第三話 凱旋と、オモラシの呪い?

「魔王め……何と卑劣な置き土産を」


 魔王を討伐し、荷物を回収して数日が経過した。

 今は王城へ報告のための帰還の最中である。

 


 あのオモラシは、戦いを終えた安堵によるものではないと理解した。

 してしまっていた。



 あれから、まったく尿意を自覚できなくなっていた。

 というより、オモラシに気づけなくなってしまった。


 ……いや、それも不正確か。

 


 漏らして、水音や匂いが漂って、それでようやく気付く――かもしれない。

 出している最中や、それでズボンや靴が濡れるだけでは知覚できない……という状態になったのだ。

 意識して定期的に下半身を確認しなければならない。


「最寄りの街の教会……そこでなら……」

 


 魔法も薬も、何一つ現状を打開しなかった。

 自力ではどうにも出来ない。


 となると、この手のことは聖職者に頼る他は無い。


 まずは、最後に補給をした、魔王軍との戦いの最前線の街……「イブライン」を目指すこととなる。




 魔王を倒した。目標を達成した。

 その姿は、世界を救うという、偉業をなした胸を張れる姿ではなかった。




 ルミナにとっての長い旅は、今から始まるのだった。

 魔王討伐の報告をするための、屈辱にまみれた旅。


 それは、魔王軍を相手にする何倍も辛いものとなった。

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