。」
しかし俺らは違和感を覚えていた。
もしここが本当のにあった過去ならイルカがあんな大きく八の字を描いて友情行動をとるなんていう行動は一切示さない。
それに気配も大きいしセントがただのイルカでないことを理解していた。
「避けろ!」
濁った水槽を割って出てきたのは体長五メートル以上の長い腕が四本生えた忌々しいイルカのような存在だった。
それは狭い、出たいと呟いていた。
「奴はもう死んだ。この世にいない只の概念に過ぎないのよ。」
「そんな、だって…!…そうだ、もう居ないんだ。」
願ったものは全て幻想。夢は残酷なんだよ。
こいつが核、可哀そうだが割り切って息の根を止めるしかない。
「セント、二人を頼む。」
壱星と紅音は双方から挟んで
脚を切断する勢いで斬撃を入れたが外皮が固く浅い傷程度しか与えられなかった。
シベリアの高速斬撃でダメージを蓄積させようとはしているが長くはもたなそうだ。
マグルは両手をザリガニの手、サソリの尻尾、ライオンの爪、蟻の外郭、蛇のリーチを混ぜた重々しい拳とカナの片手に装甲とエネルギーを収集し握りしめた手で頭部に打撃を入れた。
イルカは多少痛みを感じて麻痺したが直ぐに体制を立て直して口から勢いよく宙に浮かぶピラニアの集団を吐き出した。
「喰らいなさい、電磁パルス距離操作発生式ドローンボム。」
「エビルウォーターショットガン!」
アイラと海斗がそれぞれ処理してくれたので無駄な体力は使わずに済んだ。
にしても世界観からしてかなり暴走しているな。
マグルの生成した毒やアイラの薬毒ナイフを俺と紅音の作った傷口から差し入れているから動きは鈍く懐ているがまだまだ時間がかかりそうだ。フォンやクレイらの外からの状況からも考えて早めに対処しないと。
「待って!!」
少年がこちらに走ってきてイルカとカナの一撃の間に入った。
あっぶねぇ…セントは、まあ仕方がない。目を瞑ろう。
セントやアイラのが忠告するも少年は離れようとはしなかった。
しかしその間イルカは一切攻撃してこなかった。
もしかすると
「猶予をやる。そいつと話して五分以内で説得してみろ。
危険だと思ったらこちらで強制的に処理する。いいな?」
「はい。」
俺は鎌を円を描くように静かに回し相手の本心(自我)に繋がる道を作る技:
満月心万華鏡を放った。
「行ってこい。」
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