200話 図書室と保健室
今日は図書委員会初めての集まりの日。
全学年の図書委員会が集まって今年度最初の会議をするそうだ。
そこで何を担当するのか、そしてカウンター当番のスケジュールも決まる。
俺は漫画以外に小説など読んだことはない。
なので、図書委員に興味があるといえばないといえるだろう。
ただ、今回初めての委員会ということで、何か興味を持てることが増えれば良いなとも思っていた。
「――千歳さんよろしくね」
「は、はい……九藤、くん……」
帰りのホームルーム後、俺は千歳さんに声をかけ、一緒に図書委員の会議が行われる図書室へと向かっていた。
――千歳あせび。
彼女は俺より先に図書委員に決まっていた女子生徒。
前髪が重く目が隠れていて全く見えない。背丈は深月と同じくらいで猫背気味の姿勢だ。
少し暗い印象を持っているのだが、まだ彼女についてはほとんど知らない。
「千歳さんは本が好きなの?」
自分で図書委員になったくらいだ。そんな質問を投げかけてみた。
「一応……前も図書委員してて」
ちゃんと受け答えをしてくれることから、話すのは嫌ではないと感じた。
話すことが嫌であれば、無言だったり一緒に向かったりはしないだろう。
「俺、委員会初めてだからさ、わからないことは教えてもらえたら嬉しい」
「わかりました……私なんかでよければ」
千歳さんは良い子のようだ。
とりあえず前期はなんとかやっていけそうな気がした。
◇ ◇ ◇
図書室に入ると、そこに広がっていたのは巨大な空間だった。
生徒数もさながら、秋皇はこういった場所も大きいのだろう。
複数の棚が壁際にずらっと並んでおり、机の数も多い。
恐らく普段からもこの場所を勉強をする場として使う生徒も多いのだと感じた。
また、少し見渡すと漫画やラノベと書かれた札を見つけた。
なんとこの学校には娯楽のような書籍も複数置かれているようだった。
となれば普段はここに立ち入らない生徒も漫画目当てに訪れたりもするのだろう。
そうして、図書委員と思われる人たちが座っていた大きな机へと俺たちも腰を下ろし、時間になると会議が始まった。
議題はもちろん前期のスケジュールや担当決め、新入生に対しては新刊が入荷した時の対応などを教えてもらった。
俺と千歳さんのカウンター当番のスケジュールも決まった。
俺たちの担当は毎週月曜日の昼休みの時間となった。もちろんその間、弁当を持ち込んで食べても良いらしい。
カウンター当番は、一ヶ月毎に変わるようで今月は新入生が入ってきたということで、新入生が担当することになった。
◇ ◇ ◇
そうして翌週の月曜日の昼休み。
初めてのカウンター当番の時間になった。
俺は弁当を持って千歳さんと一緒に図書室へと向かうと、受付カウンターの内側の椅子へと座り、本を借りたい人、返す人の対応をすることになる。
カウンターにしばらく座っていると、続々と図書室へと売店で買った食べ物や弁当箱を持った生徒が入ってくるのが見えた。
やはりこの場所は昼食を取る場所としても重宝されているのだと理解した。
「あ、あの……九藤くん」
「千歳さん、どうした?」
弁当を食べながら、千歳さんが俺に話しかけてきた。
何かが気になったようだ。
「あ、あの……あれ……」
千歳さんが、図書室の中のある机に向かって指を差す。
「あ……あぁ」
俺がその指先に視線を向けるとすぐにその意味がわかった。
「あれって、宝条さんですよね……?」
「そう、だね……」
千歳さんが指差した先にいたのは、なんとルーシー。
ルーシーが豪勢な弁当箱を広げて食事をしながらちらちらとこちらを見ていたのだ。
そして、なぜか眼鏡のようなものをしていた。もしかして変装しているつもりなのだろうか。
しかもルーシー一人で真空たちはいない。一緒に昼食を食べると思っていたのだがそうではないのだろうか。
「九藤くんは宝条さんたちと仲が良いんだよね?」
「うん。ちょっと縁があってね」
怪しい眼鏡姿のルーシーを遠目に、俺は千歳さんと話を進めた。
「すごい綺麗な人だよね……なんだか同じクラスにいるのが夢みたいに思う」
そこまで言わせるルーシーの存在感。
眼鏡で変装したくらいでは隠しきれない。せめてカツラでも被って髪色くらいは変えて欲しいものだ。
