第11話 波
遠い水平線の向こうから
この砂浜へと
幾つもの波が辿り着いては消えていった。
月の明るさも届かない圧倒的な闇の向こうに
水平線はどこまでもあって
波はそのまた向こうからやってくる。
ただ、この浜辺の砂の上に消えていくために。
頭の遥か上で 風が椰子の葉を鳴らしている。
心の窓を揺らすのは
風の音なのか
波の響きなのか
どちらにしても
それは僕らが生まれるよりずっと
ずっと前の
この星の鼓動に似た音楽なんだろう。
君と出会ったのはいくつ前の夏だったかな。
それとも、この夏のはじめだったかな。
とてもよく知っているようなのに
考えてみたら、僕は君の名前を知らない。
頬にかかる夜の風は
昼間の熱をまだ孕んでいる。
腕にふれる
君の指先だけが少しひんやりしてる。
このまま波の音に揺られて
歩いていこうか。
いつまでも覚めない夢のように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます