第七話

「よしっ、いつ行くっすか!?」

 これまでの話の間は大人しくしていた冬夜一人だけ、ノリノリな様子で口を挟んできた。難しいことは分からなかったのだろう。

「偵察だけなら、明朝に出れば日帰りで戻って来れる距離です」

 梅が時間と距離をざっと計算して言う。

「お父様もそんなすぐには動かないはず。明日、行こう」

「では、籠を呼ぶと動きがお館様にバレる可能性があるので、姫様は私がおぶっていきます」

 正しい判断だ。このメンバーの中では、自分だけ足が遅い。否、他が尋常じゃない脚力と言えようか。

 足手まといにならないためにもここは何も言わないでおく。

「俺も交代でおぶるっす」

「えー、わたしは誰がおぶってくれる訳?」

 縁と冬夜の言葉に菜々桜が不満げに口を尖らす。

 とはいえ、彼女はこの中では梅の次に身軽なので相手にされない。

「じゃあ、明朝出発で」

「「「「御意」」」」

 四人の声が揃う。

 後、忘れずに追加でお願いしておくことがある。

「あとは、河上が何であたしを後妻に欲しいのか気になるから、それを……菜々桜、本人に聞いてくれる?」

「は? 何でわたしなのよ」

 案の定、心底嫌そうな顔で菜々桜がこちらを睨む。

 実は、雷蔵の話を聞いて一番気になっていたことだった。

 河上が何故自分を後妻に指名してきたのか。

 海花に似ているからという単純な理由も考えられるが、それだけじゃない気がした。何かを他のことを企んでいるのではないかと直感的に思う。

 例えば、鬼ヶ崎家を乗っ取る……など。そんなことは絶対にさせないが――――。

「あなたしかいないじゃない。この中で変化へんげが得意なのは。相手にバレずにすむ」

「えー、やだ。わたしに何のメリットもないし」

「そうですかね? 菜々桜が美しい女性と変化して、求婚をしたら相手もボロを出すかもしれません」

 縁が助け舟を出してくれる。

「そうっすよ! 姐さんほど変化が完璧な人はそうそういないっす」

 冬夜も菜々桜をやる気にさせるために持ち上げてくれた。

「わたしも菜々桜様の変化を実際に見たことないので、見てみたいです!」

 梅までよいしょしてくれる始末だ。

 ここまで皆に言われたら、ツンデレ菜々桜が発動するだろう。

「……ったく、しょうがないわねぇ。そこまでみんなが言うなら、やってあげないこともないわよ?」

「ありがとう、菜々桜!」

 効果抜群だった。意外と単純な子で助かる。

 その他にも念のために細かい作戦を立て、話がまとまったところでこの場はお開きとなった。

 各自、明日に備えて準備に動く。

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