第四話
近くの宿に入ったら、空いてる部屋が大部屋の一部屋しかなく、仕方なく全員で同じ部屋で寝ることとなった。
湯に入り、寝る支度をしながら部屋でのんびりしていたら、烏丸が尋ねてきた。
「しかし、北にある家からどうして遥か南にある島で暮らすことにしたのですか?」
「単に一年中暖かい所があると聞いて、その生活はどんなものか興味があったから」
「後、そう簡単にはお館様が追って来られない所にしたかったのですよね?」
縁が補足で本当の理由を話してしまい、肯定するしかなくなってしまう。
「まぁな」
「本当、護衛の身にもなってよね。日焼けとかお肌の敵なのに!」
「いやぁ、俺は最高でしたっすけどね。暴れ放題だったし」
菜々桜は文句を言いつつ、なんだかんだ島暮らしを楽しんでいた。冬夜に関しては、もはや野生児と化していた。
日がな一日、冬夜と稽古をして、たまに縁や菜々桜と模擬戦をしたりしていたものだ。まだ島を出てからそんなに日数が経っていないのに、もう懐かしい気持ちでいっぱいになる。
「いいですね。楽しそうで、毎日充実してたのでしょうね」
だが、烏丸の言葉が胸に刺さる。
ずっと森で一人で暮らしていた彼からしたら、あたしらは充実した日々を過ごしていたと思うのは当然だろう。人を殺してしまった罪悪感と海花の本当の死を知った悲しみで、しばらくは情緒不安定だったことなど、彼は知る由もない。
それに三獣士には、散々迷惑をかけてきた。彼らの人生を縛ってしまったことへの申し訳なさも当然ずっとある。
一人、しんみりとしていた時に菜々桜が烏丸に話を振った。
「ところでさ、舜様は何でこいつと結婚したいわけ?」
「菜々桜。姫様をこいつ呼ばわりするものではないですよ」
「あー、ゆーくんはちょっと黙ってて。今、大事な話してるとこだからっ」
「なっ……」
縁の小言を軽くあしらい、烏丸の傍ににじり寄る。
「そ、そうですね。先日の盗賊を制圧しているのを見て、こんな強い
「え、舜様って、尻に敷かれたいタイプ?」
「いや、それは分からないが、特にどのような相手にも物怖じしない人がいいというか」
「あー、確かに当てはまるわね。まぁ、次期当主として当然なんだけどね。他には?」
心なしか菜々桜の目がキラキラと輝いているように見える。この手の話が大好物な彼女からしたら、烏丸は格好の餌食だろう。
冬夜はつまらなそうに、早々に布団で寝転がっている。
「ほ、他……。角が美しい」
「角!? まぁ、確かに綺麗な形はしてるけど……。何か惚れるところが変わってるのよねぇ」
「なぁ、結婚したら、あの森で過ごすことになるのか?」
つい、昨日から気になっていたことがあって、二人の会話に入る。
断じて、結婚したいわけでは、ない。
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