「男子は皆このクラスで良かったなんてこと言ってる。ルーシーのことだけじゃないと思うけどね」
「私がもっと日陰者になる……望んではいたことだけど」
「そうなの?」
「元々暗いから……気にされなくて済みます」
「それにしては俺と普通に話してくれるよね」
人との交流を持ちたくない人は、普通はここまで会話しないのではないだろうか。
千歳さんの場合、質問したら返してくれるし、千歳さんから話したりもしてくれる。
なら、本当は人と話したいのではないだろうか。
「九藤くんはなんだか話しやすそうというか、あの中でも私よりの人物というか……いや、そんな変な意味じゃなくてっ……ご、ごめなさい」
「謝らないで良いよ。昔から顔がぱっとしないとか言われるから」
「でもそんな人でも受験トップの成績……やっぱり私とは住む世界が違う……」
「勉強は関係ないでしょ。というかマイクに頭ぶつけたし、バカみたいなことしちゃうんだから」
「…………でゅふふっ。あれは確かに……」
こういってはなんだが、少し気持ち悪い笑い方をした千歳さん。
でも、俺との会話で笑ってくれたのは嬉しい。
「あ……」
和気あいあいと話していたところ、ふとルーシーの方へと視線を戻してみた。
するとルーシーがこちらをものすごい形相で凝視していた。
「わ、私が九藤くんと話したからですよね……ごめんなさい」
「大丈夫だよ。あぁ見えてルーシーは優しいから」
ルーシーも嫉妬するようなことがあるのかな。
しずはに対してはそこまで嫉妬している感情はないようだけど。
そんなこんなで、ルーシーが一人図書室でご飯を食べながら、カウンターの方をちらちら見てくるといったイベントを過ごし、昼休みが終わりに近づく。
そんな予鈴が鳴った時だった。
「じゃあ戻ろうか」
「はい」
誰もいなくなった図書室。教室に戻ろうと千歳さんに声をかけた。
「うわっ!?」
「えっ!?」
座っていた椅子のキャスター部分に足を引っ掛けてしまい、千歳さんに覆い被さるようにして倒れてしまった。
「千歳さん、ごめん……」
「ん……」
押し倒してしまった千歳さんに謝罪する。
すると、前髪で全く見えていなかった千歳さんの目が露わになっていた。
「あれ……」
「あっ、あっ、見ないでくださいっ!?」
「あ、ごめん」
「い、いえ……」
千歳さんが隠していた目は、とても女の子らしくぱっちり二重でまつ毛も長い。いわゆる綺麗と言っても差し支えないような素敵な瞳を持っていた。
なぜ隠しているんだろうと思うほどだった。
もし前髪を隠さずちゃんと髪を整えたら、美少女だと言っても差し支えない見た目を持っている気がした。
起き上がり、二人とも制服についた埃を払うと二人とも図書室を出た。
教室までの帰路、千歳さんに目を隠している理由は聞かなかった。
◇ ◇ ◇
――その日の六時間目だった。
昼食も食べて眠気が迫って来た頃の体育の授業。
その眠気が悪かったのかもしれない。
授業でバスケをしていたところ、俺がよそ見をしていたせいかボールが頭に激突。
そのまま地面に倒れ込み地面にも頭を激突。ダブルパンチを食らったことで俺は意識を失った。
そして、目覚めたのは知らない天井だった。
「うい〜。起きたかぁ」
保健室と思われる場所なのにタバコ……いやキャンディーを口に咥えていた養護教諭と思われる人物が、横になっていた俺に声をかけた。
体――特に胸のラインが強調されるタートルネックニットにタイトなスカート。そのしたには黒いタイツを履いていた。
彼女は回転式の椅子に座りながらくるっとお尻を振って椅子をこちらに向けた。
向けると同時に、足を組んだスカートの隙間から何かがが顔を覗かせるも見えるまでには至らなかった。
「うっ……いた……」
起き上がって動こうとしたのだが、頭に痛みが走った。
結構な勢いでボールと地面に激突したらしい。
「頭打ってるみたいだからもうちょっと休んできなぁ〜」
軽音部の顧問である纏衣ちゃんと同じくクールな印象の顔なのだが、どこかだらけたような印象の先生。
ただ、纏衣ちゃんとは違って髪がショートカットだった。
「はい……」
「今は六時間目終わったばっかだから、君のクラスメイトがホームルーム後に荷物持ってきてくれると思うぞぉ」
ということだ。
しばらく寝ていることにしよう。
「そういえば、先生の名前なんですか?」
「私かぁ?
「ま、まちこちゃん……」
「いやん」
「なんで!?」
「年下にちゃん付けで呼ばれるのって最高じゃないかぁ?」
「まちこ先生で」
この先生変態だ。
纒衣ちゃんのようにちゃん付けで呼ばないほうが良い気がする。
「とりあえず面倒見てくれてありがとうございます。少し寝ますね」
「はいはーい。おやすみぃ」
俺は体の力を抜いて、目を閉じた。
◇ ◇ ◇
少し時間は遡る。
「光流〜!? 大丈夫か!?」
仕切りネットの向こう側、冬矢くんの声が聞こえた。
「男子の方どうしたんだろう……って、光流!?」
少し遠目で見えたのは、倒れている光流がクラスメイトに囲まれている姿。
一瞬、ドキッとした。
大勢の生徒がいるこの学校でもおそらく腎臓が片方しかない生徒は私たちだけ。
ハンデは背負っているけど日常生活には問題ない。
光流からは体の調子は良いし定期的にしている検査も問題ないと聞いていた。
でも、何かの拍子に……なんてこともあるかもしれないと頭の中にあった。
それは光流だけではなく私も。
「光流っ!」
「ルーシー!?」
ちょうど試合を回してバレーの休憩中だった私は、仕切りネットを越えて光流の元へと駆け寄った。
真空が私の名前を呼んでいたものの、気にせず飛び出した。
…………
「冬矢くんっ! 光流大丈夫!?」
「あぁ、ルーシーちゃんか。頭にボール当たって倒れただけだ。多分大丈夫」
駆け寄った時、光流はぐったりと倒れていて冬矢くんが軽く頭を支えていた。
腎臓が原因でないとわかって少しだけ安心した。
「うお、宝条さんだ」「えっ、宝条さん!?」
すると私が一人で光流の心配をしにきたことに驚いたのか、クラスメイトの男子が声を上げた。
「ルーシーちゃん、光流は任せとけ。女子はまだ体育の授業あるだろ? 俺が保健室まで連れて行くから」
「わかった! じゃあ任せるね……!」
私はすぐに仕切りネットを越えて女子が体育をしている方へと戻った。
「光流くんどうだった?」
「ボールが当たって気絶したみたい」
「そうなんだ。ならあとで保健室にお見舞い行かなきゃね」
「うん。放課後に」
そんな話を真空として、再びバレーの試合を再会した。
「――ふーん。そういうこと」
どこかでそんな声が聞こえた気がした。
◇ ◇ ◇
放課後、真空と二人で保健室へと向かった。
冬矢くんから光流の荷物を預かって、保健室に入るとそこには大人っぽい先生がいた。
胸が強調されたニットを見て、真空より大きいと一瞬で判断できた。
先生に誘導されてカーテンで仕切られたベッドに向かうと、光流が気持ちよさそうに寝息を立てて寝ていた。
「ルーシーは少し一緒にいてあげなよ。私は先に部室行ってるからさ」
「そう? じゃあそうさせてもらおうかな」
真空の計らいで私は少しここに残ることにした。
「君〜、私はちょっとここ出るから。少ししたら戻ってくる」
「あ、はいっ!」
カーテン越しに返事をすると先生はどこかへ出掛けてしまった。
「光流、頭大丈夫かな……」
そんなことを呟きながら、私は彼の頭を撫でるように軽く手を置いた。
「なんか光流見てたら私も眠くなってきた」
食後と体育での体の疲れが同時に来たのか、眠気に襲われた。
「少しなら良いよね……」
私はブレザーを脱ぐと、こっそり光流が眠る保健室のベッドへと潜り込んだ。
光流の方に顔を向けると、彼の半身から体温を感じる。
「ここが学校だなんて忘れちゃいそう……」
「…………」
光流の体温を感じているうちに、私はいつの間にか眠りに落ちた。
◇ ◇ ◇
「光流〜? 起きてるー?」
ルーシーがお見舞いに行ったというので、私も少し遅れて光流の様子を見に行くことにした。
ちーちゃんは部活には結局入っていないので、開渡との用事がなければいつもフリーだ。
なので、ちーちゃんと深月も引き連れて保健室を訪れたのだが……
「わおっ。進んでるねぇ」
「いかがわしいっ」
「…………」
ベッドで眠る光流の隣にはルーシーが眠っていた。
不思議と怒りが込み上げなかったのだが、羨ましいとは思った。
「二人とも先帰ってて良いよ」
パシャパシャとスマホを掲げて二人の写真を撮影していたちーちゃんを横目に私はそう言った。
「あんた何するつもりなのよ」
「いいでしょ、なんでも。今しかできないかもしれないんだから」
「しーちゃん、まさか……」
私はルーシーがいる方向とは逆方向に回った。
「おやすみなさい」
ローファーを脱いでブレザーも脱ぐとそのまま毛布を上げて私はルーシーとは逆側に潜り込んだ。
「大胆すぎるでしょ……」
「色ボケが過ぎる」
二人の呆れた顔を他所に光流の暖かい体温を感じた。
「ほら、早く行きなよ」
「はいはい」
「帰ったらちゃんとピアノやりなさいよ」
二人がそう言うとカーテンを開けて保健室から出て行った。
いつ以来だろう。こんな感触は。
光流の左腕を抱え込み、自分の胸が当たるようにして彼にくっついた。
ルーシーはもう何度も光流とこういうことをしているのだろうか。
私にはそんな機会はほとんどない。なら、数少ない機会を勝手に使わせてもらう。
「ルーシーも私もいるのに起きないとか、本当にぐっすりなんだね」
光流の横顔を眺めながら優しく呟いた。
「なんだか私も眠くなってきた……」
ルーシーすらもぐっすり寝ていたので、私もつられて眠くなってしまった。
だから目を閉じたのだが、いつの間にかすぐに眠りに落ちてしまった。
いつ以来だろう。こんな感触は。
光流の左腕を抱え込み、自分の胸が当たるようにして横になった。
◇ ◇ ◇
なんだか温かい。そして、柔らかい。
そういえば、倒れて運ばれて保健室で寝ていたんだっけ。
どのくらい眠っただろうか。
まだ意識がぼんやりとしていてよくわからない。
「ん…………」
少しだけ体に力を入れて寝返りを打とうとしたのだが、なぜか打てなかった。
「「ん……」」
動こうとすると、俺ではない声が二重に聞こえた。
温かさと柔らかさを感じていたが、よく思えばとても良い匂いにも包まれている気がした。
だからこんなにもぐっすりと眠れたのだろうか。
瞼を少しだけ開けると、天井が見えた。
まだ外は明るいのか、カーテン越しに外の光が入ってきている。
そして視線を横に向けてみた。
「――――へ?」
ルーシーがいた。
どういうことなのか理解が追いつかなかった。
右腕が温かい理由はこれだったのだ。
そして、左腕も温かかった。
だから俺は左側に視線を向けた。
「しずはっ!?」
なんと左側にはしずはがいて、ルーシーと同じように俺の左腕に絡まって寝ていた。
「「んん…………」」
すると、二人同時に覚醒したのか、眠たそうにゆっくりと目を開いた。
「おはよう」
「おはよう光流」
俺が起きたことに気づかれたのか、挨拶をくれた。
「お、おはよう……」
「え……?」
そして、俺も挨拶を返したのだが、ルーシーが違和感に気づいた。
「し、しずはっ!?」
「なによ。勝手にベッドに潜り込んで。いやらしい女ね」
「そ、そういうわけじゃ! というかしずはだって潜り込んでるじゃんっ!」
「先にあんたが寝てたからでしょ」
「だからって……!」
「良いから良いから。私まだ眠たいからもう少し寝よ? ね、光流」
ルーシーはしずはがいるとは思っておらず、それに驚いたようだった。
そしてしずははまだ寝ようと言い出す。
二人共まだ俺の両腕を離してはいなかった。
