Side メグ
メグは治療院の中に入ると受付に居た治療魔法しに、相棒のアネモスがマンティコアの毒にやられたと説明します。
いつもアネモスを診てくれている治療魔法士が慌てて出てきてくれて、アネモスの体調を診て貰えました。
アネモスはアレックスの治療が良かったようで、休めば回復するだろうと治療魔法士から説明されて、安心したメグは腰が抜けそうになります。
倒れそうになったメグをアレックスが支えてくれました。
少し恥ずかしく思いながらもアレックスにお礼を伝えます。
アレックスはアネモスが治療魔法士に診て貰えた事を確認すると、自分が居ても意味は無さそうだからと、ピュセーマに乗って飛んで行ってしまいました。
メグはピュセーマに乗ったアレックスが見えなくなるまで見送ります。
アレックスが見えなくなったところで、治療魔法士が声をかけて来ました。
「今の方は?」
「彼に助けて貰ったんです。錬金術師らしいのですが、治療魔法を魔法陣を二重で発動させていたんです」
「え? 錬金術師ではなく、治療魔法士ではないですか?」
「よく分からないんですが、故郷に自分以上の治療魔法士が居たから諦めたと言っていました」
「二重で魔法陣を発動させる以上の治療魔法士?」
王都の治療院でも、二重で魔法陣を使える治療魔法士は居ても、二重以上の魔法陣を扱える人は少ないとメグは記憶しています。
なのでマンティコアの毒が回った状態で、解毒するのはとても難しく、もしアネモスを王都に連れて帰れたとしても、アネモスはもう助からないと思っていました。
アレックスは、不可能だと思っていたアネモスの治療を短時間で終わらせてしまったのには驚きです。
「治療魔法士として資格を持っていないので、お金はいらないと言われてしまったんです」
「それは正解です。ギルド員であれば緊急時は考慮されますが、お金を取る野良の治療魔法士は下手すれば打首ですから」
「彼の選択は正解だったんですね」
「はい」
治療魔法も凄かったですが、マンティコアを簡単に仕留めたのは圧倒的でした。
メグはギルドでも強い方だという自覚はあり、マンティコアを倒せない事はないです。しかしアレックスのように簡単に仕留める事は不可能です。
それで故郷では弱かったとは意味が分かりません。
考えられるとしたら戦える人の中で弱かったのだろうと、メグはアレックスの言った事をそう理解しました。
ですがアレックスの反応はそうでも無かった気がします。
というか、アレックスはマンティコアを打ち上げた時に、どう考えてもスキルを使っていました。
スキルを覚えるには時間をかけて鍛錬を続けたり、魔法を体に馴染ませて覚える物で、戦闘が苦手だと言う人が覚えられる物ではないです。
スキルを覚える方法としてスキルオーブもありはするけれど、スキルオーブは物自体が高価な事と、スキルオーブで覚えたスキルは熟練度が低く、上手く使いこなす事ができない欠点があります。
アレックスのスキルは身体能力系の何かだとは思いますが、マンティコアを浮かばせられるほどのスキルの種類も凄ければ、スキルの熟練度はかなり高そうでした。
メグから見てアレックスの言っている事と、実際の実力は真逆に感じられます。
アレックスの事を考えていると、治療魔法士が話しかけてきている事に気づきます。
「メグさん」
「すいません、何でしょうか?」
「アネモスは本日お預かりします」
「分かりました。アネモスをよろしくお願いします」
アネモスが心配ですが、自分が治療院にいても邪魔になるだけだろうと、治療院を出る事にしました。
メグはギルドでマンティコアの事を報告しようと、ギルドへと徒歩で移動します。
ギルドへ入ると、顔馴染みのギルド職員であるエミーに声をかけます。
「エミー」
「あら。メグもう帰ってきたの?」
メグはエミーにマンティコアに襲われてアネモスが怪我をした事を伝えると、エミーが慌てながら心配してくれました。
運よくアネモスは無事だった事を伝えると、エミーは良かったと言ってくれました。
エミーから普段あの場所にマンティコアが出る事がないので、別室で話を聞きたいと言われます。メグは同意すると、エミーが部屋を用意してくれました。
別室に移動すると、マンティコアに出会った状況について詳しく聞かれます。
メグとしては急にマンティコアが現れたとしか言いようがなく、先に気づいたアネモスがメグを庇って毒を受けてしまったエミーに説明しました。
「アネモスは毒を受けたの!?」
「助けに来てくれた人が居なければアネモスは助からなかったと思うわ」
「マンティコアの毒は強力ですものね。マンティコアに出会ったのは不運だけれど、助かったのは運が良かったわね」
メグは更にアレックスが助けに来てからの話を聞いたエミーは、アレックスの強さや、治癒魔法の凄さに驚いている。
メグの話が終わると、エミーが場所を考えるとマンティコアは逸れの個体の可能性が高そうだと言います。
メグもエミーと同様の意見だと伝えます。
エミーは考えているのか少し黙った後、マンティコアの注意喚起が必要だと言って書類を作り始めました。
エミーが書類を作り終わったところで、メグはエミーにアレックスについて知らないかと尋ねてみました。
エミーは質問に悩む事なく知らないと言います。
「知らないけれど、そんなに多才なギルド員であれば職員でも有名でしょうから、最近王都に来た可能性が高いわ」
「錬金術師と言っていたけど、お金は受け取れないと言っていたから、国家資格をとりに来たのかも」
「ギルドからも有能なギルド員には声をかけたいから見た目を教えてくれる?」
ギルドから声をかけられるのは悪い事ではないでしょう。
アレックスの特徴を思い出しながら話していきます。
アレックスの身長はメグ以上に大きかったので、百八十センチを超えていそうでした。
年齢は多分同じくらいの十七歳前後。髪の毛は鴉のように黒の中に紺や紫があるようで綺麗な髪。髪は男性にしては長めで、髪の毛を結ぶためのアクセサリーは魔道具に見えました。
装備していた防具は革鎧と金属を合わせた物で、武器はメグと同じように大型の魔物を狩れるように、大型の剣を持っていました。
アレックスの特徴を説明し終わると、エミーがギルドに一度きていると言い始めました。
「王都に来たのは初めてで、狩場の情報を教えて欲しいと言われたわ」
「エミーがアレックスの担当をしたの?」
「そうです。鎧猪が出る林の場所を案内したんですが、最後に『魔物はそう強くなさそう』と言ったのでよく覚えています」
「アレックスなら鎧猪も余裕だと思います」
「メグの言う通りなら、彼の虚言では無かったようですね」
アレックスの事を話し終わると、エリーがマンティコアについての報告の報酬だと言ってお金を持ってきました。
報告の報酬は全ての報告者に払われる為、そこまで多くの金額ではないが、アネモスの入院費を考えると今のメグにとってはありがたい金額です。
メグはエミーから報酬を貰ったところで、ギルドから出て家に帰る事にしました。
エミーは態々ギルドから出るメグを見送ってくれて、しっかりと休むようにと言ってくれます。
メグはエミーに感謝して、自宅へ向けて歩き始めます。
メグはアネモスの居ない中王都を歩いていると、どうしてもアネモスの事が心配になってしまうので、アレックスの事を思い出します。
アレックスは見た目がかっこいいのもありますが、それ以上にさりげない気遣いがメグの好みでした。
アレックスを思い出すと顔が熱くなっていく気がします。
メグはここまで気になる相手ができたのは初めてで、転げ回りたい気分になって来ました。
アレックスを今思い出すのは間違いだったようです。
道端で変な行動をする訳にはいかないと、家に帰るまで何とか我慢します!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます