第四話

 一方的に話を切り上げ、背を向けられる。

 こうなるとすぐに部屋を出て行かなければならない。「一人にしてくれ」という合図なのだ。

 後ろ髪を引かれつつ、静かに部屋を後にする。

 廊下に出ると梅が待っていた。

「梅、悪いんだけど……。三獣士をあたしの部屋に呼んで。それとあたしが良いと言うまでは誰も部屋に入れないで」

「かしこまりました、華姫様」

 梅は細かいことは聞かず、すぐに三獣士を呼びに行った。

 一人で部屋へ戻りながらも、頭の中は雷蔵の言葉がぐるぐると回っている。衝撃的な事実がいくつもあり、自分の中で整理しきれない。

「姫様、お呼びでしょうか」

 部屋で悶々と考え込んでいたら縁の声がし、三人の人影が障子に映っていた。

「入りなさい」

 入室を許可すると、障子が静かに開けられ三人揃って入ってくる。

「急に呼び出して、何の用よ? こっちは、気持ちよくお手入れしてたところなのに」 

 ちょうど毛並みの手入れをしていたようで、邪魔された菜々桜はだいぶご機嫌斜めだ。

 彼女は髪に命をかけているらしく、念入りすぎるほど念入りに手入れをしている。縁と冬夜は呆れた顔をした。

「それはタイミングが悪かった。でも、それどころじゃないの。三人とも座りなさい。今から話すことは他言無用。特に菜々桜、分かってるね?」 

 一番口が軽い彼女の釘を先に刺しておく。

 彼女は渋々座りながら、突っかかてくる。

「そんなにわたし、口が軽いと思われてるの?」 

「いや、姐さんほどすぐ人に話す人はそうそういないっすよ」

「うるさいっ! 言うなって奴はちゃんと誰にも話したことないでしょ」

「言われなくても、普通人には簡単に話さないですけどね」

 菜々桜と冬夜の言い合いが始まりそうになったが、縁がボソリと呟いた一言に菜々桜は耳を伏せて大人しくなる。

 静かになったところで、雷蔵から聞いた話を三人にも包み隠さず伝えた。どう対処すれば良いのか、一人では決められないからだ。

 普段、護衛をしてもらっているから、一緒にいる時間は親や梅よりも長い。だから、一番相談しやすい相手なのは、やはりこの三人だった。

「そうですか……。そんなことがあったなんて、我々も何も知らなかったです」

「梅しか知らされてなかったみたい」

 話を聞き終えた三人はすぐには信じられないようで、しばし放心状態だった。

 最初に正気に戻ったのは、安定の縁だ。

「では、姫様が気がかりなのはお館様が己の復讐をした後に自害なさろうとしている点ですね?」

「そう! たぶん、数人だけ率いて、自ら乗り込もうとしてる。殺しだけは何としても阻止しないといけない」

「なら、話は簡単じゃない」 

「俺達でその男と仲間を倒して、捕まえたらいいじゃないっすか」

 冬夜が思いもよらないことを言い出す。


 

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