「…………私ももうちょっと寝ようかな」
「ルーシー!?」
しずはの言葉に乗って、再び寝ようとするルーシー。
俺は未だに起き上がることすらできていなかった。
そんな時だった。
シャーっとカーテンが開いた。
「……私もこのベッドは使ったことはあるがまさか3Pとは近頃の学生は進んでいるなぁ。じゃあ私は三十分くらいタバコ吸ってくるから早く済ませろよぉ」
そう言うとまちこ先生が再びカーテンを閉めて、どこかに行こうとする。
「まちこ先生〜〜っ!?」
バタンと扉が閉まる音がした。
「あと十分で良いから。少し部活に遅れても大丈夫。光流は怪我してるんだから」
「私の貴重な時間を使ってあげてるんだから我慢しなさい。とりあえず光流こっち向いて」
「どういうこと!?」
するとしずはがルーシーの腕を振り払い強引に向かい合わせにした。
しずはの美しい顔が吐息がかかるほど近くなり、かなり危険な距離だった。
「しずはずるいっ!」
「あんたはその乳でも押し付けてなさいよ」
「えっ!? 光流はそれで喜ぶ……?」
ルーシーは俺にそう聞いてきながらもぴったりと背中に胸を押し付けてきた。
「ル、ルーシー!?」
「ルーシーは良いから。光流こっち見てよ。もう……キスできちゃう距離だね」
うるうるとした目でしずはの顔が近づいてくる。
「キスはだめ〜っ!」
すると背中にくっつくことに満足していたはずのルーシーが俺としずはの顔の間に右手を差し込んだ。
そのまま俺の口を押さえたのだ。
「んぐっ……! いきっ! で……ないっ!!」
ルーシーが口を押さえたことによって俺は息ができなくなっていた。
なんとか手の隙間から息を吸ってはいるもののかなり息苦しい。
「寝れないっ! 寝るんじゃないの!?」
俺はなんとかルーシーの手を剥がして、当初の二人の目的を言い放つ。
目的は寝るはずだったのに、もうその目的のことは忘れている二人。
「ごめん光流ぅ」
「しょうがないかぁ」
ルーシーもしずはもわかってくれたようだった。
しずはの顔が目の前になると寝ようにも寝られないので、俺は再び仰向けになり天井を向いた。
「本当に寝るんならちゃんと寝てね」
「「はーい」」
二人一緒に返事をした。
そして、今度は腕に絡まってくるようなことはなかった。
ただ、二人共俺の両手を恋人繋ぎで握っていた。
しずはとなんて初めてこんなことをしたというのに、俺はどうしろと言うんだ。
「――そういえば、先生が行ってた3Pってどういう意味?」
「ブフォ!?」
ルーシーが突然無知識な事を言ってきた。
真空にはまだ教わっていなかったらしい。
「へぇ。ルーシーまだ知らないんだ。おっくれってるぅ」
いや、お前は知ってるのかよ。いつ知識つけたんだよ……。
「しずはは知ってるの? どういう意味なの?」
「こ、こんなところで言えるわけないでしょ!」
そこは恥ずかしいのか。
「ルーシー。あとで真空にでも聞いてみなよ……」
「え? あ、うん……光流がそう言うなら」
こんな状況で寝られるわけがない。
ただでさえ心臓がバクバクして、柔らかく良い匂いに包まれて頭がおかしくなりそうだというのに。
こうして、しばらく三人で一緒にベッドの中で何もしないで過ごした。
―▽―▽―▽―
この度は本小説をお読みいただきありがとうございます!
今回で200話です。いつも見てくださってありがとうございます。
もしよければ、今後も執筆を頑張っていきますので、ぜひトップの★評価やブクマ登録、感想コメントなどで応援をよろしくお願いいたします!
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