第十二話
「華姫様っ」
「姫様! 気が付かれましたか」
枕元には梅と縁が座っていて、心配そうに顔を覗き込んでいる。
「華姫様、ご気分はいかがですか?」
「ここは……」
「お屋敷に戻って参りました。あの後の処理は、こちらの方で済ませておりますのでご安心ください」
梅は倒れた後のことを詳しく話してくれた。
慎之介は激しい損傷により、すでに息絶えていたという。その他護衛の者たちは梅と冬夜で制圧。縁と菜々桜は、屋敷内の使用人たちを捕獲したが、多くの使用人たちは慎之介に脅されていたと無実を訴えている。雷蔵の口添えで何人かは新たな仕事先を紹介する予定とのこと。
かなり大掛かりな対応になっていた。
河上家はその他にも悪事を行っていたことが使用人の証言により判明して、全領土を返上と姓も取り上げられるらしい。幸いなことに慎之介は兄弟がおらず、両親もすでに他界していたため、特に反対意見が出ることもなく、事はすんなりと収束していくようだ。
「あたしは……どれくらい寝ていた?」
「倒れられてから、既に三日が経っております」
「そうか……」
三日間寝ている間に、今回の件が片付いているというのは異様な速さだ。梅たちの仕事の速さも然り、一番は雷蔵がすぐに対応してくれたのが大きいだろう。
「お父様はどうしている?」
「実は……、もう一つ華姫様にお話しておかなければならないことがありまして」
「もう一つ?」
「はい。今回の奥方様に関する誤った情報が伝わっていた件なのですが……。あれは、わたしの身内が慎之介側と手を組んでおりまして、誤報告をしていたことが明らかになりました。お館様は今そちらの対応に追われております。誠に申し訳ございません! わたしの監督が行き届いていなかったばかりに……」
自分の考えていたことはどうやら当たっていたらしい。やはり、隠密の中で裏切りがいたのだ。
「お父様は何て?」
「わたしへのお咎めはなく、一度隠密の構成を見直すことになりました」
「そう……。それで、梅は責任を感じて辞めようと考えているの?」
「え……」
梅が目を見開く。図星のようだ。
何となく話し始めた時から、雰囲気でそうではないかと思って聞いていた。
「梅が辞める必要はないよ。今回の件、隠密に頼りすぎてきちんと調べなかった鬼ヶ崎家に落ち度があるから」
「華姫様……。お館様も同じことを仰ってくださいました。ですが、わたしがこのまま仕えていては下の者に示しがつきません」
「そのために隠密の構成を見直すのでしょう? なら、梅は今回のようなことが二度と起こらないように、しっかりと下を躾けて目を光らせておく義務がある」
「……ありがとうございます。この梅、しっかりと次世代を責任持って育てあげます!」
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