番外:I・E前史【黄金と暗黒の世紀】
*****
およそ四半世紀前、全世界が
人と同等もしくはそれ以上の能力を持つ人工知能やロボット、宇宙と地球を繋ぐ軌道エレベータ、現実空間を電脳上に再現し活用するデジタルツイン、現実と同等以上に感じられる
人を
突如として起こった地磁気の異常低下。それに伴い、銀河の風から地球生命を護る不可視の
未曽有の極限状態は世界中の火種を燃え上がらせ、紛争や政情不安が勃発。連鎖的に第三次大戦へと突入した。自律あるいは遠隔操作されたロボットが戦線を闊歩し、軌道エレベータは衛星兵器に物資を運搬。作戦はデジタルツインで立案・コントロールされ、仮想現実は兵器の遠隔操作や戦闘のゲーム的演出(戦意高揚・プロパガンダ)に使われる。覚めることのない、悪夢のような暗黒期。出口の見えない争いは五年を越え、人々は眠れない夜に疲弊し、深い絶望に打ちひしがれた。
そんなある時、世界に転機が訪れる。地球の護りを取り戻す【装置】の開発が進めらているという報せだった。
現在名称:【
絶望は一転して希望に。しかし、状況は甘くなく。天蓋の情報は戦争被害を抑えるため、飛ばし記事として公表されたものであり、完成には数年かかるとされた。開発国も当然ながら開発人員・物資両面で疲弊している上、大戦で軌道エレベータ全てが破損している状況である。
希望は見えたが、すがれはしない。そうなってようやく、人類は銃を置いて手を取り合った。全戦闘の停止と、開発に関わる国際協力体制の確立。国の垣根を超え、あらゆるリソースを天蓋及び起動エレベータ開発へと集中。数年かかるとされた開発工程は、わずか一年でその全てを完了した。
こうして人類は、未だ揺籃の中であるところを知り、遠くラグランジュ点に配した人工のヴェールに自立の痛みを感じながら、ひとときの微睡みを過ごすのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます