第六話
顔を上に向け、礼を言うと嬉しそうにカァー、カァーと返事が返ってきた。
再び皿へ目を戻そうとした時、烏丸は目が飛び出さんばかりにこちらを凝視していた。
「どうした? 何か変なことを言ったか?」
「あ、いえ……。たかが、カラスに礼を言う人は初めてで」
「何故だ? 彼らが料理してくれたのだろう?」
「ええ、まぁ……」
「なら、礼を言うのは当然だろう。あたし達のためにこんな沢山の量を用意するのは、なかなかに大変だっただろうからな」
「……やはり、あなた様は面白い方だ。ますます欲しくなってしまう」
「……」
また気味の悪いことを言っている。こういう所がなければ、紳士的でモテそうなのにと思ってしまう。
さりげなく縁が守りの態勢に入っている。また変な行動に出るかもしれないと警戒しているのだろう。
「舜様のそういう所、ちょっと気持ち悪いー」
「え、き、気持ち悪い!?」
横に座る菜々桜の率直すぎる言葉に、何故かショックを受けている烏丸。
「せっかく見た目はクール系イケメンなのに勿体ないよねぇ」
「初対面で求婚してくるような奴っすからね。変わり者っすよ、だいぶ」
冬夜も菜々桜の意見に同意のようで、口いっぱいに料理を詰め込みながら頷いている。
「というか、舜様って付き合ったこととかないんじゃない?」
「うぐっ」
さらにダメージを受けたようで、烏丸は胸を押さえて、呻いた。
図星らしい。菜々桜も痛いところをつく。
「距離の詰め方が異常だもの。意中の人を射止めたかったら、距離感は大事っ!」
「な、なるほど。距離感……」
「そんな姐さんも
「と・う・や? ちょっとあんたのその口、二度と喋れなくしてあげようか?」
普段は仕舞われている菜々桜の爪がにゅっと出る。
色恋が大好きな菜々桜も自分の恋はなかなか上手くいっていないようだ。
いつものように彼女の地雷を踏んだ冬夜は顔中に引っ掻き傷をつけられている。
「痛い、痛いっ! 痛いっす、姐さん!!」
「あんたが余計なこと言うのがいけないんでしょ!」
「二人とも食事中ですよ。暴れるなら外に行きなさいっ」
縁が小言を言いながら、すかさず止めに入った。またもや、てんやわんやとし始めた。
烏丸はショックからまだ立ち直れず、何やらブツブツと呟いている。
――――少し、一人になりたい。
唐突に静かなところに行きたいと思ってしまう。
食事の途中だったが、そっと一人で部屋を出る。幸い、誰も後を追いかけて来る者はいなかった。
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