第二話 倒した実感と、漏れる実感

「はぁっ、はぁっ……や、やったのか……?」

 

 呼吸を整えながら、ルミナは疑問を投げかける。

 だが、この場には、もう自分しか居ない。

 

「魔王を倒したのか……?」

 

 世界を支配しようとしていた魔王を倒した事に実感が湧いてこない。

 だが、主の居ない巨大な玉座を前に、次第と実感を帯びていく。

 

「そうか……私はついに……ついに魔王を倒したんだな……」

 

 張り巡らせていた気が緩み、ついへなへなとへたり込む。

 

 

 


 だが、気がかりな事があった。


 ここまでの激戦に反し、魔王自体との戦いは、楽ではなかったが……これが最後の戦いなのかと酷く違和感があった。

 そして、最後に放たれた黒いなにか。

 

 ルミナが思案に耽っていると……仄かに漂うアンモニア臭。

 



「……え?」


 ふと下を見ると、水たまりが出来ていた。

 ―――違う、今まさに作られている最中だった。


 剣を放り出し、とっさに股間を抑えた。


 流れている。尿道に激流が走っている。

 その事実に、水たまりがこれほどまでに広がって作ってようやく気づいた。


「どうして……とまってよ!」


 必死に止めようとしているのだが一向に水の流れは止まらない。


「お願い……止まって……よ」









 放流が終わり、立ち上がる。

 魔王は、間違いなく消えている。


 だが、水たまりは、しっかりとその場に残っていた。


「おもらしなんて……いつ以来……」


 その「いつ」を思い出し、赤い顔を更に赤らめた。



 立ち上がると、ズボンが自分のしたことを物語っていた。

 先程まで自分が成した、魔王討伐の目標がきれいに消えているのに、このみっともない仕出かしは残っている。


「……気持ち悪い……」



 だが、戦いの邪魔になるからと、着替えなどの戦いに必要ない荷物は、魔王城の外に隠して置いてきた。

 その場所までは、このまま戻るしか無い。






 その不快が、予想の何倍も早くに消えるのは予想外であったが……

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