第1話 『宿敵①』
ブォーン
街の音が聞こえる綺麗な街中。そんな光景をビル屋上を飛び越え、見下ろす形で目にしながら目的地へと向かう。進むこと約40分、ようやく目的地である、50階建てのビルが見えてきた……のだが、進めば進む程違和感が増していく。
「……『背人』、ストップ」
「わかりました!」
俺は50階建てのビルを背に、少し離れた場所にあるビルの屋上に座り込み、周りを警戒する。……この少しの違和感が任務を遂行できるかどうかの肝になることだろう。
「先輩、どうしました?」
「……『背人』、何か聞こえる?」
「…………」
『背人』は耳に両手をかざして目を瞑り、違和感を突き止めようとする。
────。
「……不自然なほど、何も聞こえないですね。……人の喋り声も、町の音も……」
「……了解。本部にこちらのミッションは順調だと報告する」
俺たちの任務は、相手国がギリギリの範囲で入手できる情報をばら撒き、
相手国の
「……先輩の情報を掴んだということは、
「……まぁ、そうなる」
はぁ、っと『背人』が大きな溜息をつくが、すぐさま殺意感じ取り戦闘態勢になる。
「……先輩とのイチャイチャ任務があいつらのせいで……ははっ!」
瞳に光を宿していない『背人』から逃げるように殺意を感じた方向へと首を動かす。するとそこには、白色のフードをかぶり、目元には鮮やかな装飾を施したマスク集団が近場のビル屋上から無数に俺たちへと銃口を向けていた。
奴らの名前は『聖軍』。清洋国直々のスパイ組織であり、世界で恐れられているスパイチームの一つだ。
「……どう料理してあげましょうか……」
「………………」
順調すぎて疑いだすレベルなのに加えて『背人』の発言。すごく怖いのですけど!?
「……今日はあの子と殺り合えるかな?」
「……私はあいつ嫌いなので来なくていいです」
「それだと本末転倒」
『背人』がゴミでも見るかのように顔を顰めている。
話を変え、気分を変えてほしかったのだが、どうやら逆効果のようだ。
「……落ち着いて、少し予定が早くなったけど…………やることは変わらない」
「……すみません。私としたことが、とり乱れました。」
深呼吸を行いゆっくり立ち上がる『背人』を横目に戦闘準備を行う。
…………さて、武器も持ったし、派手に暴れるとしますか!!
「……いくよ?」
「わかりました!」
深く、より深くフードを被り、俺たちは真っ向からビル(敵国がいる)に走り出した。
ドン!
俺たちが動き出した直後、スパイ共が銃弾に似たロケットランチャーを放つ。
(弾丸は俺の心臓めがけて放たれている。……なら!)
「……ふっ!」
俺は弾丸が飛んでくる位置を瞬時に計算し、弾丸と糸が擦れるような位置に糸を張り巡らせた。
シュバッ!
俺の狙い通りに弾丸と糸が擦れ、擦れた影響で弾丸の軌道が少し下にズレたところで俺はその弾丸目指して前進し、二センチ程度の弾丸を足場に敵国がいるビルに跳躍した。
ゴォォォ!!
後ろから弾丸の爆風が俺を襲うが、それも計算のうちであり、追い風にしながら勢いよく空中を舞う。
「こ、この!!」
俺の接近に合わせてスパイ共がアサルトライフルで発砲するが空中で体を捻り、綺麗に避けていく。『聖軍』との距離は約五十m。爆風を込みでギリギリ届く範囲である。
「……嘘だろ!! こ、この化け物め! 死ね!」
綺麗に着地した俺にスパイ共は驚愕していたが、流石はスパイといった様子ですぐさまアサルトライフルを捨て、ナイフを取り出し俺を殺しに接近してくる。だが!
「……糸使いに接近戦は無謀」
「「っ!?」」
俺が少し指を動かすと、ダイヤモンドの輝きを放つ糸が綺麗にスパイ共を拘束した。
「……妙な動きをすると手足が切断されるから、動かない方がいい」
スパイ共が拘束を逃れようとするため、俺は親切に警告する。何故なら糸はダイヤモンドでコーティングされているため、鉄すらも容易く切り裂いてしまうからだ。
「くっ!?」
俺の警告を聞いてすぐさまスパイ共の動きが止まる。その直後。
「ぐあぁぁぁ!!」
肉が切り裂ける音と、すぐそばで人が倒れる音が聞こえた。
「先輩! こっちは終わりました!」
顔に返り血をつけながら笑顔でこちらに手を振る彼女はもはや、一種のホラー映画のようだ。
「……一応聞いておくけど、殺してないよね?」
「当たり前です。先輩の顔に泥は濡れませんから!」
我ら帝国スパイの
「くっ……! お、お前らなんか! 我らが
「むしろ私はその
糸で身動き一つ取れない一人のスパイが、狂気じみた表情で俺を睨みつける。
「早く出せ」
「ぐっ! や、やめろ!」
退屈になった俺はスパイ共の横腹を軽く(常人では骨が一本や二本折れる程度)蹴り上げる。……なにこれ、芋虫みたいで楽しい……。
「……早く出てこないと、もっと酷い目に遭って貰うよ?」
近くにいるであろう
「……そこまでです」
「隠れんぼはもうおしまい?」
ライトアミボリー色のセミロングに優しい瞳。天使様と謳われる程の美しさを兼ね備えたスパイが不服そうに唇を尖らせている。
「好きでかくれんぼをしていたわけではありません。今日は私が勝たせていただきます!」
「貴方に勝ちは譲らない。今日も私が勝つ」
体が震えているのが自分でもわかる。久しぶりの殺し合いに体が興奮しているのだ。
「……早く殺り合おう」
「望むところです!」
俺は後ろで存在感を消している『背人』に指を小さく動かし、相手に気づかれないように指示を出す。それを見て『背人』はこくりと頷く。
さてさて、これで今回の任務の全てが片付く。後は……
◆◆◆
ここまで見てくださりありがとうごさいます。
最近の投稿頻度が腐っている原因がこちらの話でございます。
個人的には満足に文章を作成できたとは思えませんが、投稿を優先させていただきます。読みにくい箇所もありますが、ご容赦ください。
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