僕、勇者なのに王様に気絶させられる。

 目が覚めるとそこは牢の中だった。

 ティアは、僕の近くにはいないのか、、、


 僕はなぜかティアがそばに居てくれないと全ての人間に憎しみのような感情が湧いてしまうからな。

 意味わかんねえ俺が勇者じゃねえってバレたのか?

 でもゴブリンジェネラルを倒したような勇気ある者だから嘘はついちゃいねーよな、、、

 にしても、体動かねえ麻酔でも打たれたのか?

 しかも体どころか自分に力も使えねえ。

 あのスプレーといい、そんな技術があるようには見えなかったが、、、

 足音がする看守でもきたのか?


「おい、くそ勇者。俺たちはなあ勇者なんぞに頼らなくたって魔王を倒せるんだよ。我が軍の精鋭はそれだけ強いのさ!!!魔王が消えるまでそこで大人しくしているんだな。」


 気配でわかる、あそこに居た兵士もここにいるやつも僕程度の魔力しか無い。

 つまり雑魚だ。

 ゴブリンジェネラルでさえ、俺が吸収したステータスから見るに魔力だけでも5万8000以上。

 絶対にこいつらじゃ無理だ。


「お前ら、死ぬぞ」


 そう僕が忠告を入れるとそいつはイラついたような目をして、牢を開け僕の顔を一発殴ってからどこかえいった。

 むかつく、そして触られたことで憎しみが溢れてきた。


「はあ、はあ、」


 息が乱れる、何かに意識を乗っ取られる、、、

 だが、それはだめな気がする。

 僕が僕じゃなくなりそうな気がする。

 だからここは耐えなきゃ!


「僕は、ゴブリンジェネラルを倒した。

あいつのステータスは、魔力だけでも6万程度ある!魔王になんて挑んじゃだめだ!」


「だめれ!勇者!お前らは、最終的な結果しか気にしない!それで、これまで何人死んできたか、、、

だからここで黙って見とけ」


 だめ、だ、、、

 ティアがいないと憎しみを制御できない、、、


 そこでまたしても僕の意識は途絶えた。


 その途端看守は何かを感じ取って戻ってきた。

 俺も何かを感じた。

 力がみなぎる。


「お前は、なんなんだ!体は動かせないはずだぞ!


「ははっはははっ」


 俺はあまりにも滑稽だと思った。

 この俺に全てを任せていた。愚者どもを、

 この俺をこき使ったうえに自らを滅ぼそうとした 愚者どもを!、また滅ぼすことができるんだからな。

 この体は、ああそうか。

 こいつの四肢は機械だから、乗っ取りに成功し 脳までも機械が侵食したというわけか?

 まあ関係無い。

 まずはこいつでこの体の力試しだ。


「第3式1次終焉たる業火刀」


 そうして僕は右腕を刀をしてこいつの腕を切り裂いた。

 そいつがどんどん絶望の顔に染まっていくのを見て。

 思わず俺は笑ってしまった。

 そして次の瞬間俺は刀に力を込め、右上を向いて刀を振った。

 その途端地下から城が真っ二つになった。

 そうか、ここがこの体の主が捕まったところか。


「なあ、人間俺は魔王になりてえんだ。

勇者とか飽きた、そう人類に伝えろ。

そうすりゃ命だけは助けてやるよ、ははははは!」


「わかっ、た!」


 その人間は、恐怖で声を震わせながら僕から逃げていく。

 俺の目的もこの体の主と一致したな!


「魔王を殺して、俺が魔王になって、俺が人間を滅ぼす!」

「アル!?」


 その瞬間頭の中にに声が響いた。


 お前はここにいちゃいけねえ。

消えろ。

 そもそもお前はもう死んでいるはずの存在だ。

 この世にいちゃいけねえ。


 はは、今だけはお前に譲ってやる。

 だがな、俺は、人間、を、滅ぼ、す、、、


 また意識が乗っ取られる前に僕は、ティアを入っていた牢を自らの左手で持っていた刀でぶち壊した。

 そしてすぐさまティアの手を繋いだ。

 そうすると恨みを怒りも全てが引いていき浄化された。

 ようやく落ち着いた。

 あの僕の中にいた存在の意識がだんだん薄れていく。

 だが、消えることは無かった。


「今のは、僕じゃない。

何かが僕の体を乗っ取って意識を奪われたんだ。

頼む!信じてくれ!」


「うん、分かったよ。

アルがあんなことする人じゃないって昔から分かってたから。」


 しかも、僕の体を乗っ取ったやつのせいで人間の敵になっちまったじゃねーか!

 僕魔王になんかなりたくねーよ!

 でも、僕に先に攻撃してきたのはこいつらだし。

 それにそもそもの、僕の目的は世界を知ること。

 例の声の主ならなんでも知ってそうだったから、そのために勇者、名乗ってたんだよな。


 あいつと同じくらいなんでも知ってそうな魔王側に付くのもアリだな、、


「なあティア、僕たち人間滅ぼす宣言しちゃったし、世界を知るために魔王側につかない?

もちろん人は、殺さない隠密に。

な?」


「分かったよ、そうしよう。

ここにいても殺されそうだし、、、」


 だが、魔王のいるところの検討もつかない。

 だからあの親切にしてくれた村を拠点にすることを決め、このクソみたいな国を後にした。


 その後すぐに追ってが1人くらい来た。

 そいつは全身が黒ずくめの二刀流の男だった。


「おい、そこの帝都の兵士。俺は勇者だぞ。お前1人で太刀打ちできると思って入るのか?」


 その答えにそいつは無言を返し、僕の目の前から消えた。


「後ろ!!!」


 ティアがそう叫んだ途端そいつはもう僕の後ろに立っていた。

 なんだこいつは、何も見えなかった。

 ワープの魔法でもあるのだろうか?

 そして僕の左腕は切り落とされた。

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