第十四話
「……分かった。だが、どこにいるのかは必ず知らせるように。お前は大事な娘であり、次期当主なのだから」
「はい」
「それと将来の伴侶を見つけたら、すぐに戻ってくること。いいな?」
「それは……!」
「もし見つけられなかった場合、こちらで決めさせてもらう」
有無を言わせぬ口調で雷蔵が言う。それだけ跡継ぎとして自分を望んでくれていることが痛いほど伝わる。家に戻ってくるつもりはなかったのだが、これだけ強く言われてしまっては頷くほかない。
「あと当然、三獣士は連れて行け」
「えっ、でも!」
「この条件が呑めないのであれば、家を出ることは許さん」
「……はい。分かりました」
渋々、条件を呑むしかなかった。
こうして、家を出る支度が整い、目を覚ましてから二日後には鬼ヶ崎家を去り、海を渡った離島に隠れ住むことになった。
そして、鬼ヶ崎家を出たのを機に、他の人に舐められないように口調を変えたのだ。
◇◇◇◇
最初に華が居ないことに気付いたのは、自分だった。
「烏丸様、姫様を見ませんでしたか?」
「あれ、本当ですね。僕も御三方のやり取りに気を取られていて、華様が退出したことに気づきませんでした」
「なに、ゆーくん。あの子、勝手にいなくなったの?」
「まーた、一人になりたいタイムっすかね?」
言い合いをしていた菜々桜と冬夜も異変に気づき、会話に入ってきた。
「どこかの部屋で休んでいるのかもしれませんね」
「探しましょう」
「ゆーくんは、いつまで経っても過保護だよねぇ」
菜々桜の言葉を無視し、食事を切り上げて烏丸たちとツリーハウス内を探すことにした。
烏丸を先頭に、四人で各部屋をそれぞれ覗いていく。今のところ、一階には華の姿はなかった。
「そういえば、今更ですが皆さんのお名前を聞いておりませんでした」
烏丸がふと思い出したかのように話を振る。
言われてみれば、確かにそうだった。華の護衛であることしか伝えてなかったことに、今更ながら気づく。三獣士の筆頭リーダーとして、自分が先に名乗った。
「申し遅れました。私は、犬山縁と申します」
「猫宮菜々桜でーす」
「伊達冬夜っす」
菜々桜、冬夜もいつもの順番で名乗っていく。
「改めて、宜しくお願いします」
烏丸が頭を下げ、そのまま2階へ上がって行った。その後に自分、菜々桜、冬夜と続く。
「皆さん、随分と仲が良いんですね」
「ええ、幼い頃から一緒に育っておりますゆえ」
「そうですか。華様の護衛についたのは、いつからなのですか?」
「姫様が生まれてからになります」
「そんな時から!」
前を向いていた烏丸が、驚いたように振り返った。
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