第十一話 替えられたい
(やっぱり……オモラシの量……? 時間?
どっちにしても……悪化してる……)
街を出て数日。
最初は聖水を服用していたので、何度も替えるのは手間だし旅も遅くなるという悪循環に悩んでいた。
だがその服用を辞めたことで、オモラシには気づかないが戦闘の邪魔が無くなり不快も消えていた。
一点利点が多いように思えたそれは、もしかしたら罠だったのかもしれない。
辞めた翌日には異常を感じ、念のため1枚足した。
そして懸念は当たり、一枚足したのは正解だったと実感があった。
もう聖水は捨ててしまっており、手持ちはない。
今日、恐れていた事態に見舞われたのである。
もうおむつカバーは、これ以上の布おむつを受け入れられそうにはない……
(街を出たのは、失敗だったかな)
オムツ替えのたびに、こう考えてしまう。
乾いていない、街を出た時は白だった布おむつを重ね準備する。
先日川を渡ったのでついでに洗えたが、そんな何本も有るものではない。
(気持ち悪い……)
さっきまでの洪水状態だったオムツと比べればマシだが、乾燥したものには当然劣る。
何十枚も干しながらの移動など出来るわけもなく、絞るぐらいしか出来ないのだ。
だがそれでも、いわゆるお土産状態を絞って再利用よりは遥かにいいのだ。
それと比べれば、洗われてるだけまだいい。
本当なら、もう次の街についているはずなのに、オモラシによって大幅な遅延が生じている。
そのせいで、二度使わないはずのオムツを三度も四度も使っているのである。
先程まで当てられていたオムツを、固く絞る。
(街だったら、シスターに替えてもらえたのに)
―――――ゾクッ
自分に激しい嫌悪と恐怖を感じた。
愚痴感覚で考えるオムツへの不満は日頃からさんざんしている。
だが、オムツそのものでなく、その世話をする人が自分だという点に対してのものは、今のが初めてだった。
(何を考えているの……早く、この変な呪いを解かないと……)
しかし、この心の中に芽生えたその思いは確実に育っていった。
久々で間隔が空いたとはいえ、十年以上オムツを当て続けた身。
そのオムツも、ほぼ常に自分で替えていた。
誰かにやってもらうというのは、本当に幼少以来だった。
遠い昔の記憶をたぐり寄せながらもオムツの片付けを終え、再び歩き出す。
ふと、指を加えている事に気づいた。
(やだ……汚い……)
先程、オシッコでびしょ濡れだったオムツを絞った手である。
だがこれ以降、癖として度々、指を咥える癖がついてしまった。
その度に、心はゆっくりと歪んでいった。
先程当て替えた、乾いていないことで気持ち悪いと感じていたオムツは、もうなんとも感じない。
水分量だって増えているのに。
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