第5話

 全ての人民が帰った後に新たな人影。

 唯一の家族は酷くつまらなそうに言葉を吐き捨てる。



「その気になれば本当に革命出来たかもしれませんよ」

「良いも悪いもないだろう。全ては過去。終わったことだよ」



 10年前にリボー皇国は既に滅んだ。

 民主化を望んだ人民たちによって打破された。

 国も宗教も文化も全て書き換えられた。

 それが事実。それだけが真実。

 亡くなった者は生き返らない。進んだ針は巻き戻せない。

 ならば何を願ったところで意味はない。



「……ホント勝手よね」

「国民なんてものはそういうモノだよ。私もエリスも不平不満は言うだろう」

「それはそうだけれどさ」



 国民なんてものは勝手だ。

 自分に都合の良いことしか考えていない。


 裕福なのは当たり前で不都合は全て王侯貴族の怠慢の所為。

 改善できないのであれば殺してしまえが平民というもの。



「それに、そのおかげでこうして皇族の身分を捨てられたのだから善しとしようよ」



 幸い、私たちは呪いでしかない役割を捨てることが出来た。


 なんてったって私が皇子として生まれた国は既に滅んだのだから。


 その後に出来た国が簡単に滅んだとか知らない。

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