第3話 視点「空腹の空き巣」
二日前から何も食べていない。
が、それも今日で終わりだ。
セキュリティの万全な金持ちどものの一軒家ではなく、このオンボロアパートに目をつけたのは正解だった。
一階に住む二十代くらいの男は働き詰めのようで、ほとんど家を空けている。
だというのにこの夏の暑さを嫌ってかいつもアパートのベランダへつながるガラスの引き戸を開けて出ていくのだ。
このボロ屋の監視カメラは駐車場や正面玄関にいくつかあるくらいで、それすら稼働しているか怪しい。
これ以上ない好物件だった。
家主の男が早朝に出て行ったのを確認し、俺は洗濯物を干すための裏手に回る。今日もベランダの引き戸は開いていて、のぞいてもやはり人気はない。
予想通り一人暮らしのようだ。
俺はコンクリートの塀を乗り越えてベランダに降り立ち、引き戸を開けて堂々とリビングへ侵入。
早速物色し始めるも、金になりそうなものは見当たらない。
こんなボロい集合住宅に住んでいる時点でそんなことだろうとは思っていた。
お目当てはキッチンの食料だ。
腹ごしらえができればそれでいい。日持ちするものを中心にごっそり奪ってしまおう。
早速冷蔵庫の横に置かれたカップ麺入りの段ボール箱を見つけた。
冷蔵庫の中にもスルメなどの酒のつまみが入っている。
冷えていた方がうまいが、短時間持ち出したくらいで腐ったりはしないだろう。
これは忙しくなりそうだ。
「あれ、忘れ物?」
背後からかかる若い女の声に、背筋が凍る。
横目で振り返ると女子高生くらいの見た目の女がキッチンの入り口に立っていた。
隔てる距離は三、四メートルほどだろうか。
俺はダッと駆け出して一気に間合いを詰め、女子高生の口元を抑えこむ。
暴れたので背後の壁に押しつけ、右手のポケットから果物ナイフを取り出す。
「騒ぐなよ? 大声出したら殺すからな」
原石のように綺麗な茶色い瞳の前で刃物をちらつかせると、女子高生はうなずいて動きを止めた。
ゆっくりと口元から手を離し、逃げ出せないように左腕を女子高生の首に軽く押し込む。
右手でナイフをかかげたまま、俺は女子高生に問いかけた。
「お前、あの男の妹か何かか?」
女子高生は間の抜けた表情で首を横にふる。
「まぁいい。金はどこにある? 案内しろ」
一見大人しく従っているようだが、泥棒としての血が騒いでいる。
家主の男の部屋らしき場所に通されるも、その足取りは軽快で、表情にも怯えがない。
俺の存在に驚いてこそいるようだが、どこか余裕があった。
「部屋の奥に立ってろ。少しでも変な動きしたら殺すからな」
念のため果物ナイフを突き出して脅し、扉から遠い部屋の奥に立たせることにした。
部屋には窓があったので、扉からも窓からも遠い角の壁に立たせた。
「で? 金はどこにある」
尋ねると、女子高生は無言で勉強机の引き出しを指さした。
子供の頃から使っているのかかなり年季の入った勉強机で、引き出しの立て付けが悪くなってた。
思わず舌打ちをして、俺はナイフを女子高生の見える位置にチラつかせたまま引き出しを引っ張る。
勢いよく開いた引き出しからは預金通帳が出てきた。
当然金にはならない。
引き出した途端すぐに足がついてゲームセットだ。
「こういうのじゃない。指輪とか、現金とか、そういうのはないのかよ」
苛立ちを隠せず、頭を掻き毟りながら問いただす。
信じられないことに、女子高生はニタニタ笑っていた。
「何がおかしい?」
果物ナイフを光らせて見せても、女子高生はヘラヘラしたまま笑みを絶やさない。他に金目のものがないようなら犯してやろう。
いや、こんな狭いおんぼろのアパートだ。さっきも一通り見たが、金目のものなんかなかった。
家主は夜まで帰ってこないし、今ここで犯そう。
抑えられない怒りを、男を舐め切ったこの女にぶつけてわからせてやるのは気持ちよさそうだ。想像しただけで下腹部が熱く窮屈になった。
ナイフを向けたまま女子高生に迫り、空いている左手で胸を鷲掴みにして壁に押し付けた。
ドンと女子高生の背中が壁にぶつかってにぶい音を立てる。
さすがに余裕の表情が崩れ、嫌悪と軽蔑の眼差しに変わる。
その過程を至近距離で見れたただけで、この家を狙ったのは正解だ。
「お楽しみはこれからだ」
鷲掴んでもほとんど感触がないので、シャツの裾から手を入れてブラの隙間に指を差し入れ、爪の先で乳首をいじる。
その感触に夢中になりそうだったが、右手に持った果物ナイフを女子高生の首に突き立てることも忘れない。
「小さい胸だな」
目を合わせてあからさまに侮辱しても、女子高生に応えた様子はない。
ゴミをみるような視線もなくなり、今は無表情になっていた。
何を考えているのかまるでわからない女だ。強がっている風でもない。
薄い胸をいじり倒していても仕方がないので、俺は左手をシャツの中の素肌の腹の上ですべらせ、ショートパンツの上から鼠蹊部をなぞった。
ぴくりと体を震わせる女子高生。
さすがにこれを無反応で決め込むことはできなかったようだ。
「ははっ、どうだい? 馬鹿にしてた男に犯される気分は」
ショートパンツをずり下げると、白い薄手の下着が露出した。
汗ばんだ下着は湿っていて、鼠蹊部の谷間を布の上からなぞってやると少しぬるぬるとしていた。
「いいよ、別に」
「は?」
下着に釘付けになっていた視線を引き上げ、女子高生の顔を凝視する。
さっきまでのようにヘラヘラと笑っていた。
「何考えてんだ、マジで」
「別に、何も」
言いながら自分から身を寄せてきて、女子高生は俺の唇を奪った。
「するならしようよ」
ニタリと笑う女子高生。
自分が優位に立っているつもりらしい。
壊しがいのある笑顔だ。
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