第7話

「おい……マジかよ……」


 県予選当日。現地集合でクロウを出迎えた恭弥は絶句した。

 急遽電話で遅れると連絡があったものだから何事かと思ったが、想像以上に大惨事だった。恭弥はクロウの左手に巻かれた包帯を凝視する。


「ホント困ったよ。いきなりおばあさんがバランスを崩して倒れるもんだから」


 どうやら、駅の階段で転がってきたおばあさんを受け止めようとして手を痛めたらしい。動かせるが、痛みで動作が遅れるだろうとのことだった。


「でも今回で良かったな」

「どうして?」

「これが本選だったら、あいつらに報復できないだろ?」

「……私がこの状況でも、予選は通過できると?」

「当たり前だ。ここで躓いてたら、優勝はほど遠い」

「頼もしいね」


 だが、恭弥の言うとおりだ。この県は前回の大会で一回戦負けを果たしている。しかも対戦相手は二回戦負け。つまり、県の中では下から数えた方が早い順位であるのだ。予選で手こずっているようではとてもじゃないが本選で敵うはずもない。


「でも、ルール変更でチームの実力は変わっている。気は緩められないよ」


 受付へ行くとクロウが登録を済ませる。

 恭弥はガラケーしか持っておらず、カフェ以外ではネットに繋がれないため大会の手続きは全て彼女が行っていた。


「チーム『CoW』ってどういう意味だ?」

「通称『Cry of Weaker』。弱者達の叫び。格好良くない?」

「そういうことか。てっきり牛かと思った」

「牛? 何が?」

「CoWだよ。日本語で牛って意味」

「あー。そうとも言うねー」

「知らないのか? 中学一年で習うぞ?」

「うるさいな。常用語以外は忘れた。まあ、闘牛ってことで」

「適当だな」


 受付を終え、二人はそのまま会場へと足を運ぶ。大会が始まるまでは会場にいるプレイヤーの様子を伺うことにした。

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