第十四話 二番目のオムツ時代

 ルミナの人生で、オムツを汚さなかった日というのは1割ぐらいしかない。

 昼のオムツが外れていた、オネショだけの期間で計測すれば、だいたい4割ぐらいにまで増える。


 言うまでもなく、健康な者としては、明らかに長過ぎる。



 だがそんなルミナの、最初のおむつ外れ自体はかなり早い方であった。

 昼間のおむつは1歳ちょっと。

 夜のおむつも、それから間もなく外れた。


 それに、まわりに気遣いもできるしっかりした子だった。

 歩き始めたのだって相当に早い。

 他の子がオモラシしたら、おむつ替えを積極的に手伝う程に、早く外れたのは誇りだったようだ。


 そんなルミナがまたオネショするようになったのは、だいたい3歳頃。

 同年代のお友達のオムツが全員外れきった頃に、入れ替わるようにオネショが再発した。

 お姉さん顔をしていたルミナは、これで引きこもってしまったのだった。



 城の医師団も異常を確認できず、心因性のものである可能性が高いと判断された。

 ルミナで心因性のオネショとなれば、原因は勇者の使命ぐらいしかなかった。


 オムツ外れが早かった事を誇りにしていたことも有り、夜だけであってもなかなかオムツを当てようとはしなかった。

 そのため、遂には母親の手で半ば強引にオムツを着用させられる羽目になった。


 この、寝る前に母親の手でオムツを当ててもらうという恥ずかしい習慣が、まさか十年以上も続くとは、誰にも予想できなかった。



 しかし考えてみれば当然でもある。


 誰もが恐ろしさを語る魔王の討伐の宿命。

 そんな話を3歳児が聞けば、こうもなってしまうのかもしれない。



 だが、ルミナが討伐に行くという大前提は、オネショ程度では変わらなかった。

 兵士たちにまじり、日々訓練。


 多くの女児たちがおままごとに興じている時に、ルミナは剣を振るっていたのであった。

 実力は目に見えて上昇し、同年代と戦えば敵なし。

 大人が相手でも、十分に相手ができた。12歳になる頃には、国一番と言って差し支えなくなっていた。



 たしかに怖い。恐ろしい。

 でも人々に平和をもたらせるのが自分しか居ない、という正義感はたしかにあった。

 だからこそ、大の大人に剣で挑み、強くなれた。



 

 そのルミナのオモラシが再発したのは、7歳ぐらい。

 場内で訓練中に嵐が着て、帰宅出来なかった時であった。



 城にいつもより長く居た分だけ、長く訓練した。

 結果、食事中に寝落ちしてしまい、そこでオネショしてしまったのであった。


 幸い目撃者は最低限で済んだのだが、その中に城でメイドとして働く、同年代の子の母親が含まれていたのだった。

 この日を境に、剣の基本戦術が変化し始めた。

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